“一生に一度”が新型コロナで…ギリシャ・オリンピア市での聖火リレー 姉妹都市が中学生の派遣中止
新型コロナウイルス影響は子供たちの卒業式などにも及んでいます。ウイルスの脅威から何とか伝統の卒業式を守った中学校がある一方で、愛知県には「一生に一度」の体験が失われた子供たちがいました。
卒業生に向けて、ひとりではなむけの合唱曲を贈る在校生…。6日、岐阜県高山市の東山中学校で行われた卒業式です。
在校生:
「私たち在校生はこの場で言葉と合唱でみなさんに感謝の気持ちを伝えたかった…」
新型コロナウイルスの影響で、在校生の参加は代表の1人だけ。マスクの着用が義務付けられるなど厳戒態勢で行われました。
卒業式が終わった後、卒業生が担いでいるのは「卒業みこし」。この中学校の伝統で、卒業生が手作りした神輿に先生を乗せて練り歩きました。
卒業生:
「むっちゃ楽しかったです。できんって聞いとったもんで、できてうれしかったです」
別の卒業生:
「この神輿を見てほしかったです、在校生に」
中止も検討されましたが、校長が教育委員会とかけあい、子供たちの願いを優先しました。
校長:
「どうしてもやりたいという(生徒の)気持ちもいろいろ聞きましたし、悩みましたが、その気持ちを大事にしてなんとかやろうと。ご批判もあるかもしれませんが」
新型コロナウイルスの脅威から何とか守られた子供たちの願い。一方で…。
女子中学生:
「(荷物の入った鞄を)閉じて行く感じですね。直前にダメだよってなったから、すごく残念です」
愛知県稲沢市のこの女子中学生(14)が、新型コロナウイルスの影響で中止に追い込まれたのは、単なる「旅行」ではありませんでした。
稲沢市役所のロビーに展示されたトーチ。稲沢市では、市内に9つある中学校の代表の生徒をオリンピックイヤーに合わせてギリシャ・オリンピア市に派遣し、オリンピア市での聖火リレーに参加する事業を実施。
これまで、夏・冬5つの大会で稲沢市の中学生がランナーを務めてきました。
稲沢市の担当者:
「(国府宮の)『はだか祭』有名ですよね。オリンピックも古代オリンピックは裸でやっていたということで、(オリンピア市と)『裸つながり』で姉妹都市になっています」
裸の伝統がつないだ縁で続いてきた交流。3月8日から男女18人の生徒が派遣されることになり、女子中学生もメンバーの1人でした。しかし…。
稲沢市の担当者:
「日本だけじゃなくギリシャでも感染リスクが高まっているというところは、非常に心配なところだなと思います。(生徒たちが)とてもガッカリするだろうなと…」
オリンピア市周辺でも感染が広がっているため、稲沢市は生徒の派遣中止を決定。急遽、5日説明会を開き、参加予定だった生徒と保護者に中止を伝えました。
稲沢市長:
「大変残念であります。断腸の思いでありますけれども、中止をするという判断に至ったわけでございます」
保護者:
「聖火リレー自体の延期に伴って、この派遣も延期というか再度行っていただけるという判断をされることはあるんでしょうか?」
稲沢市長:
「採火式やオリンピアで行われる聖火リレーに、中学生が参加できるということは恐らくないであろうと推察されます」
呆然とする生徒たち…。簡単には心の整理がつきません。
中学生:
「ちょっと先にあった目標が消えた感じで、すごいショックでした。どこにも当たれない感情が込み上げてきて、すごい悔しいです」
別の中学生:
「悲しいというかショック。すごい今までいろいろ準備してきて…」
生徒たちの目標は、ウイルスという「見えない相手」に阻まれました。
オリンピアに行く予定だった、女子中学生は…。
女子中学生:
「(聖火リレー)走るときにみんなで履く靴です。みんな同じです」
靴は聖火リレーで走るために今回用意されたものでした。
女子中学生:
「『こうやって走るのかな』とか考えていました。『みんな笑顔でやってるんじゃないかな』みたいな。『でもちょっと緊張してそう』とか思ったり…」
オリンピックの聖地での聖火リレー。「一生に一度の思い出」の代わりに、やり場のない思いだけが残りました。
女子中学生:
「(中止決定が)夢だったらよかったなとか思ったりしましたね。皆が泣いているのを見ると、なおさら泣いちゃいそうだったけど…こらえた(笑)」