新型コロナの感染拡大を防ぐため、岐阜県高山市は夜9時以降の酒類を伴う飲食などの自粛を呼びかけていますが、これを発端に飲食店では混乱が広がっています。

 呼びかけ自体は真っ当なことのように思えますが、混乱した原因は高山市側の対応の矛盾にありました。

<チラシの内容>
「午後9時以降の『酒類を伴う飲食』、『接待を伴う飲食店利用』を回避してください」

 12月18日、高山市が午後9時以降の酒類を伴う飲食の自粛を市民に呼びかけるために配布した新聞の折り込みチラシです。このチラシに困惑するのが、市内の飲食店です。

飲食店を営む男性:
「チラシはもう落胆しかなかった。『9時に出ないように』みたいな言葉で書かれると…」

 落胆しかなかったという理由は、高山市では飲食店に対し、営業時間の時短要請が出されていないにもかかわらず、市民に対して午後9時以降の飲食の自粛を呼びかけたからです。

 岐阜県は18日からの25日間、午後9時までに営業時間を短縮するお酒を提供する飲食店に、協力金100万円を支払う制度を設けました。

 県内32の市町村が制度の利用を決めましたが、高山市は飲食店のクラスターが発生しておらず、また21日現在で新型コロナの感染者は12人と、名古屋などと比べて少ないとの理由から手を挙げませんでした。

高山市の担当者:
「一律に要請をかけてしまうことが、『市内に感染が広がっているのではないか』とか、誤解を生じさせてしまうという恐れがある」

 飲食店利用の自粛をチラシで呼びかけたことについては、県からのお願いによるものだったといいます。

高山市の担当者:
「(県からの)文言そのままでお知らせしたところですが、ちょっと伝わりにくい部分があったと感じております」

 市内の飲食店からは、市が時短営業の対象になることを望まなかったにもかかわらず、午後9時以降の飲食の自粛を市民に呼び掛けるのは矛盾だとの声があがっています。

飲食店を営む男性:
「『9時以降は自粛回避してください』という連絡がきて、僕らは本当にどうしていいか分からない状態です。補償とセットという形にしていただきたいと思いますね」

 約50の飲食店が軒を連ねる「飛騨高山一番街」。例年なら多くの人で賑わうこの時期も、市内で新型コロナへの感染が確認された11月の下旬以降、店は開いていてもなかなか客が来ない状況が続いています。

 市民に自粛を呼びかけるのなら、時短営業の要請と協力金はセットのはず…。行政の「矛盾」に歯がゆい思いが募ります。

飲食店を営む男性:
「現場をちゃんと認識してもらって、後は遅れてでも時短要請してもらって…。僕らもちゃんと感染者を出さないように努力をしてきたので、高山からもうこれ以上出さないような努力をしたいと思います」