新型コロナウイルスの感染はいま、妊婦にも広がっています。無事出産しても赤ちゃんの感染対策ですぐに離ればなれに…。コロナ下の周産期医療の現場を取材しました。

 防護服を着た医師たちが取り囲む手術台。画面中央で抱きかかえられるのは、生まれたばかりの赤ちゃん…。帝王切開での出産の映像です。

 しかし、母親は赤ちゃんの顔を近くで見ることはできません。その距離およそ2メートル。母親が新型コロナウイルスに感染しているためです。

「妊婦だからって優先はできません」濃厚接触者でもPCR受けられず たらい回しの末に“流産” 女性の無念

 感染拡大とともに、いま急増している妊婦の感染。愛知県産婦人科医会によると、1月1週目には5人だった妊婦の感染者は、1月最終週にはおよそ14倍の72人に増加。最近ではさらに増えているとみられています。

 名古屋市昭和区の日赤名古屋第二病院。感染した妊婦の出産を受け入れる「コロナ下の周産期医療」の現場です。

第二産婦人科の部長:
「こうやって手術室に、N95マスクもフェイスシールドマスクもつけて。手術室は壁が2つあって、陰圧がかかっている手術部屋はこのドアの向こう側になります」

 感染した妊婦の場合、この病院では自然分娩ではなく「帝王切開」での出産を推奨。安全に出産できるよう、治療室の計画的な確保や、対応する医療スタッフの感染リスクを下げるためです。

第二産婦人科の部長:
「赤ちゃんが産まれて、お母さんと最初の対面の瞬間ですよね。通常ですと、へその緒を切ってお母さんの近くに連れていくんですけど。近くには行けませんけど、お母さんによく見えるように助産師が見せています」

 初めての対面は2メートル。わが子を抱き上げることもできません。

 赤ちゃんがすぐに連れていかれるのは「隔離室」。新生児のための集中治療室=「NICU」の中で隔離され、2回のPCR検査を受けます。

 陰性が確認されれば新生児室に移りますが、中には…。

第二産婦人科の部長:
「NICUのベッドがいっぱいで赤ちゃんが入院することができないので、この赤ちゃんをみてくれる病院に救急車で移動するところです」

 ベッドが確保できず、生まれたばかりの赤ちゃんが別の病院に移るという異例の事態まで起きました。生まれてすぐに抱くこともできず、一時的に病院も離ればなれに…。

 コロナ下の出産。小さな命と妊婦の安全を守るには…。

第二産婦人科の部長:
「元気に産んで赤ちゃんを抱いて。そういうイメージを描かれていると思うんですね。妊婦さんももちろん家族の方も、できるだけワクチン接種していただくのが、一番家族を守る大事な心配りだと思います」