レシピは譲り受けられずイチから…昭和生まれの駄菓子「ポテトスナック」突然の生産中止からの『復活秘話』

　昔なつかしい駄菓子…。細長い形が特徴的なポン菓子「人参」やヨーグルト風味の「ヨーグル」は、共に愛知県豊橋市のメーカーが製造しています。

　おなじみの「ベビースターラーメン」は三重県津市、「ヤングドーナツ」は岐阜県各務原市と、東海地方では多くの駄菓子が作られています。

　中でも、目立つのが名古屋市西区。「クッピーラムネ」は、名古屋市西区のカクダイ製菓が、お馴染みの「花串カステラ」や「フルーツの森」も名古屋市西区の明道町で作られています。

　名古屋は、結婚式の菓子まき文化に代表されるように、昔から駄菓子と深い繋がりがあります。昭和の中頃に、西区に中京玩具菓子問屋市場が出来ました。

　100軒ほどが軒を連ねるほど活気があり、その問屋に商品を卸している駄菓子のメーカーが自然と、その周辺に集まってきた経緯があるそうです。

■独特のサクサク食感が特徴…隠れたベストセラー「ポテトスナック」

　そんな中、東海地方が生んだ“隠れたベストセラー駄菓子”が「ポテトスナック」です。

女性:
「友達と駄菓子屋さんに行って買っていた記憶が」

男性:
「このサクッとした感じ。食べていました、よく」

　独特のサクサク食感が特徴のポテトスナック。昭和に生まれ、平成、令和と時代を超え愛されてきたロングセラー商品ですが、数年前に製造していた会社が突如販売を中止。

　現在販売されているポテトスナックは、無くなるのを惜しんで製造を受け継いだ同じ愛知県の企業が製造しています。

■現在は三重で製造…安城のメーカーから引き継いだポテトスナック

　現在ポテトスナックを製造している、愛知県西尾市に本社を置く「かとう製菓」の三重工場へ。

　そこでは、たこ焼き風味に明太子風味、わさび風味など全部で11種類のポテトスナックが製造されていました。

　作る枚数は1日10万枚。小麦粉に水や卵などを混ぜた、特製の液体で衣をつけてコーティングし、180度の油で揚げて味付けパウダーにまぶしたら完成です。

　当初ポテトスナックを作っていたのは、愛知県安城市のメーカーでしたが、材料費の高騰などから8年前、製造を中止。それを知った「かとう製菓」は、地元で愛されてきた菓子をなんとか守りたいと、製造を引き継ぐことを決めました。

　せんべいを主力とする「かとう製菓」は、ポテトスナックがせんべいと形も同じで製法も近いことから、自分たちでも作れるはずと思っていましたが、待っていたのは様々な困難でした。

■レシピは譲り受けられず…うまく焼けないポテトスナック

　機械を引き継いだはずだった「かとう製菓」。ポテトスナックには、主に生地を焼く機械と、揚げる機械の2種類が必要ですが、手違いで片方しか譲り受けることができませんでした。

　譲ってもらえなかった生地を焼く機械の設備にかかる費用は、何千万円。「かとう製菓」は、3年かけてせんべいの売上を蓄えて資金を調達し、何とか導入しました。ところが…。

かとう製菓の担当者:
「前、作っていた会社からレシピをいただく事できなかった…」

　社外秘ということでレシピは譲り受けられず、イチから味の再現をすることになりました。せんべい作りのノウハウがあれば簡単に作れそうにも思えますが、スナックとせんべいは全く勝手が違いました。

同・担当者:
「ポテトスナックの元は液体なんですね。エビせんべいの元は粉。液体と粉で全く違う」

　理由は原料の違い。せんべいの主な原料は小麦粉のため鉄板にくっつくことなく、スムーズに焼く事ができますが、ポテトスナックの原料は小麦粉とデンプンを合わせた液体。そのため普通に焼くと、鉄板にくっついてしまうのです。

　一番の特徴であるサクサク食感を出すためには、薄く延ばして焼くことが重要ですが、うまくいきませんでした。レシピ無しでの商品化は不可能なのか…そんな時に思いついたのが…。

かとう製菓の相談役:
「お好みを焼く場合も張り付きやすいんですね。それを防ぐために油を（鉄板に）塗るんですよ」

　お好み焼きに使う鉄板を見て、せんべいの鉄板に油を何度も塗って馴染ませることで、張り付きを防ぐことができないかと考えました。毎日塗り続けた結果、1か月ほどで鉄板が油でコーティングされ、生地が貼り付かない状態に。あの薄くてサクサクとした独特の食感を再現することに成功しました。

■コロナ禍で主力のせんべいが低調に…ポテトスナックは会社を支える柱に

　ピンチに見舞われながらも何とか作り上げたポテトスナック。ファンから手紙も届きました。

（ファンからの激励の手紙）
『ポテトスナックを応援している私も嬉しいです。頑張ってください』

　コロナ禍で観光用のエビせんべいが不調に陥っている中、ポテトチップスは「かとう製菓」を支える主力商品になりました。

　アイデアと努力で見事復活させたポテトスナックは、今もたくさんの人に愛され続けています。