国に帰りたいのに、帰れない…。新型コロナウイルスは来日した外国人にも大きな影響を与えています。

 ソロモン諸島から日本に嫁いだ娘の最期を看取るため来日した外国人の親子。コロナの影響で1年以上も日本に足止めされています。ソロモン諸島が示した帰国の条件は、ワクチン接種でした。

 ソロモン諸島から来た外国人の親子…。12日、愛知県豊橋市の保健所で念願のワクチン接種を受けました。接種したのは高齢者用ワクチンの当日キャンセル分。本来は対象外ですが、人道的な立場に立っての特例措置でした。

 愛知県豊橋市に住む白藤謙一さん(44)一家。

白藤さん:
「ここにいるのが妻のお母さんにあたるイザベルです。こちらが妻のお兄ちゃんにあたるバナバスです。私の妻のシンデレラで、昨年の5月4日に子宮頸がんが原因で他界しました」


 白藤さんは去年5月、ソロモン諸島から迎えた妻のシンデレラさんを34歳の若さで亡くしました。

 シンデレラさんの故郷・ソロモン諸島は、日本から南へおよそ5000キロメートル離れた南太平洋に浮かぶ島々。

 故郷で暮らす母のイザベルさんと兄のバナバスさんは去年2月、シンデレラさんの余命が短いと知らされ急遽、来日。シンデレラさんの最期を看取りました。

 しかし、帰国しようとした親子に思わぬ壁が立ちはだかります。ソロモン諸島政府は去年2月に日本を新型コロナの危険国に指定。帰国の条件として示されたのは「ワクチンの接種」でした。

白藤さん:
「日本人のワクチンの接種が終わるのが多分今年中くらいかかるということだったので、また今年も帰れないんじゃないかなって」

 慣れない異国での長期滞在。2人は白藤さんの知人の農園を手伝うなどして過ごしてきました。

イザベルさん:
「とても長い間この場所にいたから、ふるさとのソロモンに帰りたい」


 ビザの更新を繰り返し、気が付けば滞在期間は1年4か月にもなっていました。そんな二人に朗報が飛び込みます。

大村愛知県知事:
「人道的な観点から、早速ですね、2人のご希望・考え方をお聞きしたうえで、ワクチン接種を受けたいというご要望があれば打っていただくと」


 愛知県の大村知事はキャンセル分の活用を打ち出し、接種を担う豊橋市も協力をすることになったのです。

 12日、豊橋市保健所では1050人分の予約のうち4人分のキャンセルが発生。思わぬ形で実現したワクチン接種。イザベルさんとバナバスさん、故郷へ向けた大きな一歩です。

バナバスさん:
「ワクチンを打ってソロモン諸島に帰国できる可能性が高まったのでうれしい」

イザベルさん:
「きょうワクチンを打てて良かったです。ありがとうございます」

 シンデレラさんが亡くなってから1年4か月…。二人の2回目の接種は7月初旬に予定されていて、その後は帰国に向けた準備を進めることになっています。