去年までの過去5年間の9月から12月に、愛知県内で起きた交通事故による死亡者数。時間帯別に見ると、日の入りの前後1時間、5時から7時の薄暗い時間帯、「薄暮時」に特に多いことがわかります。

 この時間帯の事故対策として、最も有効なのが「車のライトの早めの点灯」。しかし取材をしてみると、「早め」の認識にポイントがありました。

 夕暮れ時のドライブレコーダーの映像。車が細い道を進んでいると…交差点の右側から突然自転車が現れ、あわや衝突。

 原因は、車と自転車が互いにライトをつけていなかったことから、気付くのが遅れてしまったためとみられています。

愛知県警本部交通指導課の笠井次長:
「『夕方の5-7時は魔の時間』ということで、この時間の交通事故の多発が非常に心配される」

 愛知県警によりますと、交通事故による死亡者数は年間を通じて午後5時から午後7時が最多。日の入りの前後1時間、「薄暮」と呼ばれる時間帯です。

 中でも秋から冬にかけては、暗くなる時間と通勤・通学など多くの人が出歩くタイミングが重なるため、事故の件数が急増。主な原因はライトの「無灯火」だといいます。

笠井次長:
「電気をつけますと、歩行者を早く発見できますし、歩行者の方からも走ってくる車を早く発見することができるので、9月には夕方の5時になったらライトをつけてくださいとお願いしています」

 警察が呼び掛けるのは、9月では午後5時での点灯ですが、9月15日、実際に名古屋の街で様子を見てみると…。

 日の入り前の午後5時、まだ明るく、傾いた日差しがまぶしい時間帯。ライトをつけている車はほとんど見当たりません。

(リポート)
「午後5時半を過ぎました。ようやくヘッドライトをつけている車がちらほらとみられるようになってきました。」

 その後、日没から10分ほどの午後6時になると、周囲も薄暗くなり8割ほどがライトを点灯。それから15分ほどで一気に辺りが暗くなると、ようやくほぼすべての車のライトがつきました。ドライバーの意識は…。

男性:
「夕日が沈むころ。6時くらい」

別の男性:
「5時くらいですかね。(基準)ないです、適当につけちゃいます」

また別の男性:
「(午後)7時くらいにはつけています」

 名古屋で10代~80代の男女30人に聞いたところ、半数以上が日の入り時刻の午後6時ごろにつけるという結果に。点灯のタイミングについては「なんとなく暗くなった」と感じる時と応えた人が大半でしたが、実は、人の目の機能と認識にはズレがあると、目の専門家は指摘します。

名古屋市立大学病院・眼科 安川准教授:
「ちょっと暗がりになると見にくくなるので(視力)1.0が0.7になる」

 人の目は、明るさの急激な変化に対応しきれないため、「薄暮」の時間には一時的に視力が低下してしまうと指摘します。

 改めて定点カメラの様子を見ると、日没後はわずか30分で暗くなります。早めのライトの点灯はドライバーにとって少しでも明るさの変化による視力の低下を補うのに効果的だと言います。

 さらに、ライトの効果を検証した映像を見ると、2台の車は同じ速度で走っていますが、ライトをつけている車は遠くからその位置を認識できるため、早くから自分との距離を把握することが可能に。歩行者が車の存在に気付くとともに、焦らず対応することができます。

安川教授:
「運転手側としてはライトをつけていることの意義が感じにくいというところがあると思うんですよね。ライトは、主に歩行者に知らせる意味で必ずつけておくべきだと思います」

 これからの時期、ますます危険が高まる薄暮の時間。「ライトを早めに…」そんな歩行者への思いやりが大切です。

 ちなみに薄暮時の事故対策には、自動車自体にも変化が出てきています。実は今年4月から販売される新型車は、暗くなってくると自動でライトがつく「オートライト」の装着が義務化されています。

 オートライトは明るさの単位で「1000ルクス」。日没15分ほど前のちょうどこれくらいの明るさだということです。

 しかし実際には、搭載の義務は継続生産の新車などへは2023年10月まで、また既に売られている車には義務化されないため、この機能が普及するには10年くらいかかると想定されています。

 そしてもう一つ、歩行者側の対策として、事故防止に有効なのが、帽子やキーホルダーなど気軽に身に着けられる反射材がついたアイテムです。

 警察は、車に対して歩行者の存在を知らせることも非常に効果的として、反射材の着用も呼びかけています。