17日、愛知県瀬戸市出身の藤井聡太二冠(18)が、名古屋で行われた朝日杯に出場し、公式戦全敗中だった強敵・豊島将之竜王(30)に勝利しました。

 今から3年前の2018年。羽生善治九段や当時の名人らを破り、史上初の中学3年生15才で「朝日杯」で優勝した藤井聡太二冠。

 その後、数々の栄光を手にしてきた藤井二冠が、未だ越えられない壁がありました。それが愛知県一宮市出身の豊島将之竜王(30)。

 初対局は4年前の夏、棋王の挑戦者決定トーナメント。すでにA級棋士の1人だった豊島竜王に藤井二冠は完敗…。

藤井四段(当時):
「やはり実力の差というか、A級の壁の高さというのは改めて感じました」

 その後の対局では藤井二冠が善戦するものの、最後は豊島竜王が勝利をつかんできました。そして二冠となって初めて挑んだ去年10月の王将戦も、豊島竜王の粘りで逆転され結局「黒星」。これで公式戦6連敗に。

藤井二冠:
「やはり実力が足りないのかなと思いました」

 将棋界の巨匠を次々と倒してきた藤井二冠にとって、唯一といっていい「勝てない相手」でした。

 同じ愛知県出身の2人。実は藤井二冠がプロ入りする前の6年前に、杉本昌隆八段の計らいで対局をしたことも…。

プロ入り前の藤井二冠(当時12):
「せっかく豊島先生と指していただけるので、自分の力を出し切りたいと思いました」

当時七段の豊島竜王(24):
「小学6年生でこれだけ指せたら、自分の時と比べても圧倒的に強い」

 そして2021年、両者の初対局になったのが、17日に名古屋・国際会議場で行われた朝日杯の準々決勝。

藤井二冠:
「自分にとっても楽しみな対局なので、精いっぱい指して良い将棋を見せられるように頑張りたいと思います」

豊島竜王:
「非常に強敵ですけれども、しっかり指して良い内容の将棋が指せたらと思います」

 ファンの前で行われた対局。大盤解説会では師匠の杉本八段も登壇し、会場を盛り上げました。

杉本八段:
「イメージとしてアスリートがぜい肉をそぎ落とすというか、削って削って究極の形というのが今の豊島さんのスタイル」

 藤井二冠、序盤に積極的な攻めを見せ豊島竜王も応戦。

解説:
「いきなり対局始まって、リング中央で殴り合っているような感じですかね」

 中盤は互角の展開となり、お互い持ち時間40分がなくなる中、徐々に豊島竜王がリードしていきます。

 しかし、藤井二冠が放った「8六歩」をきっかけに逆転。公式戦7戦目にして同じ愛知県の先輩、豊島竜王から初白星を挙げました。

藤井二冠:
「強い相手と対局できるのはすごく楽しいことなので、過去の成績というのは忘れて一生懸命指そうと思っていました」

 7回目の挑戦でようやく超えた壁…。

豊島竜王:
「序盤に失敗してしまって中盤あたりで難しくなったような気もしたんですけど、最後の方に何かチャンスがあったのかもしれないですけど、ちょっと分からなかったです。8六歩がいい手でしたね」

藤井二冠:
「今まで6局やって勝てていなかったので、ホッとした気持ちはあります。しっかり集中して良い将棋をお見せできるようにしたいと思います」

 対局後、ぬいぐるみを手に笑顔を見せた藤井二冠。朝日杯の準決勝・決勝は2月11日に東京で開催され、藤井二冠は準決勝で渡辺名人と対局する予定です。