国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット」。事業化の決定から12年、開発が遅れに遅れ、そこへ新型コロナの影響も重なって三菱重工業の経営状況も悪化。

 事実上、事業を凍結することも視野に検討されていることがわかりました。

(リポート・2015年)
「後輪が滑走路から離れました!機体が浮上しました!MRJが初めて宙に浮きました!」

 多くの期待と夢を乗せ、大空に飛び立った三菱のジェット機…。あれから5年、初号機納入のメドが立たないまま、「日の丸ジェット」の実現はさらに遠のくことになりそうです。

 戦後初の国産旅客機「YS11」以来、半世紀ぶりとなる国産ジェット旅客機「MRJ」の事業化が決まったのは2008年。

 将来の需要を見越し、コンパクトな機体で国際航空市場への進出を目指しました。

 2014年には機体を公開。

(リポート・2014年)
「後ろのモックアップは、今回が3回目の展示ということになるんですが、熱い商談が行われている最中です」

 海外の航空ショーにも出展し、これまでにおよそ300機の受注を決めるなど、開発は順調に進んでいるかと思われました。

 しかし、当初2013年としていた納入時期は、度重なる設計変更や開発の遅れで6度の延期に…。

三菱重工業の泉沢社長:
「初号機の納入につきましては、2021年度以降になると判断いたしました」

 イメージ刷新で、名前が三菱リージョナルジェット『MRJ』から『スペースジェット』に変わったものの、そこに追い打ちをかけたのが新型コロナでした。

 スペースジェットの販売先となる航空各社は、新型コロナの影響で急速に業績が悪化。今後の需要が見込めない状況に…。

 関係者によりますと、こうした状況を受けて開発を手掛ける三菱航空機の親会社・三菱重工業は、更なる開発費の削減を検討。事実上、事業の凍結は避けられないものとみられます。

 三菱ジェット事業の凍結の検討が広く報道されると、三菱重工の株には「買い」が殺到。

 スペースジェットの開発の遅れで20年ぶりの赤字となった三菱重工でしたが、事業凍結により収益が改善するとの思惑で、市場から好感を得る皮肉な結果に…。

 一方、100万点以上あるといわれる航空機部品。部品を製造する下請け企業のすそ野は広く、スペースジェット事業が凍結されれば、今後、東海地方の経済に大きな影響を与えかねません。

大村愛知県知事:
「航空宇宙産業、飛行機産業をですね、自動車に次ぐ第二の柱として大きく育てていこう、盛り上げていこうという方向性は揺るぎません。航空需要は必ず回復すると思いますので、愛知・中部・日本をこれからもひっぱっていく産業の柱の一つとして、後押しをしていきたい」

 三菱重工は10月30日の決算会見で、航空機事業を含めたグループの新しい事業計画を発表する予定です。