SPECIAL
柄本時生さんインタビュー
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本作では子どもたちをめぐる問題を、正面から描いています。題材についての感想は?
- 子どもたちを襲う出来事がたとえ厳しいものだとしても、それをしっかり描くことが大事だと思います。「こういうことが実際に起きています」と伝えることって必要なので。ドラマにすることで、次に繋がる何かがあると僕は思います。
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台本を読んでの感想は?
- 「すごいな」というのが正直なところです。子どもたちからすれば、大人はおっかない存在でしょうし、大人が子どもを追い詰めてしまう状況もあることは理解できます。もちろんそれはダメだなと思うし。堂々巡りですね。
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いろいろ考えてしまいますか?
- 問題意識はあります。でも、作品の中で描かれている問題に、柄本時生自身として向き合い過ぎてしまうと、演じることができなくなる気がするので、出来る限り冷静でいようとしています。
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柄本さんは川端をどんな風に演じていますか? 弁護士役はこれまでにご経験あるのでしょうか?
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弁護士役はこれで3回目か、4回目でしょうか。これは川端に限らずの話で、台本を読んでいると、自分が演じる役なりの話し方やしゃべる癖っていうのが見つかるんですよ。「今回はこういう感じかな」っていうのを想像して、現場で試して監督さんにアドバイスをいただき、さらに演じていくんです。役作りっていうのはそんなになくて、僕は逆に何でも捨てたくなってしまうんです。「これはいらないな」、「こういう感じは違うな」と。
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川端はさくらと子どもたちの間に挟まれるような、繋ぐようなポジションだと思います。
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僕はこの作品の最初の現場が真矢(ミキ)さんと名取(裕子)さんとのシーンで、若いメンバーとの共演はどんな雰囲気か真矢さんに伺ったんです。「熱量がすごいですよ」という言葉に、「おお!」と思いました。僕にはもうそんな勢いはないですから(笑)。
若手はみんな真面目というか、ストイック。何か気になるところがあると集まって話し合ったり、監督に相談したり。そのとき、ちゃんと自分の考えや意見を言っているんです。自分の思いを伝えようと必死なんですね。みんなの取り組みを見ていると、「ああ、頑張っているな」って感心します。彼らのお芝居を間近で見られるのも楽しいです。
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現役の高校生もいます。
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いや〜、怖いものないだろうな(笑)。僕も10代のとき、そうでしたから。自分に妙な自信があって。僕はこの現場のメンバーみたいに、監督に相談なんてしなかったです。監督から要求されたことにちゃんと応えるのが役者だ、なんていきがっていましたね。そういう考えでここまでやってきたから。未だに監督と役作りの話をするのが苦手なんですよ(笑)。
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物語が進むにつれ、シェルターに避難している茜が川端に好意を寄せるようになりましたね。
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こういう展開は慣れてないので驚いています。僕は、川端は茜ちゃんの恋心に気づいていないと思います。それもまったく(笑)。だからこそ、そんなことが自分に起きているなんて考えてもいないでしょうから。
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川端は柄本さんがおっしゃる通り、女性の気持ちに敏感じゃないかもしれないですね。
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茜ちゃんは17歳で、20代半ばの川端からしたら、そんな若い子が自分を好きになるなんてまさかの話で、“ありえないこと”なんですよ。だから茜ちゃんの気持ちも、そこに愛情が入り混じっているとは想像すらしてない。そういう鈍感さが川端の良さなのかもしれませんけど…。僕としては茜ちゃんの川端への思いは試練なのかな、と思っています。茜ちゃんが成長するための。だから、彼女にとって川端への恋が悲しい結末で終わったとしても、そこから茜ちゃんが前向きに歩んでいく展開になってほしいな、と思っています。
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ところで、さくらは親子の絆を親子丼でつないでほしい、と願っています。柄本さんのご家族は役者をされている方も多いですが、どんなご家族ですか?
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僕は親と同じ世界で生きていこうと思った時点で、親に迷惑はかけちゃいけない、となぜか感じていましたね。親に何かをほしいとか、何かをしてもらいたいとかって気持ちはそんなになかったかもしれないです。子どものほうが親のために何ができるか考えなきゃいけないと、10代の頃から思っていたんですよね。
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ご両親の背中を見て育ってきたからこそ、そんな風に思えたのでは?
- う~ん。両親が演技の世界にいたからといって、特別なことはありませんでしたけど。割とどこにでもいる家族だったと思いますよ(笑)。