名古屋市中区栄に80年以上の歴史を持つ老舗和食店があります。この店は、コロナ禍を乗り切るため2021年8月に、使用しなくなった店の宴会場を「和カフェ」に改装。かわいい和テイストの内装と、地元の名店とコラボしたメニューが話題となり、週末は満席になるほどの人気となっています。

■老舗和食店が開いた活路…使用しなくなった宴会場を「和カフェ」へ改装

 名古屋市中区にある1937年創業の和食料理店「冨士屋本店」は、フグや鰻など季節の料理が味わえる老舗の名店です。

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現在は、3代目の藤川典彦さんに、女将の藤川好子さん、そして娘の鳥居カオリさんで経営しています。

 最近は徐々に客が戻りつつあるものの、店はこの2年間厳しい状態が続いていました。そこで、3代続く店を守るために始めたのが、3階の宴会場を改装した“和カフェ”。昭和レトロの雰囲気が漂う甘味処「和かふぇ冨士屋」です。

女性客:
「和雑貨好きなので、沢山飾られて可愛い。写真映えも」

別の女性客:
「すごい、思った以上に和風って感じで…」

3代目店主の娘・カオリさん:
「(店に)娘も一緒にきて、この広間を見て、『ここカッコいいね!』って。私はただ古いだけっていう風ですけど、若い子たちはこの空間をカッコいいって思うんだなぁと…」

 オープンから3か月、“かわいい”と訪れる客で休日は満席に。ツイッターなどの口コミで話題となっています。訪れるのは、若い人だけではありません。

男性客:
「座るところによって雰囲気が違って…。僕はしゃれた所は似合わないので、落ち着きますね」

■美味しいと思ったら飛び込み依頼…地元の名店と話題のコラボメニューを開発

 魅力は、内装だけではありません。お茶の葉を石臼で挽く「石臼で茶葉挽き体験 川口屋の和三盆付(お手前抹茶含む)」(600円)に、自分で突く「柿田川名水 ところてん」(550円)など、体験しながら味わえるメニューが人気です。

 そして最大の魅力が、地元の名店とのコラボメニューです。1番人気は、「大学芋枡ぱふぇ」(680円)。

名古屋市北区の人気大学芋専門店「名古屋お芋嬢」の大学芋と、アイスクリームの老舗「ぷらんぼん」のほうじ茶アイスを使ったパフェです。外はカリっと中がしっとりとした大学芋に、お茶の風味豊かなアイスが絶妙にマッチします。

女性客:
「(外は)カリっとしていて、中のお芋とのバランスが良くてすごくおいしかった」

 パフェと人気を二分するのが、パリッとした最中に濃厚な抹茶アイスをはさんだ「御園座監修 抹茶アイスもなか」(400円)。名古屋の老舗劇場「御園座」の館内でしか食べられない“門外不出”の一品を、特別に許可を得て提供しています。

女性客:
「御園座に行かなくても、食べられるっていうのがすごく嬉しいです」

 飲食店の経験がなかった3代目の娘のカオリさんは、地元の名店を食べ歩き。美味しいと思ったら飛び込み、「冨士屋」でも使わせてもらえないかお願いして回ったといいます。

 他にも、名古屋を代表するかき氷店「澤田商店」の氷を使った「赤富士氷(いちご味)」(600円)や…。

老舗酒造メーカー「菊正宗」の甘酒を使った「菊正宗 大吟醸あま酒」(400円)なども楽しめます。

■御園座「少しでも恩返しできたら」…先代が築いてきた信頼が生んだ数々のコラボメニュー

 しかしなぜ、名だたる店がコラボに協力してくれたのでしょうか。

名古屋お芋嬢の角井富久栄さん:
「父の代からよくお邪魔して、大学芋の差し入れもしていて…。味も良く知って頂いていたんですね」

苦境にあえぐ「冨士屋」を、何とか応援したいという気持ちがあったといいます。さらに、抹茶アイス最中の販売を認めた御園座は…。

御園座の宮崎敏明社長:
「昔、火事で御園座が燃え再建する時に、冨士屋の初代に出資して頂いた…。昔から御園座は皆さんに助けられ、何回も危機を乗り越えてきたので、少しでも恩返しができたらと…」

 創業から80年以上、地域や他店のためにと先代たちが築いてきた信頼が、通常ならあり得ないコラボを生んでいます。

■企画開始前にも関わらず県外から客が…話題のゲームとのコラボで更に高まる人気

 そんな「和かふぇ冨士屋」の最新のコラボは、人気ゲームアプリ「アイドルマスター SideM」とのコラボです。

ゲーム業界の「バンダイナムコ」が企画した、コロナ禍で苦戦する企業にゲームのキャラクターを使って業績回復に役立ててもらおうという「お仕事コラボキャンペーン」。このコラボの決定をSNSで報告したところ、全国のファンから注目が集まりました。

女性客:
「(コラボは)来てみようというきっかけに」

別の女性客:
「コラボ関係なしにまた来たいなと…。すごく良かったです」

 企画のスタートは2022年1月から。まだ始まっていないにも関わらず、既に県外からも客が訪れています。

カオリさん:
「ゆくゆくはカフェのお客様にも本店のお食事を楽しんで頂いたらと思っております」

 名店にアイドル、次々にコラボを生み出す「和かふぇ冨士屋」は、客の心を掴んで離しません。