名古屋市中区栄の高架下に現れた「街角保健室」は、若者が心や体の悩みを相談できる場所です。このスポットは、名古屋の保健体育の教諭らが、コロナ禍で孤立する女の子たちが気軽に立ち寄れる場所を作ろうと、今年8月から始めました。

 学校の保健室の様に、気軽に相談ができる場所に…。ここでは、保健体育の教諭や産科医らが、性について大切なことを若者たちに伝えています。

■学校の保健室の様に気軽に相談できる場所…10代の女の子のための「街角保健室」

 名古屋市中区栄の若宮広場に現れたピンク色のテント「街角保健室」は、“10代の女の子のための無料スペース”です。

【画像20枚で見る】女子高校生17.7%「会ったその日にする」保健体育教諭らが“街角保健室”で伝えるコト

お菓子にマスク、消毒液や化粧品が振る舞われ、無料でカラーセラピーも…。さらに、生理用品やコンドームも無料で配布しています。

 テントで若者たちに声をかけるのは、名古屋の南山中学と高校で保健体育を教えている中谷豊実先生(59)です。

中谷先生らのグループは、2002年から愛知県内の高校生に、性に関するアンケート調査を実施。8月から若者が心や体の悩みを相談できる場所として、「街角保健室」を始めました。

産科医の丹羽先生:
「これ『生理のトリセツ』っていってさ、(生理が)辛いとき見る感じだけど、あんまり生理痛ひどかったらちゃんと病院きてね」

 咲江レディスクリニックの丹羽咲江院長は、ボランティアの女子大生と共に女の子たちの悩みや不安を聞きます。

女の子:
「生理不順というか…。普通に来て、次の月はめっちゃ少ない、でその次の月はめっちゃ多いみたいな…」

丹羽先生:
「排卵していなかったりすると、少ないと多いの波がある。将来赤ちゃんが欲しいなと思った時に、できやすいタイミングがずれやすいから、その時はちゃんと病院に行って」

 丹羽先生は、雑談をしながらも彼女たちの性の悩みを聞き取ります。

■女の子とどう会話したらいいか分からない…異性と会話できない若者たちの間で進む“性の草食化”

 愛知私学性教育研究会らが2019年に県内の高校生およそ7000人に調査したところ、セックスの経験が「ある」と答えたのは男子が14.6%、女子が12.8%でした。

 丹羽先生と中谷先生は、高校生の性の実態についてこれまで3回調査をしてきました。2002年の調査では男子が28%、女子が33.8%と男女共に30%前後がセックスの経験が「ある」と答えていました。この結果に、丹羽先生は『性の草食化が進んでいる』と指摘します。

産科医の丹羽先生:
「草食化が進んだ、性に関心のない子供たちが増えていて…。一方で、SNSなどで知り合って、会った当日にセックスしてしまう子も少なからずいたということで、二極化が進んでいる」

「街角保健室」では、複数の男女が“恋愛について”話をしていました。

丹羽先生:
「(女の子に)『段階を経て、手をつないでチューして、ハグしてセックスしないとダメだよ』と(男の子に)言ったら、面倒くさいって」

女の子:
「一日で全部しちゃえばいいんじゃない…」

丹羽先生:
「外見はすごくカッコいいし、優しい男の子なんだけど彼女もいない…。女の子とどう会話したらいいか分かってない子が多いんだなって」

 丹羽先生は、異性とのコミュニケーションの取り方や特に性的同意について、しっかり彼らに伝えていく必要があると考えています。

■性に関心のない子と会ったその日にセックスしてしまう子…進む性の二極化

 調査では、アダルトビデオやサイトを見たことがあると答えた女子が32.3%に対し、男子は78.2%にのぼっています。学校で20年以上性教育に携わってきた中谷先生は、今は情報が氾濫し、性について間違った知識がまん延していると話します。

保健体育の中谷先生:
「これあげる、コンドームね。女の子ってわれわれ男よりも色々と立場弱い、体のつくりも性感染症なりやすいのよ」

 性教育用に作られたコンドームは、練習のため2個入り。QRコードを読み取ると、使い方講座や医師が解説する動画を見ることもできます。

中谷先生:
「コンドームは女の子もちゃんと知ってなきゃダメだからね。中にいっぱい大切なこと書いてある。長い爪でキュッキュッっとやったら、『本当に破れるじゃん』とか、男に任せちゃダメだぞ」

 日本は性教育については“超発展途上国”と中谷先生は指摘します。

 アンケート調査で「交際相手と知り合ったきっかけ」について聞いたところ、同じ学校と答えた生徒が78.1%だったものの、SNSやアプリで知り合ったというケースが12.0%いることがわかりました。

 また知り合ってからセックスするまでの期間については、1か月から3か月が22.7%でしたが、会ったその日と答えた女子が17.7%もいました。ここから出会い方やプロセスの問題が見えてきます。

■女子高生「めっちゃ心強いですよ」…今の若者たちに必要なのは気軽に相談できる場所

 2人の女の子が、ナプキンをもらいに来ました。今、コロナ禍で収入が減る人が増え“生理の貧困”が社会問題になっています。

 訪ねてきた18歳の女子高校生は、親が生活保護を受け始めたことをきっかけに、今1人暮らしをしているといいます。

女子高校生:
「(親が)『生活保護のお金なくなったからお金貸して』ですよ。親と生活しても変わらないなって思ったので、いいタイミングだし出ようって」

 市内のシェアハウスで暮らしているという女子高校生の身の上話は、30分以上続きました。

丹羽先生:
「生理痛とか生理不順とか生理のトラブルは、基本的に窓口負担ゼロで医療受けられるから。役所行って病院行きたいと言うと医療券もらえるから」

女子高校生:
「めっちゃ心強いですよ。気軽にいける場所にいらっしゃるので、普段できない相談とかできますよね」

中谷先生:
「コロナで、女の子たちがますます厳しい状況になっている。悩みとか不安をポロっと言ってくれたらサポートする。もしもの時には、あそこ(街角保健室)があるという安心感を提供できていることは良かったかなと」

 学校の保健室の様に気軽に話ができる場所が、今の若者たちには必要と中谷先生は考えています。