岐阜県に出された大雨特別警報から1週間が経ちました。高山や下呂といった観光地にも大雨が降りました。新型コロナウイルスで大きなダメージを受けた観光産業にとって、ダブルパンチだと岐阜県の古田知事は話します。

GoToキャンペーンを目前に控えて、感染拡大の観点から反対する声も聞かれます。翻弄される下呂の温泉旅館を取材しました。


 飛騨川沿いに建つ温泉旅館「小川屋」。1948年創業、客室数120の大規模老舗旅館です。2年前に客室や温泉施設をリニューアルしました。

小川屋の外山総支配人:
「恐れ入りますが、検温だけお願いいたします。緑が付きましたので、結構です」

 7月8日に岐阜県に大雨特別警報が出されてから一週間。その後も断続的に降る雨を警戒しながら、各地で復旧作業が続いています。

岐阜を代表する温泉街・下呂も大雨に見舞われましたが、幸い温泉街に目立った被害はありませんでした。

国が旅行代金の一部を負担するGoToキャンペーンを目前に控えた豪雨被害。15日午後、下呂市小坂町の災害現場を視察した岐阜県の古田知事は…。

古田岐阜県知事:
「コロナの問題で苦労しているわけですけれども、いよいよ観光についても積極的に打って出ようかという矢先にこの集中豪雨ですから。観光というものを、もう1回どういう戦略で再構築していくかというのを、一緒になって議論していきたいと思います」

観光の街、下呂を襲ったダブルパンチ。小川屋でも…。案内してもらったのは、個室露天風呂付きのスイートルーム。源泉かけ流しとあって人気の高い部屋ですが、大雨を理由に15日の予約はキャンセルになりました。

外山総支配人:
「下呂市というのはかなり縦に長いですからね。我々の位置している所の下呂温泉には何もなかったんですけれど、お客さまは心配ですからね、問い合わせがかなり殺到して。(コロナの後)稼働率が7割くらいは戻っていたんですね。それが半分以下になりました」

戻りつつあった客足。小川屋ではGoToキャンペーンで弾みがつくと期待していた矢先の豪雨でした。さらに…。

吉村大阪府知事:
「僕は全国的なGoToキャンペーンは今やるべきではないと思っています」

 大阪府の吉村知事が東京都の感染拡大などを背景に、GoToキャンペーンを全国的に実施することに意義を唱え、同様の意見が全国の一部の知事からも上がりました。

15日の国会では…。

国民民主党の馬渕議員:
「その状況であれば、このGoToキャンペーン、実施すべきじゃないということなんです」

西村経済再生担当大臣:
「各県の知事からいろんな声が来ていること。国民の感情・心情にもしっかりと寄り添いながらですね、国交省において今、検討が進められている」

感染拡大の不安払しょくがどこまでできるのかが焦点となっています。政府が予定通り22日から実施するとしているGoToキャンペーン。

外山総支配人:
「正直な話、すごく期待してます。いろいろ言われてますけど、かといって『じゃあいつなの?』といったところで、年間通して8月が1番稼働率が高いんですね。8月が今の状態で入っていけば、これはもたない」

経営に計り知れないダメージを与えたコロナウイルス。東京での感染拡大を心配しつつも、8月の稼働率を上げて少しでも経営を立て直したいと旅館では考えています。

Q.全国的にGoToキャンペーンを進めるのはどうかという声もありますが?

外山総支配人:
「普通に考えればそうでしょうけど。われわれ経営者とすれば『そうですね。じゃあ来ないでください』と普通は言いたいですけど、ただ経営上それはもたないんです」

 コロナウイルスによって直面した旅館の危機。そして、岐阜県内の各地に爪痕を残す豪雨被害。岐阜の温泉街・下呂は2つの苦難に翻弄されています。