国内のお茶の栽培面積は、この40年で36パーセントも減少し、荒れ果てた耕作放棄地が増えています。岐阜県揖斐川町に、荒れ果てた茶畑にできるお茶の実を使って新たな価値を生み出している男性がいます。この男性は、茶の実からとれた純度100パーセントのオイルで、食用オイルやスキンケア商品を作っています。

■耕作放棄地にできた茶の実を有効活用…「茶の実オイル」を作る男性

 岐阜県揖斐川町春日地区の山間には、茶畑が広がっています。美しい風景は「天空の茶畑」、「岐阜のマチュピチュ」とも呼ばれています。

【画像20枚で見る】食用オイルやスキンケア商品にも…「茶の実」が変えるお茶の未来

たねのしずく研究所代表の山田泰珠さん:
「この白くてかわいい花、お茶の花。お茶は椿の仲間なので、すごく香りもいい。これがお茶の実です。この実を乾かして絞って油をとっています」

 たねのしずく研究所代表の山田泰珠さんは、7年前にサラリーマンをやめて揖斐川町に移住。お茶の実からとれる「茶の実オイル」を作っています。

直径2センチほどの茶の実から、3粒ほどの種を取り出し、砕いて低温でゆっくりと搾り出します。茶の実100キロからとれる油はわずか1リットル。純度100パーセントのオイルは、黄金色の輝きです。

山田さんは、この茶の実オイルで食用オイル「茶実油」(105グラム5980円)に…。

「ティーシード スキンケアオイル」(10ミリリットル4400円)、保湿クリームの「ティーシード オイルバーム」(5グラム1210円)などを作っています。

茶の実オイルは、抗酸化作用があるビタミンEが豊富で、椿の2倍、オリーブオイルの5倍も含まれています。しかし、茶の実は農家にとって“あってはならない”ものでした。

山田さん:
「『茶畑に花なんか咲かせやがって』と、茶農家さんは言います。お茶の木って肥料をもらうと、もう生きていけるわって思って花をつけないんです。逆に言うと、きちんと畑に肥料をあげていないと花が咲いちゃうので…」

通常、茶葉の生育を促すために、花の芽は摘み取っています。しかし、人が手入れをしない耕作放棄地となった茶畑では、花が咲いて実ができてしまいます。この地区でも、100軒ほどあった茶農家が高齢化や後継者不足で30軒ほどに激減しました。

山田さん:
「ほったらかそうと思って、ほったらかしている人はいない。かわいそうって思うと同時に、これって宝の山かもしれないよねって。それを何とか復活して、新たな命を作ってあげようと」

■耕作放棄地を開墾し新たな産業づくり…「茶の実」を使って町おこし

 奈良県山添村にある廃校となった小学校の教室では、茶の実を砕いています。2021年に誕生した「茶の実オイル研究所」は、茶の実を使った町おこしをしています。

茶の実オイル研究所の男性:
「一番は耕作放棄地の解消。そのために、茶の実を活用して…」

「大和茶」の産地として知られる山添村の人口は、この50年で半減。荒れた茶畑はイノシシの住処となっています。中森さんたちは、耕作放棄地を開墾して新たな産業づくりを始めました。

同・男性:
「ジャングルになって光が入らないから、花も咲かない…。一度整地してしまえば、収穫量が40倍くらいになる説がある。茶の葉っぱを作ることを思ったら、全然手がかからない」

 茶の実オイル研究所の活動に参加すると、「茶金通帳」にポイントが貯まります。研究所では定期的にワークショップを開催したり、地元の特産品「にゅう麺のスープ」に使ったりしています。また、伐採したお茶の木の枝で炭を作るなど、商品化に向けて様々な取り組みをしています。

同・男性:
「茶の木の炭ということで、茶コールという名前にしようと。地域に根差した人が集えるところ。そこから何かしらお金を生む仕組みができて、ずっと続けられるような仕組みができたらいい」

■「自然の恩恵を受け尽くす」…茶の実の殻を染料に使った洋服などを販売

 2021年11月に、松坂屋名古屋店で自然派コスメなどが並ぶイベントが開催されました。

たねのしずく研究所代表の山田泰珠さん:
「これ(ストール)ね、玉ねぎの皮とお茶」

女性客:
「すごいきれいですね」

 揖斐川町の山田さんは、優しい色合いの草木染のストールや洋服などを販売していました。

山田さん:
「使えるものを使い尽くしたい。恵みを100%生かしたい」

染料に使っているのは、茶の実の殻です。

山田さん:
「自然界には多分、まだまだ使われていないけど役立つものがいっぱいある。自然の恩恵を受け尽くす。そういう風に自然を使わせていただく活動を、もっと進めていきたい」

茶の実が私たちのお茶の未来を変えます。