ケガ乗り越え古巣・宇都宮戦で約1年7ヶ月ぶり復活ゴール!

 B1リーグ第6節で「新たなキャリア」をスタートさせたプレーヤーがいる。

 シーホース三河・橋本晃佑(29)。2015年に故郷・栃木でキャリアをスタートさせ、2020年には富山へ移籍。

 203センチ105キロの恵まれた体格に加え、3ポイントシュートが得意という強みを買われ、東京五輪代表候補に名を連ねていた橋本に悲劇が襲ったのは2021年の4月。

 古巣・宇都宮ブレックス戦で右足アキレス腱を断裂。この負傷により、わずか移籍1シーズンで富山を離れることになった橋本に声をかけたのが、金丸晃輔らの移籍もあり新体制作りを目指していた鈴木貴美一ヘッドコーチだった。

「日本一スリー(ポイントシュート)がうまい選手」と以前から注目していたタレントの獲得に踏み切った。

 加入したチームメンバーとは別メニューの地道で辛いリハビリを経て、コートに戻ったのはケガから約9ヶ月が経った古巣・富山戦。

 第1クォーター終了間際に登場したときに上がった、この日一番の三河ブースターの拍手を受け、何とも言えない感慨に浸った橋本だったが、さらなる悲劇が襲う。

 復帰からわずか1ヶ月後、今年2月の練習中に今度は右腕を骨折、全治「未定」という診断だった。

 三河のユニフォームと同じ黒のアームガードに覆われた右腕をかばいながら、チーム練習を横目に下半身・体幹強化など出来る鍛錬を続け、試合日はコートの外から仲間を見守り続けた。

 バスケ選手がバスケットを出来ない…。折れそうになる心を奮い立たせながら懸命なリハビリは続いた。

 橋本にとって三河2季目のシーズンが始まっても試合復帰は出来なかったが、昨季とは違う表情の明るさと、次第に戻ってきた練習時の動きの良さは目についた。

 日本代表戦の為、一旦中断しBリーグのシーズンが再開された11月19日。橋本にとってキャリアをスタートさせた古巣、そして右アキレス腱断裂した試合の相手でもある宇都宮ブレックス戦。

 ホームアリーナに響いた「橋本晃佑、入ります!」のコートDJ・小林拓一郎の声。橋本にとって300日ぶりの復帰の瞬間だった。

 この日の試合前に出場することは決まっていたという橋本は「元々緊張する方だが、さすがに試合前から緊張していた」と話したが、リバウンドとディフェンスには本来のエナジーがあふれていた。

 そして、その翌日も途中出場。前日の鮮やかな緑から赤のシューズへと履き替えた橋本に、その時が訪れる。

 第4クォーター開始直後、1点を追いかける展開で、橋本が放った右ウィングからの3ポイントシュートは「カカンッ」という乾いたリングの音と共に決まった。

 583日ぶりの復活ゴール。まだ痛々しい治療の跡も残る右腕から放たれたシュートは、橋本の代名詞というべき美しい放物線を描いたスリーだった。

 東海テレビ「TIP OFF!シーホース」の取材に「待ってくれていた(鈴木)貴美一(HC)さんに、ブースターの皆さんに恩返しをしたい。ディフェンスにスリー、色々狙っています」と語った橋本晃佑。これからのシーホース三河の巻き返しに大きな存在が出来た。