環境や経済、貧困や差別など世界が抱える様々な問題を解決しようという取り組みSDGs。その目標の1つに「つくる責任、つかう責任」があります。

 去年9月に誕生したコスメブランドの原料には、愛知県の東三河でとれた植物の成分が入っています。抗菌力を高める成分が含まれるスギナや、保湿力を高める成分が含まれるヨモギなど…。地方の豊かな土壌で生育する植物から生まれた化粧品には、未来へのヒントがありました。

■わずか半年で数々の賞を受賞…天然の植物を使った化粧品

 東京都目黒区の店舗…。

 女性でにぎわう店に並ぶ、優しい香りの化粧水に、植物の成分を加えたフェイシャルオイル。

 日本の“和”と、フランスで発達した植物療法“フィトテラピー”をかけ合わせたブランド「Waphyto(ワフィト)」の商品です。わずか半年で、美容業界の数々の賞を受賞しました。

女性客:
「すごくいい香りで、落ち着くしリラックスできる」

別の女性客:
「見たことないパッケージなので、かわいらしい感じかなと思って

 Waphytoの化粧品には、全て東三河の植物の成分が入っています。例えば、化粧水には新城のヨモギやスギナ、渥美半島のキク、また、ソメイヨシノなど20種類以上の成分が入っています。

 Waphytoを立ち上げたのは、東三河は豊橋市出身の森田敦子さんです。

フランスで植物療法を学び、その後20年以上、日本で薬草の研究をしてきました。

 森田さんは、「日本に生育するハーブや薬草などは分析すると、ものすごく機能性がある」と話します。

■「草ではなく宝物」…ヨモギやスギナなどの植物を農家と契約し生産

 この日、森田さんが訪ねたのは新城市の農家。Waphytoは東三河で17件の農家と契約。70種類の植物を生産しています。

森田さん:
「これ草じゃないんですよ。私からみたら金、宝物」

 こちらの農家は長年、農薬や肥料を使わない有機農業を続けています。雑草もそのままで、畑には見えません。水が流れ出ている場所に、たくさんのスギナが生育していました。

森田さん:
「ここは外帯という場所で、すぐ下には花こう岩とか…。スギナが生育しやすい」

 森田さんは、豊橋技術科学大学と共同で土壌を調査。その結果、東三河の土壌の豊かさが判明。東三河のスギナには抗菌力を高めるフラボノイドやカテキン。ヨモギには保湿力を高める成分が、他の地域より多く含まれていることも分かりました。

 森田さんは、なぜその土地の植物のエキスがその配分なのかを、土壌も含めた研究でエビデンスをとっています。

 続いて訪ねたのは、新城市の桑畑。昔から養蚕が盛んだったこの地域では、蚕のエサとなる桑の木を育ててきました。そして、1000年以上前から伊勢神宮に奉納する絹糸を作ってきました。しかし、養蚕業が廃れる中、桑を生産する農家は、今ではわずか2軒しかありません。地域の歴史と文化を繋ぐ…。Waphytoが担う、未来への役目です。

養蚕農家の男性:
「夢が広がりますね。もう産業としては成り立たない中で…。未来に伊勢神宮の伝統文化も含めて発信してもらえるのは」

■自動車部品メーカーとも提携…「農業通してできる商品をもっと世界に」

 愛知県豊橋市にある、従業員1万6000人の自動車部品メーカー「武蔵精密工業」。この会社の中に、Waphytoの研究室があります。

 採取した植物を、東京などの研究室に運ぶのではなく、地元でスピーディーにその成分を分析しています。

 創業83年を迎える「武蔵精密工業」は、100年に一度の変革期と言われている自動車業界の未来を見据え、Waphytoとパートナーシップを結びました。

武蔵精密工業の社長:
「事業が大きくなればなるほど地元は潤っていきますので。地元で採れたもので、地元で作って、地元のファンを増やして、日本へ、世界へ売っていく」

森田さん:
「農業の循環をきちっと作り上げていくこと。東三河で技術力とともに作ることができる」

 森田さんは「メイドインジャパンの強さ、農業を通してできる商品をもっと世界に発信していきたい」とミライに目を向けています。