新型コロナウイルスを抑え込む切り札といえば、何と言ってもワクチンです。国は一刻も早い接種開始を目指していますが、前例のない大量接種には課題も多く、スケジュールは遅れ気味です。

 その新型コロナワクチンの接種に向けて、名古屋の病院ではどんな準備が行われているのか取材しました。現場ならでは懸念もあるようです。

予防接種センター センター長の菊池医師:
「この流行を抑えるためには、ワクチンは残された唯一のカードですので、これを速やかに接収していく必要があると思います」

 名古屋市西区の名鉄病院。東海地方でも数少ない予防接種を専門に行うセンターを開設しています。センター長の菊池均医師は…。

菊池医師:
「ワクチンがどれだけ日本に送られてくるか、どの地域に何本配布するかを国が決めますので、ここにどれだけ入ってくるかもまだ分からないです」

 感染防止の切り札であるワクチン。菅首相は2日、接種の開始時期について「できる限り2月下旬」としてきた目標を前倒しして、2月中旬を目指す考えを明らかにしましたが、具体的なめどは立っていません。

 名鉄病院は名古屋市のコロナワクチン接種機関になっていますが、ファイザー社製のワクチンの保管に必要な超低温の冷蔵庫がいつ届くのかすらわからない状態です。

 それでも病院では接種の手順を確認するなど、できる準備を進めています。

菊池医師:
「こういう形のクーポン券が送られてきます。このクーポン券を持って医療機関に行きますと、これは風疹の時に使っているものですけど、このような問診票があります」

 コロナワクチンの接種手順は他のワクチンと同様です。治験データではファイザーのワクチンの予防効果は90%以上で、インフルエンザワクチンの60%程度を大きく上回り、効果も期待されています。しかし、気になるデータも…。

菊池医師:
「非常に重篤な副反応として、アナフィラキシーショックということが起きます。ワクチンであればどれも起こり得るんですけれども、(その頻度が)普通の今まで使われてきたワクチンよりも若干多いんです」

 強いアレルギー反応であるアナフィラキシーショック。インフルエンザなど従来のワクチンであればその確率は100万分の1程度ですが、ファイザーのコロナワクチンでは10万分の1の確率で発生すると言われています。

 名鉄病院では、接種後に15分から30分ほど待合室などで待機してもらい、経過を注意深く観察するとしています。

 一日も早い接種が求められますが、菊池医師はある懸念を持っています。

菊池医師:
「このワクチン5回分入っています。1人だけ打ってあと誰も来ないと、この4人分がゴミになっちゃうんです」

 ファイザーのワクチンは一つの瓶に5回分が入っていますが、1度開封すると決められた時間内に接種しなければならず、優先接種で打つ人を限定すると使い切れなくなる可能性があるのです。

菊池医師:
「実は、2009年の新型インフルエンザワクチン接種の時にもこれが起きました。あの時には子供が優先接種だったんです。とても使いきれなくて毎日余ってしまう。今(医者の)手が足りなくて日本中困っている訳なので、一緒についてきた方に一緒に打つ、これが『接種する人数を倍増できる』とても良い方法だと思います」

 菊池医師は、優先接種の対象となる高齢者と同じタイミングで付き添ってきた家族などに接種できれば、無駄をなくし効率的な接種が可能だと考えています。

 公平性をいかに担保するかが課題となりますが、貴重なワクチンを無駄にしない対策は必要です。スピード感をもっていかに接種を進めるかが問われています。