コロナ禍で外出しない時間が増えたことで、ペットの飼育数が大幅に増えるなど、ブームとなっていますが、その陰で飼っていたペットの世話ができなくなり捨ててしまう「飼育放棄」が急増しています。遺棄された動物の保護に取り組む三重県のボランティア団体は、捨てられた動物たちを幸せにするために懸命に里親を探しています。

■コロナ禍でペットの飼育数の増加と共に…保護される動物の数も倍以上に

 ボランティア団体が運営するペットホテルには、飼い主から預けられたペットの他に、保護された犬や猫の姿がありました。

【画像20枚で見る】虐待受け捨てられたか…ペットブームの陰で飼育放棄急増 柴犬アキちゃんの運命は

ボランティア団体の代表:
「(動物の数は以前に比べ)倍かなと思います」

 さらに別の団体でも…。

動物愛護団体「つむぎ」の代表:
「私たちが保護している子、やっぱり増えてますね」

 コロナ禍でペットを飼う人たちが急増しているのに比例して、三重県四日市市の動物愛護団体「つむぎ」が保護したペットの数は、コロナ前の2019年の40頭から、2021年には95頭へと、倍以上に増えました。

同・代表:
「飼えなくなったから引き取ってほしい。それから保健所に収容された子たち。明らかに捨てられたのかなって思う子も」

無責任な飼い主による飼育放棄によって行き場を失い、保護されるペットが急増しています。

■手の影にビクっとするので…虐待を受けて捨てられたとみられる柴犬

 柴犬のアキちゃん(推定3歳・メス)は、2021年10月に桑名市の山中にいたところを発見され、保護されました。里親が見つかるまで自宅で保護をしている動物愛護団体の女性は、アキちゃんの過去をこう推測します。

動物愛護団体の女性スタッフ:
「人慣れからいって、飼われていた感じ。手の影にビクってするので、虐待を受けて捨てられた可能性は高い」

 現在、アキちゃんはこの女性から愛情をたっぷりと受けて暮らしています。ここで一生過ごすのも幸せそうに見えますが…。

女性スタッフ:
「(里親に)出していかないと次の子を引き取れない。この子に特上の愛を与えてくれる里親様を見つけて…」

■小型犬や子犬が人気の「譲渡会」で捨てられた柴犬の里親さがし

 2021年12月に、アキちゃんにとって初めての「譲渡会」が開かれました。気に入った子がいたら、里親として引き取りを希望する来場者が集まります。

開始早々に、アキちゃんの前に一組の年配夫婦が…。

年配の女性:
「かわいいじゃない」

どうやらアキちゃんを気に入った様子ですが…。

動物愛護団体の代表:
「年齢が見合ってなかったのでお断りしました。あの子(アキちゃん)に介護が必要となった場合に、お世話できるのか、最後まで看取れるかが心配なので…」

 過去に辛い経験をしたペットに、二度と同じ想いをさせたくない。里親になるには厳しい審査があります。その後も来場者は訪れますが…。

来場した男性:
「前ダックス(フント)を飼っていたので、ダックスのような小型犬がいいかな」

小型犬や子犬に人気が集まります。譲渡会終了まで残り30分…。そこへアキちゃんに興味を示す一組の夫婦が訪れました。

北名古屋市から来た54歳の男性:
「ずっと柴犬飼っていて、去年亡くなっちゃったので新しい子を。会社をやっているので、普段はワンちゃんも事務所へ連れていこうと」

この男性は、アキちゃんを引き取りたいと希望しました。

■家庭訪問で犬が安心して暮らせるかチェック…里親になるための厳しい審査

 しかし、里親になるためにはさらなる審査があります。保護団体の代表が、飼育を希望する人の家を訪問。脱走する危険性や、ストレスを受ける心配がないかなど、犬が安心して暮らせる環境かをチェックします。

動物愛護団体の代表:
「出勤されて、アキちゃんどこに置いてもらえますか」

里親を希望する男性:
「あそこにゲージ置いていましたので…。こちらへ連れてきてお利口にさせておこうかなと」

同・代表:
「こちらの環境は暖かいですし、夏は涼しいですね」

この後、男性の自宅も確認。果たして「家庭訪問」の結果は…。

同・代表:
「すごいいい環境。会社だったら、社員さんと触れ合ってもらえるし、構ってもらえる。お家の方はすごく日当たりのいいお部屋があったので…。今日のお宅でお願いしたいと思っています」

無事に審査をクリアし、アキちゃんの里親が決まりました。

■「命を迎えることは重みあること」…飼育放棄されたペットの里親を探すボランティア団体の願い

 2021年12月、迎えたアキちゃんの引き渡し当日。これまでアキちゃんを自宅で世話していたボランティアスタッフの女性は…。

動物愛護団体の女性スタッフ:
「もうちょっと一緒にいれると思っていたので…。でも里親さんの早く迎えたい気持ちはありがたいので、寂しいけど仕方ないですね」

いよいよ、アキちゃんは新しい家族の元へ…。

新たな飼い主となる男性:
「大切にさせて頂きますので。もうこの子、一生大事に」

 年が明け、2022年の元旦。そこには、新しい家族にすっかり懐いたアキちゃんの姿がありました。会社では従業員たちのアイドルに…。

動物愛護団体の代表:
「命を迎えることは、すごく重みのあること。どんなことがあっても最後まで面倒がみられるかを、家族できちっと話し合ってから決めてほしい」

 コロナ禍で増えてしまった飼育放棄されたペットたち。そんな彼らを幸せにするために、ボランティア団体はは懸命に里親を探しています。