救急隊が病院に受け入れを4回以上求めるも、受け入れ先が決まらず、出動先の現場に30分以上とどまらざるを得なくなった状況「搬送困難事案」。心配されていたこの事態が、ついに名古屋市で起きました。

 一刻を争う救急搬送に1時間以上もかかり、運ばれる途中で心肺停止になるケースが、先週末に名古屋で相次ぎました。

 名古屋市消防局が25日に発表した2件の「搬送困難事案」。

 1件目は70代の女性のケースで、22日の午後8時頃、家族からの要請を受け救急隊が出動します。現場に到着した救急隊は通報から12分後に受け入れ先の病院探しを始め、8つの病院に問い合わせるものの、満床などを理由に受け入れを断られ続けます。最終的に名古屋市外の病院への搬送が決まるまでに36分もかかり、女性は搬送中に心肺停止状態になりました。

 2件目のケースは60代の男性で、24日の午後7時頃に本人が消防に救急要請。同様に救急隊が搬送先を探し始めますが、こちらは10件の病院に断られ、受け入れ先が決まったのは30分後。男性も市外の病院への搬送中に心肺停止状態になりました。

 その後の2人の容体を名古屋市は明らかにしていませんが、搬送困難事案として国に報告したということです。搬送に時間がかかってしまった理由、それは…。

名古屋市消防局の担当者:
「今は新型コロナの感染症で陽性の方、あるいは患者さんがすごく増えている状況ですので、通常なら救急患者さんを診ていただけるところがなかなかそこまで手が回らない状況になっているんじゃないか」

 救急の患者を引き受ける医療機関の多くは、新型コロナの患者を受け入れる大規模な病院。2人の受け入れを断った市内の病院も、新型コロナ患者が入院していてベッドは満床状態でした。新型コロナの医療体制がひっ迫し、感染症以外の病気やケガの救急医療に影響を与えています。

 1年近く新型コロナの対応に当たってきた名古屋市の河村市長は、この事態に…。

河村名古屋市長:
「申し訳ないということでございますけど。(コロナ病床の)全体的なキャパを、県とも相談しないかんけど増やすと。大至急対応をとっていきたいと思います」

 新型コロナ患者の治療を請け負うのは、以前から救急医療を担ってきた高度医療機関。コロナの最前線治療は救急医療と重なるため、限られた病院とスタッフに集中しています。

名古屋掖済会病院の北川副院長:
「コロナの病棟を増やせば、当然救急の病棟の方はどんどん圧迫されていく。例えば、どうしても名古屋市内で(搬送先が)見つからないということであれば、少し早い段階から範囲を広げて、市外の大学病院とか色々な所を含めて、早くに搬送先を見つける。(新型コロナの)退院基準を満たした方で、まだ残念ながら救命センター等のベットを退院できないような方が結構みえますので、後方病院の確保、そういうような形でまた新しく新規の患者さんを受けていただく」

 名古屋市に統計が残る2011年以降、初めてだったという重度傷病者の搬送困難事案。コロナの感染が続く限り、再び同じようなことが起こらないとは限りません。