SPECIAL
塩野瑛久さんインタビュー
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“17歳の非行少年”という役を演じての感想は?
- 実年齢より5歳ほど年下なので、幼く見せるよう心掛けてはいます。でもそのことだけにとらわれると、“ヤンキー”という設定が浅くなってしまう気がするので、バランスは取りつつも、年齢にはあまりこだわっていないです。
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では、香を演じる上での塩野さんのこだわりとは?
- まず香の素直さを大事にしています。思ったことをポンポンと言っちゃうような。リハーサルのとき、急に思いついたセリフも香ならありじゃないか、と思えれば積極的に試すようにしているんです。
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香はそんな風にイメジネーションをかき立てられる役なのでしょうか。
- 僕は“瞬発力”を自分の強みにしたいんです。その場で生まれる感情をどう役に活かすか、どう作品に活かすか。自分なりに役のことを考えて現場に入りますが、セットやロケ地の雰囲気で軌道修正が必要なときもあるし、それに対応するには瞬発力が必要なんじゃないか、と思っているので。
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「ハチドリの家」では香のリアクションが“落ち”に使われることも多いですよね。
- それはなり行きでそうなった感じです(笑)。自分以外じゃなくても、その場の最後のセリフが終わったところで「はい、このシーンのお芝居は終わりです」みたいな雰囲気が好きじゃなくて、カットがかかるまで隙あらば何かしらリアクションを取ってしまうんです。今回はそれがありがたいことに採用されています。ただ、基本的には台本のお芝居が終わってから1、2秒後にアドリブ芝居を入れています。編集で切りやすいように(笑)。
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「さくらの親子丼2」に対しての感想を教えてください。
- 作品の持つメッセージ性の強さにやりがいを感じています。子どもシェルターって、もっと世間の皆さんに知ってもらうべき問題ですよね。俳優をやっている以上、何かを届けたいと常に思っていたんです。「さくらの親子丼2」に携われて、そういう想いが形にできたことがうれしいです。
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先ほど香は素直だとおっしゃいました。そんな彼がなぜ非行に走ったと思いますか?
- 環境だと思います。人って楽なほうに流れがちだし、周りに染まりやすいし。自分が属している集団の中の“当たり前”が世間でも通用すると思っちゃうんですけど、そんなことは全然なくて。頭ごなしに怒ったり見放したりするのは簡単ですけど、さくらさんや桃子先生のように、根気強く自分の中に根付いてしまった当たり前がそうじゃないってことを教えてくれる人がそばにいたら、いろんなことが変わると思います。
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塩野さんは香の言動を理解できますか?
- 自慢できる話じゃないですけど、僕も中学校の頃はかなり自分本位でした。あるときから、いつも一緒にいたメンバーがかなり羽目を外すようになって、でもその中でひとりが「こんなことはダサいからやめよう」と言い続けたんです。僕も彼の言うことのほうが正しいと思えました。おおげさかもしれませんが、それまでの価値観がガラッと崩れたというか。いままで格好良いと思ってやっていたことがまったく格好良くなかったと気付けました。そういう経験があるので、より香を大切に演じたいんです。
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真矢さんとの共演の感想を聞かせてください。
- 共演は初めてです。真矢さんの放つオーラがとても素敵です。クランクインの日、真矢さんが履いていたスニーカーを見せてくださったんです。ピカピカ光るもので、そのときの笑顔がとてもチャーミングでした。それに、そのスニーカー自体も格好良くて、僕も欲しかったくらいです(笑)。
「さくらの親子丼」は前作から知っていて、パート2があると聞いたときから絶対出たかったんです。真矢さんのお芝居が同じ仕事をする者として刺激的で、この人と同じ現場で芝居がしたいと強く思いました。だから、オーディションには「選ばれるのは俺だ」という強い気持ちで臨みました。真矢さんのお芝居は柔軟なのに芯が通っていて、僕がポンっと出したものにポンッと返してくれます。対応力の高さひとつ取っても勉強になります。
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塩野さんと真矢さんって、顔立ちが似ていませんか?
- 本当ですか⁉︎ お世辞でもうれしいです(笑)。僕は舞台も大好きで映像の仕事と同じように大切にしたいんです。真矢さんは演劇人としても尊敬できますから。
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塩野さんのお芝居に対する取り組みを教えてください。
- いっとき守りに入っていた時期があり、目の前の仕事をこなしているだけのときがありました。そういうときって何をやっても冴えないし、気持ちもどんどんネガティブになっていくんですよね。さらに「自分には俳優の道しかないのにどうするんだ!」と自分で自分を追い込んで。でも「何をしても生きていける」と思えたら、肩の力が抜けたんです。そこから以前の攻めの気持ちを思い出し、何事に対しても恐れがなくなりました。いまは自分のことを信じられますし、芝居も純粋に楽しくて。20代になって、ちょっとずつ気持ちを楽にできているかな、と感じています。