名古屋市内にあるとある立体駐車場。その中を走り回る男女や、カメラマンの姿も…。

 行われていたのは、駐車場を舞台にした『演劇』。皆さんは役者で、観客は車の中に。23日から期間限定で、名古屋市千種区にあるボウリング場「星が丘ボウル」の駐車場で始まったのです。

 公演開始前、稽古に臨む役者たち。東京を拠点に活動する演劇ユニット「円盤ライダー」のメンバーです。代表を務めるのは愛知県出身の渡部将之さん。

円盤ライダーの渡部さん:
「ここが舞台のセンターなんですけど、この感じでこうやって芝居をします。駐車場を舞台にして(演劇を)やらせてもらう形になったので」

 駐車場を舞台にして、お客さんは車の中で観る。コロナへの感染リスクを減らすことが出来る「車内観劇」です。この取り組みの背景には、劇団が置かれたある環境が大きく影響していました。

渡部さん:
「今年はそもそも予定していたものが、ダイヤモンド・プリンセスさんの方は当然全部無くなって…」

 ダイヤモンド・プリンセス号。国内で最初に集団感染が確認され、長らく乗客が船内にとどまることになった、あの豪華客船です。

 円盤ライダーは3年前からダイヤモンド・プリンセス号が入港するたびに船内で公演を行っていましたが、今年は全て中止となりました。

渡部さん:
「今このご時世なんで、お客さまに大丈夫だよと言えるのは、車に乗ったまま見るというのが一番安心かなと。半年ぶりかな。久しぶりに生の演劇ができるのかなというか。楽しみです、ワクワクしています」

 公演初日。車で次々と訪れるお客さん。15台ほど設けた駐車スペースは「満車御礼」です。

 演劇の内容は、渡部さん演じる映画監督が様々なトラブルに見舞われながらも、ユニークな仲間たちと共に映画作りに奮闘するストーリー。

(リポート)
「本物の駐車場でやっているのでとてもリアルに感じます。演劇場でやっているよりもむしろ距離が近く感じますね」

<役者>
「パッシングくださーい!パッシング!パッシング!」

 観客も車のライトで役者の求めに応じます。

女性客:
「わくわくしますね、アトラクションみたいな気持ち」

男性客:
「車に乗っている人も参加できる舞台を作り上げているところも、工夫されていて面白いなと」

渡部さん:
「うれしいですね。初日にこれだけ(観客に)入ってもらって。直接生の芝居を安心して届けるってことが、初日で一度できたかなと思ってますので、自信をもって千秋楽まで駆け抜けられるんじゃないかなと思いました」

 ダイヤモンド・プリンセス号の集団感染に直面し、演じる場を失った円盤ライダーの公演「ざ☆ロードショー」。風の吹き抜ける駐車場で11月5日まで行われます。