コロナ禍で人気の屋外でのキャンプやバーベキュー。愛知県日進市で、塗装業や金属加工業など専門分野が異なる3人の男性が、地域の新しい名物にしたいとバーベキューグリルを開発しました。

 そのグリルは、焚き火台の上に乗せるだけで「鶏の丸焼き」や「焼き魚」「焼き菓子」など、様々なものを簡単に焼くことができます。

■武骨ながらもスタイリッシュなデザイン…組み立て式のバーベキューグリル

 愛知県日進市にある「染川製作所」で、バーベキュー用の調理器具の「SOME-GRILL(サムグリル)」は生まれました。

【画像20枚で見る】鶏の丸焼きからバウムクーヘンまで 専門分野異なる地元の3人が開発した『BBQグリル』

組み立て式のこのグリルを開発したのは、資源回収業の権田浩康さん(49)と塗装業の豊田秀樹さん(48)、そして金属加工業の染川和也さん(46)の3人です。

 鉄板で組み立てられたデザインは、武骨ながらもスタイリッシュ。

上部に切り込みと穴があり、高さの調節や串の角度の固定などの実用的な機能が付いています。

さらに専用の袋もついているので、各パーツを収納でき持ち運びにも便利です。

■本業はバラバラでもモノ作りにかける思いは同じ…試行錯誤の末に理想の焼き台が完成

 このバーベキューグリルが生またきっかけは、地元の商工会からの依頼でした。

豊田さん:
「軍鶏をイベントに焼きたいから、商工会から(金属加工の)染川さんの方に発注がありました」

 開発のきっかけは、8年前。3人が所属していた地元商工会からの依頼でした。まずは、イベント用に大型の焼き台を製作。

 その後小型のサイズにも挑戦したいと2020年の夏、1羽用の焼き台を試作しました。ところが、高さの調整がネジ式だったため、火にかけている時は熱く、調整ができません。

「安全に美味しく焼ける焼き台を作りたい」、3人の試行錯誤が始まりました。

 アイデアを出すのは、ソロキャンプが趣味という資源回収業の権田さんと、ボーイスカウトの活動をしている塗装業の豊田さん。

それを金属加工のプロ・町工場の染川さんが形にしていきます。

 本業はバラバラでもモノ作りにかける思いは同じです。

それぞれの持ち味を発揮し、ついに理想の焼き台が完成。価格は収納袋付きで2万1500円に設定しました。

■弱火でじっくり…グリルの実力が一番わかる丸鶏で最終チェック

 この日、商品の最終チェックを行っていました。まずは、バーベキューに欠かせない火元作りからです。焚き火台は、市販の普通のサイズのものを使います。

 焼くのは、グリルの実力が一番わかるという丸鶏。スーパーで売っている生のものを使用します。香りづけにニンジンやジャガイモ、ニンニクを中に詰めて金属の串を刺します。

 塩胡椒をたっぷりと振ったら、いよいよ焼く工程に。串を一番高いところにセットし、弱火でじっくり焼いていきます。

権田さん:
「後は待つだけです。こういう時間を楽しんでもらいたい。のんびりとした時間を」

■地元に新たな「名物」を作りたい…丸鶏がこんがり焼けるグリルに込めた思い

 待つ時間もバーベキューの楽しみのうちという権田さん。3人はなぜ専門外のグリルの開発にここまでこだわったのでしょうか。

権田さん:
「商工会青年部の中でも『新しい名物を作ろうぜ』と、何度もあったんですけど…。我々の中でくすぶっていたっていうのもあって」

 自分たちの力で日進に新たな「名物」を作りたい。そんな思いが原動力となり、失敗を乗り越えて完成にこぎつけました。

 焼き始めから90分、いい色に焼けてきました。焼きあがった鶏肉を食べやすい大きさにカット。1羽でおよそ大人6人分になりました。招待した知り合いの家族に、味を確かめてもらいます。

男の子:
「美味しい」

母親:
「あの大きさだったら、ウチでもやろうかなって。遊びながら回してできますもんね」

■焼いては生地を塗るを繰り返し…オリジナルバウムクーヘンの完成

 焼くことができるのは、鶏だけではありません。

様々な物が焼けるという意味で“サム”と付けただけあり、「串焼き」や「焼き魚」なども…。

 続いては、バウムクーヘンを焼いていきます。串にスティック状のパンを刺し、ホットケーキの生地を塗りグリルの一番低いところで焼いていきます。

豊田さん:
「色を付けないと年輪ができないので、焼き色を入れて」

 焼いては生地を塗る。これを5回繰り返すと、いい色のオリジナルバウムクーヘンの完成です。

母親:
「外が香ばしく食べ応えがあって美味しい」

 鶏の丸焼きに続き、焼き菓子もうまく焼けました。

権田さん:
「地域経済全体が盛り上がっていったらうれしいなと思うし、そこを目指してどんどん新しいものを提案していきたいなって考えています」

 地域に名物をと生み出された調理器具。3人は新しいものを生み出すことで地元を盛り上げていきます。