2021年5月、東海道新幹線の運転士が走行中にトイレに行くため約3分間、免許のない車掌と入れ替わり、運転室を離れていたとJR東海が発表した問題で、新幹線の運転体制はどうなっているのか具体的に調べました。

 東海道新幹線の男性運転士が5月16日に「ひかり」を運転中約3分間、運転席を離れていた問題。時速約150キロで走行中で、乗客160人ほどを乗せていました。

 JR東海によると、運転士は急な腹痛に見舞われ、トイレに行くために男性車掌を呼び出し「機器には触れず運転席にいてくれ」と伝えて車掌を運転室に残し、運転席からおよそ25m離れた1号車後方のトイレに向かいました。

 この車掌は免許を持っておらず、およそ3分間、7,6キロにわたり運転士不在のまま走行したということです。

 内規では「運転中に体調不良になった場合、指令所に報告して指示を仰ぐ」と定められています。しかし運転士は報告せず、理由として「プロとしてこんなことで列車を止めるのが恥ずかしいと感じた」と話しています。

 現在、新幹線の運転室に入るのは基本的に運転士1人だけで、車掌がサポートに入る場合もありますが、運転免許を持っている人といない人がいます。今回、操縦を頼まれた車掌は持っていませんでした。

 ただ、免許をもっていない車掌でも「停車させる必要に迫られた」場合は、非常ブレーキを作動させるなど新幹線を止めることが許されています。

 この体制について、鉄道ジャーナリストの梅原さんに聞くと、実は1991年ごろまでは運転士は2人いたそうです。

 その理由は、今よりも乗車時間が長かったことや、当時の車両はまだ不具合も多く、運転中に点検や修理をする必要があったためということです。

 その後、列車の改良や遠隔操作の進化などで、1人体制に変更されました。

 JR東海は「乗客の安全のためにも、体調不良などがあったとき、必要に応じて新幹線を止めたり運転士を交代することは構わない。今回の問題は指令所に連絡を入れていなかったこと。今後徹底させる」ということです。

 こうした話は、新幹線だけに留まりませんでした。名古屋市では5月25日、トイレに行くため運転手が席を離れた市バスが動き出し、乗用車に衝突しました。

  名古屋市南区のJR笠寺駅前で、トイレに行くため運転手が席を離れたところ、車両が乗客を乗せたまま動き出し乗用車と衝突しました。乗客8人が乗っていましたがケガはなく、衝突した乗用車には人は乗っていませんでした。

  運転手はトイレに行くために、折り返しや停留をする回転場にバスを停めました。ここにはトイレがあり、運転手が使うこともあるそうです。

  しかし、パーキングブレーキをかけ忘れていたためバスが走り出し、その先で駐車していた車に衝突しました。

  名古屋市交通局は「トイレは構わないが、今回は作業的なミス。全乗務員に基本動作を徹底させる」としています。