愛知県豊橋市に、2021年4月にオープンしたタイ料理の店があります。鶏のミンチと野菜を炒めた「ガパオライス」や、モチモチのライスヌードルをエビと炒めた「パッタイ」など、手作りのタイ料理が人気です。この店を切り盛りする41歳の女性は、3人の男の子を育てながら、朝から晩までパワフルに奮闘しています。

■手作りの「ガパオライス」はおふくろの味…独学で学んだタイ料理が自慢の店

 愛知県豊橋市。市電が通る豊橋駅前に今年の4月に、ランチでタイ料理を出すお店「ガチャガチャ」がオープンしました。店内は、カウンターとテーブル合わせて20席ほどのお店です。

【画像20枚で見る】「コロナで踏み切れた」独学でタイ料理店オープン 3人子育て中のパワフルママの店

女性客:
「本場のタイの味より、食べやすくて美味しいです」

 魚醤とオイスターソースで炒めた鶏ミンチと野菜を、ご飯と一緒に盛り付けた甘辛な「ガパオライス」(1000円 サラダ・ドリンク付き)に、モチモチした米粉の麺とエビや野菜を炒めたタイ風の焼きそばの「パッタイ」(1000円 サラダ・ドリンク付き)など、手作りのタイ料理が揃います。

 切り盛りするのは豊橋で生まれ育った中林衣梨さん(41)です。中林さんは、コロナがなければこのお店を始めることはなかったといいます。

中林さん:
「ずっと若い頃から店をやりたかったんですけど、子育てだなんだかんだで踏み切れることもなかったんですが、コロナで…」

 中林さんは、ご主人が経営する居酒屋を手伝っていましたが、コロナの影響で店の売上は激減。一方、家には小中高3人の息子が…。一家の収入減を補うために自分でもお店を出すことにしました。

 中林さんは、働きながら独学でタイ料理を勉強。おふくろの味が自慢の料理を提供しています。

■「人が来ると楽しい」…緊急事態宣言明けの店は賑やかに

 この日は、緊急事態宣言が明けて最初の週末ということで…。

中林さん:
「期待はあるよね。楽しいじゃん人が来ると。人と話したかったかな」

 中林さんには売上が気になりつつも、人が来て賑やかになることへの喜びがありました。

 午前11時半。オープンすると早速常連のお客さんが…。オープンから半年ということもあり、お客さんはまだ知人が中心です。

女性客:
「どんどん派手になってる、髪の色が。活動的で頑張っていらっしゃいますね、色んなことに」

男性客:
「楽しい方なので、ちょくちょく来させてもらってます」

 中林さんがこのお店を開いたのには、家計を助けるのとは別にもう一つ理由がありました。

■困っている人を放っておけない…中学生以下に食事を提供する「こども食堂」も運営

 この日は、子供2人とお父さんが来店。その目的は「こども食堂」です。中林さんは、こども食堂に携わっていた同級生の誘いで、中学生以下の子供に食事を無料で提供する「こども食堂」に加盟しています。

中林さん:
「『私ずっとやりたいと思っていたんだよね』って、とんとん話が決まっちゃった」

 困っている人を見ると放っておけない性格という中林さん。子供用に辛くないグリーンカレーも用意されていました。

父親:
「学校の帰り道でここを知っているので、2人は通学路。いつも女将(中林さん)が『お帰り』ってやってくれるので」

■店でも家でも手作りがモットー 昼過ぎに一旦自宅に戻り子供たちの食事の準備

 午後2時。ランチ営業が終わり、中林さんは自宅へいったん戻り子供たちの昼食の準備です。

中林さん:
「子供には申し訳ないですね。寂しいかはわからないですけど、不自由な思いはさせているのかなっていうのは思いますね」

 この日は、中林家特製のユニークな納豆かけ焼きそば。子供たちが昼食を食べている間に、夜ご飯の肉じゃがの準備です。店でも家でも、なるべく手作りがモットーです。

 ちなみに、食べた人が食器を洗うのが中林家のルール。すると、出かけていた高校生の長男が帰宅し、洗濯物をたたみ始めました。

長男:
「お母さんが一番楽しんでやっているから、いいんじゃないかなって思います」

中林さん:
「自分の子育てがままならんのに、他の人のためとか…。『自分の子供の事ちゃんとやってからやれ』って言われているんだろうなって…」

■店を経営しながら育児に夫の手伝いに…忙しい毎日をパワフルに楽しむ

 午後、中林さんが向かったのは、豊橋駅すぐのところにある居酒屋「百万石」。昭和41年創業の炭火で焼く焼き鳥などが人気のこの居酒屋は、ご主人が経営しています。中林さんは、ここからはご主人の手伝い。この頑張りは、ご主人の仕事にも影響を与えていました。

夫の大平さん(47):
「うなぎも以前から出してはいたんですけど、注文入ってからさばくってやってみたかった」

 以前は割いた後のうなぎを仕入れていましたが、自分の手でさばきたいと奥さんを見習いコロナ禍に一念発起。うなぎ問屋での修業を経て、今は注文が入ってから生きたうなぎを割いて焼いています。備長炭で焼かれた新鮮なうなぎはお客さんに大好評。そんなご主人の姿に中林さんは…。

中林さん:
「言ったら怒られるけど、器用な方じゃないと思うんですよ。あそこまでやれるようになったのは努力なんだろうなって…」

 緊急事態宣言は明けたものの、まだまだ居酒屋は苦戦中。それでも中林さんは今の状態が楽しいといいます。

中林さん:
「お客さんが来てしゃべったりするのが楽しいので、素人料理なんて言ってますけど、玄人目指して楽しみながらやれればいいかな」

 自身の店を切り盛りしながら、育児に、夫の手伝いに…。中林さんは、忙しくもパワフルにこなす毎日を楽しんでいます。