まだ食べられるのに捨ててしまう「食品ロス」が社会問題となっています。日本で1年間に捨てられる「まだ食べられる食品」の総量はおよそ600万トン。1人あたり毎日茶碗一杯分の食べ物を捨てていることになります。

 そのような「まだ食べられる食品」を安く購入した上に、寄付までできるショッピングサイトがあります。このサイトでは、黒毛和牛の焼肉がおよそ半額、人気のレモンチューハイが4割引きなど、格安で販売されています。

■賞味期限が切れていないものも…年間600万トン捨てられる「まだ食べられる食品」

 岐阜県関市の食品リサイクル工場。次々と捨てられる野菜や果物、パンやコンビニ弁当など…。

 中には賞味期限が切れていないものもあります。この工場では毎日20トンほどの廃棄食品を、豚や鳥の飼料に加工しています。

 日本で1年間に捨てられる「まだ食べられる食品」の総量はおよそ600万トン。1人当たり茶腕約1杯分の食品を毎日捨てています。

■塩飴は涼しい夏だと売れないが…余ったら捨てざるを得ない事情

 岐阜県大垣市にある、明治10年創業の老舗菓子メーカー「鈴木栄光堂」。倉庫に積まれていたのは、賞味期限が迫っている塩飴や、新商品のクッキーです。

鈴木栄光堂の代表:
「夏の塩飴で、暑いとすごく売れるし涼しいと全然売れないし…。先に作っておかないといけないので、どうしても余るリスクが高い」


 この会社では出荷できず余ってしまった商品が、毎月段ボール20箱ほど出ています。社会貢献するためにも、できるだけ食品ロスは減らしたい。一方で、できるだけ売上は伸ばしたいと歯がゆい思いをしていました。

 そこでこの課題を解決するため、食品ロスを少なくするあるサービスを行う企業と取引を始めました。

■大手メーカーの炭酸水からお菓子まで…廃棄予定の商品を格安で購入しネットで販売

 今年4月、フードロスを解決するための社会貢献型ショッピングサイト「クラダシ」は、大垣商工会議所と連携協定を締結し、市内の企業と取引を始めました。

 クラダシは、食品メーカーなどで廃棄処分される予定の商品を安く買い取り、格安で販売するショッピングサイトで、2014年にスタートしました。

 東京にあるクラダシの物流倉庫には、大手飲料メーカーの炭酸水に、人気のチョコレート菓子が…。コンビニやスーパーでおなじみの商品ですが、賞味期限の問題やデザインの変更で捨てられる予定でした。

クラダシの関藤竜也社長:
「メキシコのお土産のチョコレート。海外のお土産を扱う旅行会社から『廃棄になってしまうので、お助けください』と」

 新型コロナの影響で売れ残ったお土産に、お歳暮用のギフトセット。季節が変わるとまだ食べられる商品も捨てられてしまいます。

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■サイトに並ぶ1500種類以上の格安商品…購入金額の一部は寄付へ

 商社マンだった関藤竜也社長は、駐在先の中国で大量の食品ロスを目にし、「フードロスはいずれ環境面で大きな社会問題になる」と感じました。どうしたら止められるかを考え、社会貢献型ショッピングサイト「クラダシ」を立ち上げました。

 現在、クラダシが提携する企業はおよそ850社。人気のレモンチューハイが40パーセントオフ。ノルウェー産サーモンの刺身も65パーセントオフ。

食品以外にも美顔ローラーが75パーセントと、サイトには1500種類以上の商品が並びます。

 購入金額の一部はフードバンクや環境保全団体などに寄付され、買い物をすると社会貢献ができる仕組みです。関藤社長は、「メーカー側も、ブランドイメージと販売価格を棄損せず、SDGs的に企業価値も向上できるのがメリット」と話します。

■「知らずに募金・なおかつ安い」…お得な買い物がいつの間にか社会貢献に

 1年以上前からクラダシを利用している、愛知県長久手市に住む大曲江未さん。「だいぶ安い」と、8パック入りの鹿児島県産の「鶏もものタタキ 3キログラム」(4968円)を購入しました。

 定価は1万5000円以上ですが、クラダシでは5000円以下に。他にも、普段は少し高くて手が出ないトニックウォーターや、子供用のチョコレートなど食卓にはクラダシの商品が並びます。

 高級食パンやプレミアム生絞りジュースなど、流行りの商品をチェックするのも楽しみの1つ。しかし、魅力はそれだけではありません。

大曲さん:
「(買い物で)どのくらい貢献できたかがのっている。おにぎり116個分」


 サイトには、自身の買い物による支援総額が表示されます。大曲さんは、「知らずに募金、気負わず協力ができ、なおかつ安い」とクラダシのメリットを話します。

 お得な買い物で社会貢献。クラダシでは、今後も連携する企業や自治体を増やし、食品ロス削減の輪をさらに広げる予定です。

 関藤社長は、「目標は、日本で一番食品ロスを削減する会社。皆が使えば使うほど、メーカーや消費者さらに社会貢献活動団体がハッピーになる仕組みを確立していきたい」と未来を描きます。

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