愛知県豊田市で三つ子の母親が生後11カ月の次男を床に叩きつけ死亡させたとして逮捕される事件があり、現在も裁判が行われています。

 悲しい事件を繰り返さないようにと立ち上がったのは同じ三つ子や双子の母親です。多胎家庭への支援の現場を取材しました。

 おそろいの服を着た子供たち。名古屋市内で開かれた集会に参加したのは「三つ子」や「双子」、その親です。

参加した母親:
「妊娠したこと自体は2人目が欲しかったのですごい嬉しかったんですけど、まさか三つ子とは思わなかったので…」

別の母親:
「産まれてから先のことがなかなか考えられなくて、でもまあ案ずるより産むが易しっていうのをすごく実感して、生まれてからはすごく元気に…(泣)」

支援団体代表・日野さん:
「本当に大変だったんだね!わかるわかる!」

 育児の悩みを気軽に相談してもらおうと開かれたこの集会。去年、名古屋に設立されたばかりの多胎家庭の支援団体「あいち多胎ファミーユ」が企画しました。

 代表の日野紗里亜さん。自身も三つ子の母親です。

日野さん:
「(多胎育児)当事者同士のつながりもすごく大事なことなので、多胎の大変さをみんなで共有できるようなイベントが大事だと思っています」

 今、こうした多胎家庭を支援する動きが各地で広がっています。それは「ある事件」がきっかけでした。

 去年1月、愛知県豊田市で三つ子の母親・松下園理被告(31)が生後11カ月の次男を床に叩き付け死なせたとして逮捕されました。

 一審で傷害致死の罪に問われた松下被告に下されたのは懲役3年6か月の実刑判決。弁護側は控訴しました。

 一方で、裁判で明らかになったのは過酷な多胎育児の実態でした。3人分でミルクは1日24回、常に誰かが泣いている状態で当時、過酷な育児で松下被告はうつ病を発症していたといいます。

 こうした状況を聞いて動いたのは同じ「三つ子」「双子」の母親たちです。新たに名古屋で支援団体が設立されるなど多胎家庭を支援しようとする動きが広がっていて、裁判所に松下被告の「減軽」を求める署名も1万3000人分余りに上りました。

 支援の動きは行政でも…。事件があった豊田市では、多胎の妊娠を公的支援が必要な「特定妊婦」とすることを決め、出産から健診まで保健師の家庭訪問を定めるなど、支援体制を見直す動きが少しずつ広がっています。

 7月2日に開かれた控訴審の初公判。

松下被告:
「次男の遺骨に毎日触れています。命を、未来を奪ったことに、ごめんねと謝りました」

 弁護側は「三つ子の育児をほぼ1人で担う中でうつ病になり犯行時は心神耗弱状態だった」として執行猶予付きの判決を求めました。

 裁判の傍聴者の中には、名古屋で多胎家庭の支援団体を立ち上げた日野さんの姿も…。

日野さん:
「今回の事件は孤独が招いた事件だと思うんですよね。だからこそ私たちが団体として立ち上がった以上、二度とこういう事件を起こさないように、みんなでつながっていきたいなと強く思いました」

 発足したばかりの「あいち多胎ファミーユ」。日野さんらは今、ヘルパー派遣や相談支援事業の仕組み作りを進めています。

 団体の運営費は理事らの持ち寄りがほとんどで、バザーを企画してまかなうなどしています。

日野さん:
「運営費がすごい悩みなので(バザーの売上を)それに充てらればなと。(Q.いま運営費はどうやって捻出してる?)…手弁当で…。今後そこ(運営費)はポイントだと思うんですよね。もちろん非営利だから儲けるわけはないんですけど、マイナスっていうのはどうしていくかってことですよね、どうやっていくか課題です」

 この日、日野さんらが訪れたのは名古屋のドラッグストアチェーンの本社。企業に多胎家庭の支援への理解を求めました。

理事:
「1日8回おむつ替えを双子ちゃんに三歳までしたという、仮のザクッとした計算で大体8万枚くらいは…」

ドラッグストアの担当者:
「8万枚!」

日野さん:
「(多胎では)ミルクやオムツの消費がものすごく恐ろしい量で無くなっていく。何か多胎の家庭が受けられるサービスが無いかと私たちは模索している最中です」

同・担当者:
「当社で何かご協力できることがあるのかないのかわかんないですけども、そういったことを模索させて頂ければなと思います」

 ドラッグストア側からの提案も…。

同・担当者:
「多胎育児のことを全く理解していないので、社員教育のために講師としてお招きしてとかも、お願いしたらやっていただけますか?」

日野さん:
「そういう機会を頂けたら全力で駆けつけます」

同・担当者:
「(多胎家庭のお客様に)店頭で一言声を掛けられる社員になると思うし、それが広がっていけば住みやすい街になっていく気がします」

 二度と同じ事件を繰り返さないために…。それが支援を支える「三つ子」や「双子」の母親たちの一番の想いです。

日野さん:
「これから先そんなこと起きないように、どんなことができるかだと思っています。あってよかった、このおかげで助かったと思えるような支援ができることが大事だと思います。愛知だけじゃなくて全国的にまんべんなく支援が受けられるのが一番だと思ってますので、名古屋がモデルになって各地域に広まっていけばいいのかなと思ってます」