元・第72代横綱 稀勢の里の荒磯親方が、東海ラジオ『荒磯親方 横綱人生道』で「横綱の重み」ついて話した。

 荒磯親方が、横綱に昇進して最初に感じたそれまでとの違いは「綱を巻く」ということ。綱を巻いた瞬間「違う世界に入ったんだという感覚があった」。そして「重みが違う」というのは、重量があるということと「責任の重さ・重圧の大きさ」のようなものだと語った。

 親方が最初に土俵入りを披露したのが明治神宮で、そのときなぜか、鼻血が出てきたという。「冷静でいようと自分に言い聞かせていたが、体はどんどん興奮状態になって行った。心と体のバランスが崩れたのではないか」そして「はじめはメンタルを保つのがむずかしかった」と振り返った。

 横綱についての「指南」は特に受けなかったそうだが、親方は「先代師匠が元横綱だったので『横綱とはこういうものだ』という話を、15歳で入門にしたときから聞かされていた。『強くなったらわかるときがくる』と言われて稽古に励んできた。横綱に昇進したとき『こういう世界なんだ。こういう景色なんだ』というのが少し見られたかなという気持ちになった。師匠の言葉が10%ぐらい理解できたかなというのが一番の喜び」と話した。

 そして「(横綱昇進後)早々に怪我をして満足に相撲が取れない状況になってしまったので、横綱としての成績もそうだが、本当に不十分な短い横綱時間だった。しかし、やはり、なってよかった思う気持ちのほうが強い」と続けた。

 親方は、横綱として心がけていたことについて「常に冷静で行こうという気持ちで横綱をつかんだ。横綱として、無の状態、空の状態を意識しながら取っていたが、2回目の優勝の時、涙を流したり、まだまだ精神的に子供だなあと思ったことも多かった。自分で決めていたことができないことが結構あった」と反省していた。