名古屋を中心に活動する“日本最強”と呼ばれる39歳のラッパーがいます。この男性は、コロナ禍で暗くなりがちな今、強い言葉と独特なパフォーマンスで、たくさんの人に力強いメッセージを届けています。表現にタブーはありません。

■ファン「不謹慎なことを言っても許される存在」…“日本最強のラッパー”と呼ばれる男性

 オールバックに、柄シャツ…。少しコワモテのこの男性は、人呼んで“日本最強のラッパー”呂布(りょふ)カルマさん(39)です。

【画像20枚で見る】炎上覚悟、その表現にタブーなし…日本最強のラッパー呂布カルマ

女性ファン(20代):
「不謹慎なこと言っても許される存在だから」

男性ファン(30代):
「もし10代だったら信者になってる」

素顔は気さくな39歳の呂布さんは、名古屋を拠点に全国のイベントで引っ張りだこです。しかしこの2年は、新型コロナの影響で活動が激減しました。

■即興で言葉をぶつけ合うMCバトルで次々優勝…“日本最強のラッパー”と呼ばれるように

 関西で生まれた呂布さんは、中学生の時に父親の転勤で名古屋へ。漫画家を夢見て芸術大学に進みますが、卒業後はサラリーマンをしながら、マイク一本で表現できるラッパーになりました。

呂布さん:
「18でヒップホップにハマって、韻を踏んだりする遊びから。今まで聴いていた音楽と全然違って、『こんなこと言っていいんだ』みたいな」

 メンバーが揃わないと演奏ができないバンドと違って、何もないところからマイク一本で始められるラップにハマった呂布さんは、最初に出たイベントで、他のラッパーより自分は断トツに上手いと感じました。

呂布さんは、即興で言葉をぶつけ合うMCバトルなどの大会で次々優勝。“日本最強のラッパー”と呼ばれるようになりました。

呂布さん:
「ヒップホップの自慢の仕方で、高級車乗ってシャンパンをワーみたいな…。それよりは家族をしっかり守って、ちゃんと育てて、幸せな家族を持っている方が、俺はかっこよく見える」

2人の子供の父親でもある呂布さんは、地方でヒップホップをやりながらでも家庭が築けることが自慢と考えています。

■個性のないアーティストに価値はない…激しく攻撃的に愛を込めて“韻”を踏む

 韻を踏んだ“言葉遊び”であるラップは、ユニークな言葉とシニカルな表現を使って、日々感じていることや社会への主張を歌にします。

呂布さん:
「感覚で出たものを精査して。どういう風にしたら面白いか。語感もそうだし、例えば、『麻痺と巻き』で踏みたいから、麻痺で踏みたい語句を考えて『春巻き』。“言葉遊び”ですね」

呂布さんは、本心が見えにくいような冗談で覆ったような表現もすると話します。

<♪「ヤングたかじん」の歌詞>
「世界に1つだけの花なんて嘘だ みんな同じ格好したがるのは何故だ 携帯のカメラで撮った写真別人 他の誰かみたい 俺は若い頃のたかじんになりたい」

激しく攻撃的に、愛を込めて…。その表現に、タブーはありません。

呂布さん:
「よく『個性的だね、独特だね』って言われるけど、そうじゃないアーティストって何の価値があるの。僕はみんながやっていることはやりたくない」

■炎上覚悟で続けるYouTube…ためらわず自分の考えを表現

 呂布さんは、土曜の深夜に名古屋のFMラジオで1時間半の番組に出演していますが、今はリモート収録が続いています。コロナの影響で、イベントやライブは従来の10分の1となり、表現の場が失われています。そこで呂布さんは、別の形で活動を始めました。

呂布さん(YouTube配信):
「『恋愛で病みまくっているんですけど、呂布さんはそういう時どうやって立ち直りますか』。恋愛で病んだことないな、俺」

YouTubeを使った生配信で、ジャンルを問わずファンの質問に答えます。

呂布さん(YouTube配信):
「『呂布さんがバトルを引退するときはどんな時ですか?』。一応、引退は考えてないです」

週に一度の2時間半の配信は、大切な表現の場です。

呂布さん:
「バカだなと思いつつも、こういうの(動画)が切り抜かれて、(再生)回数も上がるんだろうなって。反面ありがたいなって思います」

 呂布さんは、2021年8月に愛知県常滑市で開かれたヒップホップイベント「NAMIMONOGATARI」のプレイベントに参加しました。そこで、こんな発言も。

呂布さん(YouTube配信):
「『NAMIMONOGATARI』の客層って、水着で来て刺青丸出しというパーティー。もともとヒップホップのお客さんじゃないのをまず覚えておいてほしい」

呂布さん:
「一人一人に悪意があってやったわけではないし…。俺たちは我慢しているのに、我慢してないやつが許せないみたいな。コロナ禍の前からあったんですけど、叩きやすいものを叩くみたいな空気」

時には炎上も覚悟。ツイッターには、厳しいコメントも寄せられます。しかし、自分の考えを表現することにためらいはありません。

呂布さん:
「『これ言わなきゃよかった』ってことは一度もない。『これが炎上するんだ』ってことは何度もありますけど。世の中の間違った正義感をくすぐるようなことをしちゃうと、炎上しがちです」

それでも呂布さんの中には、ここまでは言ってもいいだろうという線引きがあるといいます。

■良い事も悪い事も永遠には続かない…コロナ禍で感じたかすかな希望をラップに

 2022年1月15日に、呂布さんは大阪のイベントに参加しました。

呂布さん:
「まさに一番、不要不急じゃないですか。飲食店であれだけ縛りを受けていて、ライブハウスとかクラブも受けていて、最悪なんですよね、僕らは」

 コロナ禍で作った一曲。出口が見えない中、かすかな希望を歌にしました。

<♪『烏天狗』の歌詞>
「寝ても覚めてもどうせ夢ん中 真実のみを映す目ん玉 家ん中から世界見渡す 世界地図の中に俺を探す 年がら年中アイムファインセンキュー ステイホーム&ステイチューン」

呂布さん(ライブで):
「いいことも悪いことも、ずっと続かなくてそのうち終わる。けど必ず繰り返すので、まさにコロナなんかは。そこに生きている俺たちは少しずつ経験値を得て、同じことが起こっても強く、賢くなって生きましょう」

「ヒップホップは何でもありで”究極に自由”」と話す呂布さん。日本最強のラッパーには、タブーがありません。