名古屋の「青柳総本家」は、「ういろう」などの名古屋土産で有名な老舗和菓子店です。この和菓子店は、売上の大半をお土産需要に頼っていたため大苦戦しています。そこで、「地元名古屋の人にも食べて欲しい…」と定番商品をアレンジした様々な商品を開発。概念を打ち破る新商品は話題となっています。

■SNSで可愛さが話題に…カエルまんじゅうをアレンジした「ケロトッツォ」

 名古屋市守山区にある「青柳総本家 守山直営店」。

【画像20枚で見る】『ひとくち生ういろう』で注目の名古屋の老舗和菓子店 ベテランと若手で新たな挑戦

 店頭には、「ういろう」や「カエルまんじゅう」、「きしめんパイ」など、名古屋土産でおなじみの商品が並びます。

 最近の人気は、カエルまんじゅうをアレンジした「ケロトッツォ(クリームチーズ&レモン)」(350円)。

 期間限定で販売するとSNSで話題となり、行列ができるほどの人気に。その後、新作「ケロトッツォ(ラムレーズン&くるみ)」(360円)も加わりました。

男性客:
「形が可愛いのがいい。ラムレーズンが大好きなので、新作にはすごく期待しています」

「ケロトッツォ」が誕生したきっかけは、新型コロナでした。青柳総本家は、売上の大半をお土産需要に頼っていたため大苦戦しました。そこで、原点に戻り「地元の人たちにもっと食べてもらえる菓子を」をコンセプトに、様々な新商品の開発をしています。

■定番のういろうをアレンジ…モチモチして美味しい「ひとくち生ういろう」

「定番に新たな価値を…」と、定番のういろうをアレンジした商品が、「ひとくち生ういろう」です。

 こしあんのういろうに、柚子味のういろうをトッピングした「上がり柚子」(216円)や、黒糖とクルミの入ったういろうを、みりんのういろうでサンドした「柳かげ」(216円)など、様々な季節の味が揃います。

女性客:
「モチモチしてて柔らかくて、とても美味しいです。月に2回ぐらいは(買いに)」

別の女性客:
「『生ういろう』なので、なかなか手に入らないので」

 通常のういろうは、液体の状態で密封し蒸すことで日持ちするように仕上げています。一方、生ういろうの賞味期限は製造日から2日ですが、手作りのため違う味のういろうを重ねたり、飾り付けをすることができます。

■ベテランと若手で生み出す新しい味…毎月発売される「ひとくち生ういろう」の新作

 生ういろうの開発に携わっているのは、入社以来50年、ういろう一筋のベテラン職人の瀧川直人さん(72)と、社内唯一の開発専任スタッフの山口碧さん(31)の2人です。

 毎月、新製品が発売される「ひとくち生ういろう」。この日は、12月限定の「クルミかぼちゃ」を試作していました。

山口さん:
「カボチャパウダーとシナモンを加えたのと、クルミとカボチャの種、角切りのカボチャも。あと、アクセントにラム酒を。ちょっと洋風な味付けに…」

 ういろうは米粉がメインですが、様々な材料を加えることで個性的な味に仕上がります。中でも、湯煎しながらういろうに粘りを出す工程が一番大切だといいます。

瀧川さん:
「生地の粘度が低いと米粉が沈殿してしまったり、粘度を上げちゃうと今度はういろうの歯切れがなくなっちゃう。そこは経験と勘で…」

 山口さんの作業を、ベテランの瀧川さんが温かい目で見守ります。カボチャパウダー入りのういろうに、角切りのカボチャを合わせ、7分間蒸します。

 通常のういろうは蒸したらできあがりですが、「ひとくち生ういろう」はここからもうひと手間。クルミを混ぜたういろうをトッピングし、さらに1時間蒸したら完成です。

山口さん:
「食感のアクセントが欲しくて、ナッツは2種類。ういろう自体の食感もデンプンをミックスしたり」

瀧川さん:
「カボチャの風味があって、ナッツのシャキシャキ感がいい。ういろうは、手をかけたものがあまり市場にない。いい素材を組み合わせることによって、高級感も出てより美味しい」

「クルミかぼちゃ」(249円)は、冬にぴったりの生ういろうです。

■約1年の潜伏期間の末にバズる…斬新なレシピ「焼きういろう」

 最近、定番のういろうに斬新な食べ方があると話題になりました。それは、広報の木下美幸さんが考案した「焼きういろう」です。

 話題となったきっかけは、木下さんが約1年前に「おうち時間を楽しんでもらいたい」とツイッターに投稿したういろうのアレンジレシピでした。

木下さん:
「最初は今より全然フォロワーもいなかったので、“10いいね”ぐらいしかつかなかった…」

 ところが、今年9月に名古屋めし研究家の男性がツイートしたところ、3万6千件以上の“いいね”がありました。すると、家庭で「焼きういろう」を作った人が続々と投稿し、話題に。

「焼きういろう」は、焦げない加工のフライパンやホットプレートを使って作ります。

木下さん:
「ういろうの表面に米油をコーティングさせる感じで…。最初はサラダ油とかオリーブオイル使ってみたんですけど、米油が1番美味しかった」

 ういろうの原料が米粉だからか、米油が最も合ったといいます。焼くことで甘さが引き立ち、独特の美味しさになります。

木下さん:
「1年間Twitterで『焼きういろう』PRし続けてきて、ようやく知っていただけてうれしいです」

 公式ツイッターでは、これまでにういろうのアレンジレシピを50以上も掲載しています。

 ベテラン職人たちが培ってきた伝統に、若いアイデアを加え定番商品をアップデート。「名古屋土産のういろうを地元・名古屋の人にも楽しんでもらいたい」と原点に返った老舗和菓子店の挑戦は続きます。

 毎月新作が発売される「ひとくち生ういろう」は手作りのため、販売する店舗が限られます。詳細はホームページで確認できるということです。