名古屋に、SNSで話題となっている「100円で全力で褒める」大学生がいます。ちょっとしたことでも全力で褒めてくれる女性のもとには、褒められたい多くの大人たちが訪れています。

■「100円で全力で褒めます」…路上でちょっとしたことでも“褒めてくれる”女性

 帰宅ラッシュの時間帯の名古屋駅で、行き交う人たちが目を向ける女性がいます。「100円で全力で褒めます」と書かれたプラカードを持つ女性。

【画像20枚で見る】“100円で全力で褒めます”路上で活動する20歳女子大学生 伝えたい「自覚してない魅力」

 名古屋市内の大学3年生の川村知歩さん(20)は月に一度、名古屋駅前の路上で「褒める活動」をしています。知歩さんは、一人30分100円で話を聞いて褒めてくれます。

 午後4時。20代のカップルがやって来ました。彼と同居を始めた彼女は、苦手な掃除を率先してやるようになったといいます。

女性(24):
「今までは部屋が汚くて、私の1人暮らしの部屋を(彼が)全部片付けてくれていたんですけど、同棲を始めて一緒に選んだ部屋だからきれいにしたいなって…」

知歩さん:
「すごい素敵。できないことを認めて、できるようにしたじゃないですか。すごく行動力もあるし、相手に思いやりもありますし…」

女性:
「嬉しい!ありがとうございます」

 知歩さんは、ちょっとしたことでも褒めてくれます。

女性:
「友達には、『家事頑張ってるんだよ』とか言いづらい…。『すごいです』って言われたら『確かに頑張ってるよな』って思いました」

■路上で褒めてきた人数は約400人…「自己肯定感が上がる」などSNSで話題に

 日本一周の旅の途中という男子大学生(22)がやって来ました。男性は、ヒッチハイクでの一人旅をSNSで発信しています。

知歩さん:
「自分の目で見て行動されてる。めちゃめちゃ強いこと。なんでできるかっていったら、自身が自分の人生にこだわってるから」

男子大学生:
「ありがとうございます。今後のモチベーションになります」

 男子大学生は8月末に沖縄を出発。ヒッチハイクで1か月、西日本およそ6500キロを周り、関東に向かう途中でした。

男子大学生:
「(地元の)沖縄が好きで、沖縄の魅力を発信していきたいと。でも、ずっと沖縄にいるのってわからないじゃないですか。だから県外に出てみようかなって…」

 同世代の頑張る姿は、知歩さんの原動力です。

 午後8時。この日は4時間で9人を褒めました。路上で活動を始めて1年。SNSで「プロ褒めリスト」「自己肯定感が上がる」などと話題に。これまでに約400人を褒めてきました。

知歩さん:
「何を褒めたかは覚えています。言葉はつたないと思うんですけど、思いはあったなって」

■頑張っていることを「褒めてもらいたかった」…褒める活動を始めたきっかけ

 知歩さんは、10月から新たに借りたマンションの一室を拠点に活動しています。しかし、なぜ「褒める」なのでしょうか。

知歩さん:
「自分の見た目がコンプレックスで、ダイエットや美容をして頑張っていたんですよ。頑張ってる中で、『褒められたいな』と思って…」

 卑下する自分を変えたい…。そう思い、大学を休学して始めました。「ほめが足りなかった」、「悩みにふみこみたい」…。ノートには、褒める活動を始めた頃に感じた考えや学びがまとめられていました。

知歩さん:
「魅力をお伝えしていくほど、逆に褒め返されることが増えてきたんです。褒め言葉を受け取るようになって、自己肯定感というか、自分のことをどんどん好きになれたかなと」

 褒めて、褒めて、褒められて…。自分を好きになり、自信を持つことができました。

■「占い師は幸せの種を植えている」…人生相談のプロ“占い師”も褒める

 午前10時。この日は、イベントで褒める活動です。グルメや雑貨、占いなどが並ぶ中、知歩さんのブースには多くの人が訪れます。

結婚式の司会業の女性:
「(新郎新婦の)気持ちに寄り添って、どんなことを考えてるんだろうなというのを想像して言葉に出します」

知歩さん:
「人生の中で1回しかないイベントで、言葉に責任を持って、感情とかを考え巡らせて話すことができるって価値がある。その人の思いにご自身がなっていないと、出ない言葉だと思うんです」

司会業の女性:
「元気出ました。若いのに素晴らしいなと、分かってくれようとしているところが。『言葉は自分の経験から』とか、『人格から来ているものだから素晴らしい』って褒めてもらいました」

 すると、隣のブースに出店していた占い師がやって来ました。占い師ならではの悩みが…。

占い師の女性:
「(人を)幸せにするためにしゃべるんだけど、私の話を出すところがなくて…。だから“話を聞いてほしかった”」

 知歩さんは、占いの体験談で返します。

知歩さん:
「(占い師は)幸せの種を植えてるって感じ。その場では忘れても、ふとした瞬間に『あれ、これって(占いで)言ってたことだよね』って思い出すことってある」

占い師の女性:
「嬉しくって、今日も一日頑張ろうって。すごい幸せになっています」

■「褒めるとは相手の魅力を全力で伝えること」…“褒め”と“幸せ”を届け続ける

 知歩さんは、“褒め”と“幸せ”を届けます。

観光名所を紹介する写真家の男性(22):
「コロナの中で、『旅行に行きましょう』と言いにくいし…。だけど、すごく旅行に行きたい気持ちが高まっている人は多い」

知歩さん:
「写真のおかげで、行った気分になれる人もいる。外の世界を見せてくれる人。発信して(人が)見ている時点で、人のことを救っていると思います」

写真家の男性:
「あそこまで肯定してくれる人もいないので。普段、仕事中で褒める人って中々いないし。やる気が出るというか、頑張ろうかなって…」

 看護学校のベテラン教員には、“重ねてきたキャリア”の魅力を伝えます。

知歩さん:
「看護学としての1本の軸に、さらにその軸を太くするために学問を追求しようっていう好奇心とか強さが魅力」

教員の女性(58):
「キャリアを積むのは当然だと思ってやってるので…。こうやって言われてみると『本当だ、大事にしよう』って思って…」

 午後5時。この日は7時間で、13人を褒めました。

知歩さん:
「臆さずに、自分の思ったことを伝えることが一番意識しているところ。(褒めるとは)自覚していない魅力を、私がお伝えすることですね」

 相手の魅力を全力で伝える知歩さん。その言葉に、背中を押される人々の姿がありました。