新型コロナワクチンをめぐり、ブースターと呼ばれる3回目の追加接種について、厚生労働省の分科会が「必要である」との見解を示しました。専門家は、感染予防効果に期待する一方、「誰に、いつから」といった検討の必要性を指摘しています。

愛知県がんセンター病院の伊東医師:
「ブースター接種(3回目接種)をすることによって、落ちてしまった感染を予防する効果というのを大きく上げることが一番のポイントになるんじゃないか」

 こう話すのは、感染症専門医で愛知県がんセンター病院の伊東直哉医師です。3回目接種による感染予防効果に期待を寄せます。

 新型コロナワクチンは、接種後の時間の経過やデルタ株などの変異株の拡大によって、感染予防効果が下がることが指摘されています。

 藤田医科大学は8月、ファイザー社製ワクチンを2回接種した人を対象とした調査で、1回目接種から3カ月後には、2回目接種の2週間後に比べ、抗体の量が4分の1程度に下がるという研究データを発表しました。

伊東医師:
「多くの研究で、感染予防効果が最大で80%くらいまで落ちてきていることがわかっている。実際に僕の肌の感覚でも、病院で働いているような状況でも、医療従事者のブレイクスルー感染というのは増加しているなと感じています」

 そんな中、本格的に議論され始めた3回目接種。

伊東医師:
「感染や発症を予防する効果は、時間経過とかデルタ株の影響で大きく落ちてきてしまっている一方で、入院や重症化することを防ぐ効果は保たれているんですね。つまり、ブースター接種をするべきかどうかという問題に関しては、大きく落ちてきている感染を予防する効果を再び高めることを目的としているわけです。私は必要かなと思っています」

 厚生労働省のワクチン分科会では、3回目接種について、「2回目までと同じワクチンの接種を基本とする」「2回目の接種完了から8カ月以上後に実施する」とし、今後さらなる議論を重ねていくとしています。

 気になるのが3回目接種での「副反応」です。

伊東医師:
「3回目の副反応というのは、おおむね2回目と変わらないというところになります。ただし、まだまだ検証されている人数が少ないので、安全性に関して検証する必要はあるかと思います」

 3回目の接種での副反応について、ファイザー製ワクチンでは「2回目と比べ頻度は同程度か低かった」、モデルナ製では「許容できる範囲」や「半数以上は軽度か中等度」、さらにアストラゼネカ製では「1回目より少なかった」と、それぞれ報告されています。

 一方、3回目の接種には課題もあると伊東医師は指摘します。

伊東医師:
「誰を対象にやるのかとか、いつやるのかという課題はあるかと思います。高齢者とか基礎疾患のある人だけにするのかとか、いつから開始するのかとか。ワクチンをまだ打っていない人たちが当然いるわけです。どっちを優先するのかという問題もありますし、未接種者に打つこととブースター接種との全体的なバランスを考えるということは、結構重要な問題なんじゃないかなと思っています」