- ――山口さんの演じられている美咲さんは、まさに天使のような人ですね。
- とても親切で、人の心を思いやることのできる優しい人ですよね。介護のために仕事を辞めたことも、それを恨むのではなく、いい方向に転換していく聡明さがある。何事もとらえ方ひとつですから、相手のせいにしたり、自分のせいにしたりしても仕方がないですもんね。
いろいろな苦労や試練を乗り越えて、それをすべて糧にして、力強く生きている人ですよね。美咲さんのような人が傍にいれば、周りの人は孤独になったり、一人で背負い込んだりすることがなくなると思いますね。
- ――その美咲役を、どのように演じられていますか？
- 私は、役を探究するのが好きなんですね。だけれども、今回の美咲さんに関しては、演じようとすればするほどウソ臭く、偽善者のように感じられて。そこで、私の中にある優しい感情に耳を傾けて、そのまま出してしまおうと思ったんです。あえて役作りをしないで、そのままそこに“在る”ことができればいいなと。そうするとスッと演じられるようになりましたね。美咲さんを演じていると、私自身もいつもより親切になっちゃって。
この前、混んだバスに乗った時、お客さんの間にちょっとしたトラブルがあって険悪な空気になったんですね。ムカッとされているおじさんの心を何とか和らげようと、思わず「どうぞお座りください」と席を譲ったら、「僕はそんなに年をとっていません！」って言われちゃって。「私、次で降りますから」と、予定とは違う次のバス停で降りたんですね。でも、降りる時に振り返ったら、おじさんがニコっと笑ってくれたんです。親切がイラだった人の心を穏やかにしてくれたんですね。この時、美咲さんの役をやっててよかったと思いました。
- ――美咲さんは、陽子さんとも上条会長とも関わりの深い人物です。その二人を演じる真琴つばささん、小林幸子さんの印象は？
- 真琴さんは、顔合わせの時におっしゃった「一所懸命やらせていただきます」という言葉通り、真面目で一所懸命な方ですね。小林さんは、とても笑顔が素敵な方で。私、小林さんの「思い出酒」や「とまり木」をカラオケでよく歌わせていただいてるんです。その小林さんと演技のキャッチボールができて、うれしいですね。
- ――山口さんにとっての敵とは？
- 自分です。人間は誰でも、ダメだなと思うところがありますから。そういった自分の中の敵が攻めてきた時は、あまりいろいろ考えないようにして、趣味に集中したりして頭を切り替えますね。自分が幸せじゃないと人に幸せを与えることはできませんから、いつも自分が幸せでいられるように心がけているんですよ。
- ――多趣味でいらっしゃる山口さん。その中のひとつ、お菓子作りは、息子さんの影響だったとか？
- この仕事は時間も不規則ですし、撮影でしばらく地方に行ってしまうこともあるので、自治会もＰＴＡもなかなかできなくて。母や親戚に手伝ってもらって、いろいろ工夫しながら子育てをしてきたのですけど、ある日、息子に言われたんです。「お母さん、よその家ではお母さんの手作りのクッキーやカレーパンがあるのに、家はどうしてないの」って。
それで、お菓子教室に通い始めたんです。オーブンから流れてくるいい匂いは、幸せの匂いだなと思って、家を空けることが多い分、家にいる時にはお菓子を作ることにしようと決めたんです。自分が作るのも楽しいし、食べてくれる人の美味しそうな顔を見るのもうれしくて、幸せな気分になるんですね。すっかりハマってしまって、今ではお菓子屋さんを開きたいくらい(笑) お菓子は、人を幸せにする魔法ですね。
- ――では最後に、ドラマを見てくださっている子育てに奮闘中のお母さんたちにエールを！
- 美咲さんのセリフにもあるんですが、子育てを全部ひとりでやろうとすると本当に大変ですよね。小さな空間に、子どもとお母さんを閉じ込めてはいけないと思うんです。分かんないことや困ったことはいろんな人に相談して、人の力を借りるということが大事だと思いますね。あとは、お菓子作り！ 小さい頃は、プリンやババロアやブロマンジェといった牛乳を使ったやわらかいものがオススメです。お子さんとクッキーの型抜きをしたり、一緒に作っても楽しいですよ。
