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祷キララさんインタビュー

現場で祷さんを見ていると、いつも柔らかい笑顔を浮かべているのが印象的です。
ありがとうございます。実は今まで出演してきた作品でも闇を抱えた女の子や、どこか陰のある子を演じることが多かったんです。過去の出演作を観ている方から、まったく笑わない子だと思われていたこともあって。まったくそんなことないですけど(笑)。
この作品が連ドラ初レギュラーとのこと。出演が決まったときの感想は?
出演はもちろん、うれしかったです。私の中で印象に残っているのが、オーディションのときのことです。いくつかの場面の台本をいただいてその場で演じましたが、出てくる子どもたちがあまりに強烈でした。みんな大人に対して反抗的で、でもそれはいろんな過去の経験や、環境があるゆえです。芯の部分は素直さや純粋さを感じたので、ぜひもっと深く演じてみたいと思いました。
詩役と聞いたときはどう思いましたか?
自分とあまりにもかけ離れている役だと思い、予想外でした。でもプロデューサーさんや監督さんや脚本の清水有生さんといろんな話をしたり、脚本を読んだりする中で詩のキャラクターが見えてきて、精一杯詩を演じたいと思いました。自分と詩では経験も性格もまったく違いますが、それでも重なる部分や共感できるところもあったんです。
共感する部分とは?
シェルターの子どもの中で唯一大学受験という、ちょっと先の未来への目標があって、“受験勉強”というものが、詩を演じる上でのとっかかりになりました。私は大学1年ですが、一般受験組です。詩の壮絶な過去をリアルに演じることは到底できません。でも、受験勉強に励む心情は私の中にまだ生々しく残っている高校生の頃の気持ちと照らし合わせて、せめてそこだけは嘘がないよう演じたいと思ったんです。そこから、この18年間生きてきた中で芽生えた、悔しかったり、悲しかったり、辛かったり。いろんな感情を思い出し、詩が感じている思いに繋がる気持ちはないか考えながら役を膨らませていきました。
第3話では詩がこれまで歩んできた辛い日々が描かれました。
それまでは想像で演じてきた詩のいろんな面が繋がった気がしてうれしかったです。ただ、第3話を演じたあとも、まだまだ詩をわかったとはいえません。詩がお父さんにどれだけひどいことをされてきたのか、なぜ両親のもとを逃げ出したのかという出来事は描かれていましたが、そこで詩が何を感じたのかという心理描写はあまりなかったので。
確かに。それは詩に限らず、シェルターで暮らす子どもたち全員に言えることですね。
だから最後まで詩を安心して演じられるとは思っていません。詩の中で解決していないことがたくさんあるので、第3話はあくまでちょっと前に進むための回だと思っています。これからも詩を探して探して演じることになる気がします。きっと最後まで(笑)。
祷さんは、病院を継ぐ必要のなくなった詩が、なぜ大学受験にこだわると思いますか?
大学で勉強したい、という気持ちはもちろんあると思います。でも一番はそこじゃないのかな、という気がします。やっぱりお父さんへの憎しみや復讐。中学生の詩を演じたとき、お父さんから罵倒されて、口の中に答案用紙を押し込まれた場面はリアルに恐怖を感じました。あのときの苦しみはそう簡単に消えるはずがないと思います。詩は無表情に見えますが、心の中にはいろんな思いがゆらめいているので、一つ一つのシーンを丁寧に演じて、少しでも詩の気持ちを伝えていきたいです。
これだけの難役に挑んでの感想は?
私は大学進学と同時に関西から上京してきました。いまは演技をすることがとても大事で、これからさらに突き詰めたいんです。だから詩として生きるのが楽しいことだけでなく、うまくいかないことも多いのは最初から覚悟していました。平坦な道であるはずがないとわかっているので、くじけず最後まで頑張るつもりです。人生は1回しかないのだから、自分がやりたいことや挑戦したいことにおじけづきたくないんです。
では、祷さんにとって演技とは?
もともと中学生の頃、知り合いの監督さんが撮ったインディーズの映画に出たことがきっかけとなり、私はこの世界に入りました。その作品を見てくれた方が声を掛けてくださりまた別の作品に出て、を繰り返し、長くフリーで活動を続けていましたが、高校3年のときに縁があり、いまの事務所に所属しました。演技の仕事をしているとはいえ高校生までは学業優先だったので、私にとって一番大きな世界は学校でした。学校では勉強が大事で、受験のことも考えなくてはいけなかったし、勉強に励む一方、ときどき演技をする生活の中、私が大事にしたいものは何か見失ってしまったんです。
迷いばかりの中、ある作品のグループオーディションというものを受けました。参加する人たちが同じシーンを、役を交代しながら演じたんです。同じ場面なのに演じる役を交代するたび、その場の雰囲気がどんどん変化して、演技ってなんて繊細な作業だと思ったんです。そこで、私がいま打ち込みたいのは演技だって気付きました。こうして連続ドラマのレギュラーを経験して、ものすごいスピードで進む撮影に目が回ることもありますが、作品の重要なパーツのひとつになれていることがとてもうれしくて。このワクワクドキドキする世界で、自分に何ができるのか探していきたいです。