2018年4月7日(土) よる11時40分〜

Specialスペシャル

Topics原作者・藤岡陽子さん現場訪問

 3月下旬、本作の原作小説「いつまでも白い羽根」を書かれた作家の藤岡陽子さんが収録現場にいらっしゃいました。「このドラマが、看護学校で頑張る生徒たちのことを広く知ってもらえるきっかけになることを願っています」と語っていた藤岡さんに、原作を書くことになったいきさつや、ドラマ化の感想などをうかがいました。

藤岡さんご自身、30歳のとき看護学校に入学したそうですね。
 入学したのは、ちょうど子どもを妊娠していたときです。勉強と子育てに追われながら、1年休学したこともあり4年がかりで卒業しました。人生で一番きつかった時期です。30歳だからこそ見えたものもあり、10代の同級生がキラキラしていてまぶしくもありました。
劇中で、看護学校は100人入学して、卒業できるのは60人ほどとの描写がありました。ご自身が大変な状況の中、藤岡さんはどういうモチベーションで勉強を続けたのでしょうか?
 一度入ったからには何としてもやめられない、と思っていました。自立して生きていく上で、何か職を手につけたいと切望していたので。
看護学校に入る前、藤岡さんは新聞記者をされていたそうですね。そこから看護師を目指したのはなぜですか?
 新聞記者を辞めて、アフリカのタンザニアに留学したんです。そこで、『医療の力があれば』と感じる場面に何度も遭遇して、その思いが帰国後も消えることがなく、看護学校に入学しました。いま思えば、そこまで行動できるなんて、私も若かったのでしょうね(笑)。
実際、どんな学生生活を送っていたのですか?
 0歳児を育てながら、レポートに追われる日々でした。大学と違って専門学校は卒業したらすぐ戦力にならなければいけません。そのため、学校の厳しさも半端なかったです。生徒たちの間では、看護学校でなく監獄学校だね、と話していたほど(笑)。先生も本当に厳しくて。でも、先生と自分の年齢が近くなると、あの厳しさの意味が理解できるようになりました。当時は毎日課題が出て、自宅でその課題と翌日の実習のための準備と家事をしなければならず、睡眠時間もほとんどなかったです。
そんな中、病院での実習もあったのですね。瑠美はいきなり重病患者を担当しました。実際もそういうケースがあるのでしょうか?
 重病患者さんの担当になるのは、珍しいことではありません。ときにはまだ生まれたばかりなのにガンを患う赤ちゃんの世話をすることもあります。私は30歳を過ぎていたので、精神的な面で受け止めることができましたが、19歳や20歳でこれだけ過酷な状況に向き合わなければいけない同級生たちを見て、看護学生はなんてすごいのだろう、と心底思いました。私が彼女たちと同じ年齢の頃は大学生で、毎日楽しく過ごしていました。一方で、こんなにも過酷な世界で生きる女の子たちがいることを世間の人たちに知ってもらいたいと強く思ったんです。そこで、37歳で小説家としてデビューすることになり、題材として看護学校時代の、凝縮された時間のことを選びました。
 病棟実習も本当に残酷。昨日まで面倒を見てきた患者さんが突然亡くなると、『私は何もできなかった!』と自分で自分を否定してしまい、結果的に学校に来られなくなる場合もあります。生徒たちがどれほど経験を経て看護師になるのか、ぜひ知ってほしかったんです。
連ドラ化の話が来たときの感想は?
 頭が真っ白になりました(笑)。このデビュー作は私にとって本当に特別な作品です。当時、自分の中にあった熱の全てを注ぎ込んで書きました。それが連ドラになるなんて。まさに奇跡が起きたようです。私をデビューさせてくださった編集者さんに、ほんの少し恩返しができました。多くの方に物語を届けられることが幸せですし、看護学生のことを知ってもらえる機会を与えていただきました。
 新川さんの強いまなざしは瑠美そのものですし、キャストの皆さんが原作のキャラクターをどう立体化してくださるのか、本当に楽しみです。
出演者の皆さんにどんなことを期待していますか?
 この物語には、真っ直ぐな思いがたくさん詰まっています。瑠美も千夏も典子も藤香もいろいろなものを抱えていますが、それでも真っ直ぐ前を向いて進みます。キャストの皆さんが真っ直ぐな思いを前に押し出してくださったら、素晴らしいドラマになると確信しています。
では、視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。
 看護学校という特殊な場所で、若い女性たちが日々努力を重ねているところを見ていただきたいですし、一方で典子のように子育てをしながら人生の岐路に立ち、自分で選択して看護師になる生き様。そんな選択の重みが視聴者の皆さんに届き、ご自身が生きる上での強さに繋がってくれたら、原作者としてとてもうれしいです。
ところでなぜ、主人公を10代の瑠美にしたのでしょうか? 藤岡さんご自身の歩みもとてもドラマティックだと思います。
 大学受験の失敗という、人生で初めての挫折を味わった冒頭の瑠美にとって、看護学校の入った頃はゼロから、もしかしたらマイナスからのスタートです。それでも、人は自分さえしっかりしていれば、何度でも人生をやり直せる、ということを若い彼女を通し、伝えたかったんです。一人の人間がだんだんと力を蓄えていく過程も描きたくて、主人公を若者にしました。
 それともう一つ。この作品では人にとって出会いがいかに大切か、ということも伝えたかったんです。瑠美にはモデルにした同級生がいて、彼女は千夏のような友達との出会いでどんどん変わっていきました。千夏にもモデルにした子がいて、看護師に憧れ、目指し、見ていても本当に真っ直ぐな女の子でした。ちなみに藤香のモデルにした子もいます。と言っても、言動はあくまでフィクションで、参考にしたのは美貌だけですけど(笑) 。
原作は看護師の日常だけでなく、登場人物の描写にも藤岡さんの経験が反映されているのですね。
 それがドラマになるわけですから。私が卒業した看護学校が結構“ざわついている”そうです (笑)。