三重県四日市市出身の女子レスリングの向田真優選手は、引退した吉田沙保里さんの階級で東京オリンピックで戦っています。8月5日の準決勝に勝ち、残すは金メダルがかかった決勝です。

 吉田沙保里さんの後継者として、婚約者の専属コーチと二人三脚で歩んできた向田選手は、集大成の「金メダル」獲得に臨みます。

■「メダルとったら天国、負けたら地獄」…婚約者のコーチと二人三脚で狙う金メダル

 日本女子レスリング53キロ級は、女子レスリングがオリンピック種目となったアテネ大会から、4大会連続で吉田沙保里さんがメダルを獲得してきた階級です。その後継者として、東京オリンピックで金メダルが期待されているのが向田真優選手です。

向田真優選手:
「ほんと頑張んないとですよね。メダルとったら天国、負けたら地獄みたいな。ほんとそうだと思いますよ」

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 6月に向田選手は、婚約者で専属コーチの志土地翔大さんと“勝ち取りの神”として信仰のある、千葉県の「香取神宮」を訪れていました。

向田選手:
「2人で金メダルが取れるように祈祷を。気を引き締められたというか、よし頑張るぞという気持ちになれた」

■憧れの吉田沙保里を追いかけて…至学館で磨いた世界で負けない技術

 向田選手がレスリングを始めたのは5歳のころ。負けず嫌いで、負けるとよく泣いていたそうです。当時から目標はオリンピックに出ることで、憧れは吉田沙保里さんでした。

 中学、高校と東京のJOCエリートアカデミーで腕を磨き、高校3年生のとき、憧れの吉田沙保里さんとも対戦しました。この試合で向田選手は試合序盤に、吉田選手から立て続けにポイントを奪い、会場を驚かせました。

 吉田選手から反撃にあい、金星は逃しましたが、ある決断をしました。

向田選手(当時):
「(吉田選手に)一番近いところに行って技を盗んだり吸収することが、夢への近道かなって考えて…」

 2016年、吉田沙保里さんらがいる愛知の至学館大学へ入学し、技術の習得に力を注ぎました。

 その年に行われたリオオリンピックでは、吉田沙保里さんの練習パートナーとして、ナショナルチームにも帯同。この経験により、さらにオリンピックへの夢が膨らみました。

 そんな向田選手を、全日本の強化部長(当時)だった栄和人さんは「もう100%ポスト吉田沙保里」と高く評価していました。

栄和人強化部長(当時):
「吉田選手より強いかというと疑問…。吉田よりも強くなって世界に行ってほしいですね」

「吉田選手だけでなく他のライバルにも勝って、東京オリンピックで金メダルを取りたい」。当時から向田選手は強く語っていました。

■夢が目の前に来ている…吉田沙保里も認めた53キロ級の後継者として金を目指す

 2019年、吉田沙保里さんは引退会見で自身の後継者について…。

吉田沙保里さん(引退会見):
「こないだ53キロ級で優勝した、向田真優選手もいますし…」

 結局、直接対決は1度だけで『吉田さんを倒してオリンピックへ』という願いは叶いませんでしたが、得意のタックルに磨きをかけ、今ではポスト吉田として日本レスリング界の顔となりました。そして、2019年の世界選手権では銀メダルを獲得し、東京オリンピック出場を決めました。

向田選手(世界選手権後):
「本当に夢だったので、夢が目の前に来ているという思いが強い」

■「最後に勝ち切る粘り」を…五輪延期もコーチと二人三脚で課題に向き合う

 その直後に当時、至学館のヘッドコーチを務めていた志土地さんとの交際が周囲に明らかになりました。そして、オリンピック開幕を5か月後に控えた2020年2月、2人は向田選手の大学の卒業に合わせて愛知県大府市から東京に拠点を移すことを決めました。

向田選手:
「(東京では)最初はバタバタというか大変でしたけど、今はもうリズムもつかめていい感じです。練習相手もいろんな相手がいるので、毎日すごく充実している」

 新拠点で順調なスタートを切ったかにみえた2人でしたが、オリンピックの延期が決定。トレーニングジムや道場も使えない状況になりました。

 そんな中、マット練習ができるようになると、向田選手はもう一度基本から練習に取り組み、日々課題に向き合いました。

これまで国際試合では、終盤守りに入って逆転負けをすることが度々あり、「最後に勝ち切る粘り」が向き合う課題でした。

「そこで勝ったら一生喜べるが、負けたら一生後悔する。それを考えるだけで…」と、オリンピックの怖さを口にする向田選手。金メダルが期待されているだけに、大きなプレッシャーがかかります。

■二人三脚の集大成…金メダルをとってコーチと肩車を

 2021年の年明けに、家族と初詣に出かけた向田選手。「東京オリンピックで金メダル!翔大コーチと肩車が出来ますように」と、絵馬に願いを込めました。

向田選手:
「いろんな人が自分に夢を乗せてくれているので、本当に金メダルしかないと思っています」

 歩んできた二人三脚の道もいよいよ集大成。決勝は8月6日(金)の夜に行われます。