日本で暮らす私たちにとって、救急車を呼ぶ119番はいざという時に心強いシステムですが、今、新型コロナの感染拡大に加え、不要不急の通報で救急体制に影響が出ています。

 名古屋市では1日平均で救急車の出動件数は324件に上りますが、消防署に密着すると、一口に「救急要請」といえど多岐にわたることがわかりました。

 めまい、酔っ払い、息苦しい…こうしたケースも要請が多くありますが、119番通報するかどうかの判断が難しいのが実情です。

■Case5 一刻も早く119番すべきケースも…目が回って起き上がれない

 早朝、50代の男性が自宅でめまい。吐き気もあり、妻が119番通報をしました。

【画像で見る】新型コロナ感染拡大のなか多岐にわたる『救急要請』 回るめまいや息苦しさ、泥酔者も…

救急隊:
「中入りますね。おはようございます。めまいがするとお聞きしましたが」

男性:
「夜中から調子が悪くて。いきなり気持ちが悪くて、起きてそこで吐いたんですよ。しばらく様子を見ていて」

 深夜2時ごろ、トイレに起きるとぐるぐると回るめまいに襲われ、嘔吐。朝、寝返りを打つだけで目が回るようになったといいます。

 この男性同様、要請で多い事案の一つがめまいです。

救急隊:
「(めまいの通報は)多いですね。めまいと言っても色々な症例がありますので。多いのが“回るめまい”。ご本人は目をつぶっていても回りますので非常に辛い。吐き気が出てきますので辛い症状です」

男性:
「頭をちょっと左右に変えるだけで、ぐるぐる吐き気がするくらい目が回ります」

救急隊:
「今まで経験したことのないような激しい頭痛とか、そんなような状態ですと頭の病気も考えますので、これは一刻も早く呼んでいいような状態です」

 男性は病院で薬をもらい、昼に帰宅。医師から「安静に」と言われ、仕事を3週間休みました。

■Case6駐車場に倒れた見知らぬ“酔っ払い”…住人が119番通報

 住宅街からの119番通報。救急隊が駆け付けると、民家の駐車場に60代の男性の姿がありました。救急車を呼んだのはこの家の住人でした。

通報人:
「びっくりですよ。急にうちの駐車場で倒れていらしたので。これは何かあっては、うちも見ず知らずの人ですので一応救急車を呼んだ形です」

救急隊:
「きょうはどうしました?」

男性:
「酔っぱらっとる」

救急隊:
「ちょっとここじゃ、この家の人がびっくりしちゃうもんだから、一回救急車に乗ってもらっていい?ゆっくりでいいよ。だいぶ飲んどるな、きょう。そっちの青い方に座って。確認のために血圧とか熱とかまずみせて。誰かに殴られたとか倒されたとかではないんだね?」

男性:
「ないないない、喧嘩をしない」

救急隊:
「おうちにはどなたかみえましたっけ?」

男性:
「いや、ぐしゃぐしゃだもんで」

救急隊:
「病院はいい?」

男性:
「ゴミ屋敷なんで」

救急隊:
「病院はどう?行かんでいい?」

男性:
「行かんでいい。ゴミ屋敷でどうすりゃいいの」

救急隊:
「我々に相談されてもそれは困るな。人のおうちのことまで救急車は」

 結局、病院へは搬送せず。身の安全を考え、特別に自宅まで送り届けることに…。

救急隊:
「家に入るとこだけ見せてくれればいいよ」

男性:
「汚い汚い」

救急隊:
「何かあったら119番してよ」

男性:
「ありがとうございました」

救急隊:
「おやすみなさい。はぁ~」

通報者:
「時期が時期なので、色々な方がみえるので、私もそばに寄っていいものやら、救急隊にお任せした方が安心かなと思って。むやみやたらに救急車を呼ぶのは考えるんですけど、状況が状況だったので良かったかなと思います」

■Case7 「息苦しい」と通報も調べると酸素は十分…大事をとって病院へ搬送

救急隊:
「男の方から息苦しいということでご本人さんですか?119番されませんでしたか?今、救急車は必要ですか?必要なんですね。ご本人さんですね」

 70代の男性から119番通報。しかし、どこか会話が噛み合いません。

 自宅のアパート前で待っていた男性。救急車が到着すると、自ら歩み寄ってきました。

救急隊:
「息苦しいのはいつからですか?ちょっと血圧測りますよ」

男性:
「一週間以上」

救急隊:
「食欲がないの?」

男性:
「食欲はある」

救急隊:
「酸素の値はちゃんとあるので大丈夫。心配せんで下さい。37.3度」

 大事をとり、かかりつけの病院へ搬送することに…。

救急隊:
「息苦しくてしょうがないから119番されたんですね?ただ幸いにして、酸素の状態は十分体に入っています。落ち着いて呼吸をなさって下さい」

 その後、男性は診察を受け、この日に帰宅しました。

救急隊:
「ご本人さんもお辛くて119番されていますので、歩いて乗られたからこれは軽症だと(安易に)判断することはなく、必ず体の状態を把握して病院には連絡し、お連れするようにはしています」

■Case8 老夫婦住む集合住宅の一室で“警報ブザー”鳴り出動も…

 深夜1時、「集合住宅の一室で警報ブザーが鳴った」と警察から119番通報がありました。現場は老夫婦が暮らす集合住宅の一室。住人は警報ブザーを押した覚えがないといいます。

救急隊:
「病院へ行く必要はなさそうですか?」

女性:
「それはないよ」

警察:
「たぶん故障だと思う。切っても切れなかった」

女性:
「(夫も)触った覚えがないみたい」

救急隊:
「僕たち引き上げるけどいい?」

女性:
「いいですよ、悪いけどすみませんでした」

救急隊:
「全然大丈夫だよ」

 老夫婦の無事を確認…事なきを得ました。

■Case10 緊急事態宣言明けの繁華街で女性が酩酊状態に

 次は、緊急事態宣言が明けた名古屋の繁華街・中区栄から。

 飲食店の店員からの119番通報で、20代の女性が泥酔しているといいます。

救急隊:
「飲酒で酩酊、嘔吐。店員からの通報」

友人:
「もどすのは1時間前から」

女性:
「本当に申し訳ないです」

 友人とお酒を飲んでいて過呼吸に。1時間ほど続いているそうです。

救急隊:
「救急車の中で休憩しようか」

 女性をストレッチャーに乗せ、救急車へ。友人の連絡で女性の交際相手も駆け付けました。

救急隊:
「過呼吸になったりするのは?」

交際相手の男性:
「(酒を)飲むと出てくるので」

救急隊:
「飲みすぎちゃったの?呼吸も落ち着いてきたね」

女性:
「大丈夫みたいです」

 30分ほどで落ち着いた女性は、車で交際相手の男性の自宅へ。

 現場到着から40分。救急隊は消防署に引き上げました。