2021年に3つのタイトル戦を争った、将棋の藤井聡太四冠と豊島将之九段。四冠を獲得した藤井四冠と保持していた2つのタイトルを失った豊島九段に、2022年にかける思いを聞きました。

■かつては“藤井キラー”と呼ばれるも…2021年に保持していた2つのタイトルを失った豊島九段

 愛知県一宮市出身のプロ棋士・豊島将之九段(31)は年明け早々、地元の将棋イベントに出席。どんな相手でも丁寧にやさしく指導します。

【画像20枚で見る】藤井四冠は豊島九段の壁をどう越えたか…去年3タイトル争った2人の新年の思い

 トップ棋士となった今でも、地元でのイベントは一度も断ったことがありません。そんな豊島九段には、2022年ある変化が…。

地元の男性ファン:
「今まで殺気立ってたけど、人間的な味があるなと。一皮むけたと思う、負けて」

豊島九段:
「去年(2021年)は、あまり結果は出せなかったけど…。いいところもありましたけど、全体的には勝率も悪かったですし。実力をつけないといけないなと感じさせられた一年でした」

 16歳という若さでプロ入りした豊島九段は将来を嘱望されていましたが、初タイトルは28歳。5回目の挑戦でした。2019年には、竜王と名人を同時に獲得します。

 藤井四冠には、公式戦6連勝。唯一の壁、“藤井キラー”とも呼ばれ、日本中が2人の対局に注目。そして始まった、2021年の両者による「王位戦」、「叡王戦」、「竜王戦」のトリプルタイトル戦。しかし…。

豊島九段(王位戦第五局):
「負けました」

 藤井四冠の保持する王位のタイトルに挑戦しますが、1勝4敗で奪取ならず。

豊島九段:
「競ったスコアにできなかったので、楽しみにして下さっていた方に申し訳なく思っています」

 2021年9月に行われた叡王戦では、2勝2敗とフルセットになりますが、藤井四冠の勝利。叡王のタイトルを奪われます。

 さらに、2021年11月に行われた将棋界最高峰・竜王のタイトル戦では、まさかのストレート負けで、タイトルをすべて失ってしまいました。

豊島九段(竜王戦対局後):
「王位戦や叡王戦もあわせて、実力不足を痛感したので、実力をつけないといけない」

■19歳3か月の史上最年少で四冠達成…2021年に大躍進を遂げた藤井四冠

 一方で、愛知県瀬戸市出身の藤井聡太四冠は、19歳3か月の史上最年少で四冠を達成し、大躍進を遂げました。

藤井四冠(新春会見):
「2つのタイトルを獲得することができて、大きな舞台をたくさん経験できて、非常に充実した一年だった」

 かつて豊島九段に連敗していた藤井四冠が、なぜ強くなったのか。師匠の杉本昌隆八段(53)は、「高校を自主退学したことで、将棋の研究に多くの時間を費やせるようになったのが大きい」と分析します。

杉本八段:
「唯一のウイークポイントは序盤戦術、センス・感性だったので、そこで豊島さんをはじめ他のトップ棋士に追いつけたのが大きい。それがこの1年ぐらいで、変わってきたところ」

 学業を終え、将棋の道を突き進む藤井四冠は、2022年に20才になります。1月3日に行われた一門会では、最後となるお年玉を受け取りました。

藤井四冠:
「キノコは以前より食べられるようになってきたかも…。成人になるといって、将棋の向き合い方は変わることはない。(一人暮らしは)現時点では考えていないです。しばらくは愛知を拠点にやっていくと思います」

■「時間はかかるかもしれないがまた活躍したい」…弟子を取り2022年に再スタートをきる豊島九段

 そして豊島九段は、竜王戦後の2021年11月に行われた将棋日本シリーズで、藤井四冠に勝利。一矢報いて2021年を終えています。

豊島九段:
「これをきっかけに『実力差を埋めていかないと』という気持ちが強いので、諦めない姿勢を示せたのは良かった」

 豊島九段は2022年、弟子を取る事に。岐阜市出身の高校1年・岩佐美帆子さん(16)です。岩佐さんにとって、豊島九段は憧れの棋士。2021年12月に女流2級になる資格を得た岩佐さんは、一宮の支援者を通じて弟子入りを申し入れました。

岩佐さん:
「小学校のころから指導対局などで指導していただいていたので、豊島先生が憧れの先生と伝えました」

 数年前から同年代の棋士が弟子を取るようになっており、豊島九段にも心境の変化があったといいます。

豊島九段:
「自分の期待を押し付けてはいけない。本人も強くなって活躍したいと言っているので、それを目指してほしいと思いますし、ところどころでプラスになればと思います」

岩佐さん:
「一つ一つ丁寧に指して全力で取り組みたいですし、活躍できるような女流棋士になりたいと思っています」

豊島九段:
「これまでも自分の中でいいと思う事をやってきたので、これからも試行錯誤して、その中でいいものをみつけて実力を上げたい」

「時間はかかるかもしれないがまた活躍したい」と話す豊島九段。2022年は師匠として、今度は挑戦者として、藤井四冠に挑みます。

 藤井四冠は、1月9日より新たなタイトル「王将」の獲得を目指して渡辺明王将と戦います。1月9日・10日の静岡県掛川市での第一局から、大阪・栃木・東京などをめぐり、3月26日・27日の最終局は、新潟県の佐渡島で戦います。

 師匠の杉本八段は、王将戦の行方を「渡辺王将は戦略家で2日制の将棋が得意。相手に真正面から戦う藤井四冠に対し、渡辺王将は対策を練ってくるので激戦になるのでは」と予想しています。