愛知県瀬戸市の高校生棋士、藤井聡太七段は、28日に行われた棋聖戦・第二局に勝ち、最年少タイトルに王手をかけました。話題となった藤井七段の和服姿ですが、あるエピソードがありました。

 藤井聡太七段の地元愛知県瀬戸市。

瀬戸市民:
「瀬戸にタイトル持って帰ってきてほしいなと思います」

別の市民:
「変な話があるから、心配だけどね。素晴らしいね」

 また一歩、前人未到の大記録に前進した、藤井聡太七段。最年少でのタイトル獲得記録をかけて戦った、棋聖戦第2局。いつもは藤井七段の大一番をそばで見守ってきた、師匠の杉本昌隆八段ですが、この日、その姿は名古屋に。

研修会の担当者:
「きょうの指導の先生ですけど、杉本八段です」

杉本八段、この日は未来の藤井七段らに将棋を指導。かつて藤井七段も腕を磨いた、将棋のプロ棋士を養成する奨励会の下部組織、「東海研修会」です。

高校生:
「同じぐらいの年で活躍されているので刺激になっていますし、応援しています」

小学生:
「棋士の中でも、誰もわからないような手を指してほしい」

子どもたちあこがれの藤井七段。この日は、タイトル戦初となる和服姿で登場しました。この和服、実は…。

杉本八段:
「中学生でプロになって、まだ大きくなるから身長止まったら教えてくれって言って…」

 去年の夏、弟子の晴れ舞台にと、和服を贈ろうと決めた杉本八段。しかし、藤井七段は和服に関心がなかったため、呉服店がある京都へは、藤井七段の母・裕子さんと選びに行ったといいます。

色とりどりの生地が並ぶ呉服店で、杉本八段が提案したのが、若者らしくとベージュに近い明るい色でしたが…。

杉本八段:
「『派手過ぎです』とお母さんに言われたような」

最終的に母・裕子さんが主導権を握り、黒の羽織に濃紺の着物に落ち着きました。袴の生地は、江戸時代に格式の高い武士が好んではいたといわれる「仙台平」だそうです。

杉本八段:
「良く似合っていましたね。タイトル戦の初の和服は、感無量ですね」

 子供たちの指導のため、藤井七段の対局をなかなかチェックすることができなかった杉本八段ですが、休憩時間になると弟子の指し回しに唸ります。

杉本八段:
「『これが将棋の常識』と言っていた手が覆されるかもしれません。このまま勝つと、歴史的な勝利だと思います」

藤井七段の常識を覆す一手が、相手の攻勢を一変させたのです。一般的には「玉」を守るために使うとされる「金」を、盤面中央へ押し上げ、攻めで使うという前例のない将棋を展開したのです。

杉本八段:
「新しい手だね」

研修生:
「新しい価値観ですね」

 お昼休憩。藤井七段が注文したのは、海老の天ぷらがたっぷりとのった「海老天重」。一方、杉本八段はおにぎり弁当でした。

手に汗握る対局が始まってから7時間半。師匠の杉本八段、親心をのぞかせます。

杉本八段:
「もし暑かったら(スーツに)着替えたらと何度も言ってあるんですけど、なんとか頑張って着ているんですね」

 第1局では、渡辺三冠の16連続王手を、紙一重でかわす激しい将棋を見せた藤井七段。殺害予告の直後でありながら、この日は一度の王手も許すことなく…。

渡辺三冠:
「負けました」

“現役最強”渡辺三冠も脱帽した、藤井七段の指し回し。

渡辺三冠:
「一気にバタバタっとダメになってしまった。今日、差がついてしまったので、もう少し良い将棋を指さないといけないなと思います」

藤井七段:
「ここまで良い状態で指せているかなと思うので、次戦も気負わずに臨みたいと思います。(和服は)実際に着てみると思ったより快適というか、普段通りにやれたのかなと思っています」

着物姿も初々しい高校生棋士が進む先、17歳と11カ月での最年少タイトル獲得も、はっきりと見え始めました。