愛知県愛西市にある「大法寺」は、「縁切り寺」として信仰され、人間関係や病気など様々な悩みを抱えた人が、多い時には1日30人訪れます。

 コロナ禍で、参拝客が倍増しているという「縁切り寺」には、悪い縁と向き合い、心機一転スタートを切る人の姿がありました。

■悪縁を燃やして灰に…病気の縁切りを願う女性

「縁切り寺」として信仰されている、愛知県愛西市の室町時代創建の「大法寺」。

 午前9時、去年8月に大きい病気が分かり、現在治療中という女性がやってきました。願うは、病気の縁切りです。

 まずは、切りたい縁を絵馬に書きます。そして人型の赤い紙にも…。女性は「治療の副作用」など切りたい縁を10個書きました。

住職の長谷雄蓮華さん:
「赤い紙を1枚ずつ胸に当ててください。思いを込めてください。嫌なこと、辛かったことを全部、体の中から出す、そんなイメージで息をふっとかけて炎で燃やしてもらっていいですか」

 燃えて灰になる人型の赤い紙。一枚一枚、思いを込めて…。悪縁を灰にした後は境内へ。境内にある樹齢650年のクスノキ。この大木に宿る、龍神の力で悪い縁を絶つと言い伝えられています。女性は、御神木を時計回りに3回周り、絵馬を奉納しました。

縁切りに訪れた主婦(40代):
「きれいに縁が切れそうです。灰が燃える姿を見てくと、病と別れができるなって。家族みんなで元気に旅行に行ったり、楽しく生活したい」

■多く舞い込む男女関係の「縁切り」…受け継がれてきた「縁切り供養」を再開した住職

 不倫している夫が相手と縁を切るのを願いに、女性がやって来ました。

縁切りに訪れた主婦(50代):
「同じ会社の中で、何年も不倫関係なので…。いい加減別れてほしいなと」

 時代を問わず、「男女関係」の悩みを抱える人が多いようです。

住職の長谷雄さん:
「夫婦だったり、逆に不倫とかいろんな方がおられます。コロナ禍になってからは(参拝客が)倍増しました。不安感が増すんでしょうね」

 大法寺9代目の住職、長谷雄蓮華さん(48)は23歳で父親の跡を継ぎました。しかし昭和58年に、寺の本堂が火事で全焼してしまいました。

住職の長谷雄さん:
「私が住職になった時には何もなかったんです。昔やっていた縁切り供養を、どうしても復活したいと思って」

 この時、御神木だけは難を逃れ、代々受け継がれてきた「縁切り供養」を再開。長い歴史ゆえ、人が人を呼び、全国で広く知られるようになりました。

住職の長谷雄さん:
「悩んでいる方って多いですよね。誰にも言えない人はいっぱいいる。誰かに話したり、仏様に伝えるだけでも救われることがある、そう思ってやらせていただいています」


【この記事の画像集を見る】

■御利益があると聞いたので期待して待ちたい…自己中心的な上司との縁を切りたい女性

 午後も続々と、悩み多き人々が訪れます。この女性は、これまで京都の縁切り神社などを参拝。ここで4回目といいます。この女性が切りたい縁は、関係がうまくいっていない会社の上司との縁切り。人型の赤い紙に「自己中心的で思いやりのなさ」と綴りました。

縁切りに訪れた女性(50代):
「この空気感がすごく良かったなと思って。変な話、切れなくても、ちょっとスッキリはしました。でも、結構ご利益があるって聞いたので、期待して待っています」

■「息子のような被害者が無くなりますように」…5年前に息子を亡くした女性

 知人とのトラブルで、息子を亡くした女性も訪れました。

あま市から来た主婦(58):
「(写真を見せて)これ息子です。イケメンでしょ。家族思い、夜中まで働いて、すごい頑張り屋」

 写真の男性は自慢の息子。しかし5年前、33歳の頃に知人と男女関係のトラブルになり、帰らぬ人となりました。

同・主婦:
「悔しいね…、ただただ悔しい。後を追いたいなという気持ちもありましたけど、やっぱり周りの人が助けてくれる…。ここのお寺に来たことが、いい方向に向いたのかなって思っています」

 今も納骨できず、遺骨は自宅に置いているといいます。絵馬に書いたのは「息子のような被害者が無くなりますように」。息子の死から5年…。少しずつ現実を受け止めようとしています。

同・主婦:
「自分の思いも一緒に上がっていったような気が。前を向いて息子と共に、思いを一緒に生きていこうかな」

■コロナに病気に人間関係…それぞれの縁切り

 コロナとの縁切りにきたという女性は、知人がコロナに感染して亡くなりました。

犬山市から来た女性(57):
「コロナって本当に怖いですよね…。少しでも早く前のような生活に戻りたいと思います」


 続いてやってきた親子は、それぞれの縁切りのお礼参りにやってきました。

母親(50代):
「脳腫瘍から縁を切ってもらって、手術して無事成功して」

娘(20):
「人との縁を切れた。こうしてお礼参りに来れたことが、すごくよかったです」

 娘は人間関係、母は病気との縁切りがうまくいったといいます。

■いい人と巡り合えるように…元カレと縁を切り新たなスタート切る女性

 夕方、恋人と別れたという女性がやってきました。

知立市から来た女性(27):
「結婚できたらいいよねって話はしていたんですけど。別れたくなかったです」

住職の長谷雄さん:
「胸に刺さっていること全部書いて…。文字で込めることであなたの胸からなくなります。よく頑張ったね」


 別れた恋人への未練を絶ちます…。さらに、自分の弱さとも決別。

同・女性:
「頑張ったねって一言で、全てが救われたような気がしました。たまっていたものが全部出せた気がしたので、すごくスッキリしました」

 女性は、今後いい人と巡り合えるように頑張る、と前を向きます。

 人生、山あり谷あり…。縁切り寺では、悪い縁と向き合い、心機一転、新たなスタートを切る人の姿がありました。

【この記事の画像集を見る】