犬の殺処分の数は年々減少していますが、それでも老犬を捨てる人は増加傾向にあります。愛知県武豊町に、引き取り手が見つからず、殺処分の対象となった犬を引き取っている保護団体があります。

この団体は9年間で保護した276匹のうち、16匹の老犬の最期を看取ってきました。この団体の代表は「飼い犬の最期を看取るのは飼い主の義務」と訴えます。

■保護した16匹のうち14匹が「老犬」…殺処分対象の犬を保護する団体

 愛知県武豊町にある「ドッグレスキューハグ」が、殺処分の対象となり自治体から保護した犬のほとんどが老犬です。

【画像20枚で見る】老犬捨てる人が増加…保護して看取ってきた代表「飼い主に見せたい。最期まで生きたよと」

ドッグレスキューハグ代表の塚本恵さん:
「保護頭数が16匹で、そのうち老犬は14匹。そういう子も引き取らないと処分になる」

オムツを替えてもらっているビーグル犬の「小雪」(推定16歳)は、人間なら80歳以上のおばあちゃんです。小雪は2020年11月にあま市の住宅街でさまよっていたところを、県の動物愛護センターに保護されました。1週間飼い主が現れず、引き取り手もないため殺処分の対象となった小雪を、塚本さんたちが引き取りました。

塚本さん:
「小雪の場合は老齢で、腫瘍もあって耳の中も汚くて、口の中もボロボロで譲渡できないと。この子が脱走したのか捨てられたのかわからないけど、(飼い主は)なんで捜さないの」

捨てられたり、迷子になったり…。小雪のように保護される犬の数は年々減っているものの、2020年度には愛知県内で1188匹。そのほとんどが8歳以上の「老犬」とみられ、もし引き取り手が見つからなければ殺処分になります。2020年度の殺処分の数は、229匹に上りました。

■責任を持てないのなら飼わないでほしい…老犬たちの悲しみを写し続ける写真家の訴え

 不安な瞳でこちらを見つめるポメラニアンに、背骨が浮き出てうずくまる柴犬…。写真集「老犬たちの涙」は、家族から捨てられ施設に収容された老犬たちの悲しみを写しています。

写真集を作ったフォトジャーナリストの児玉小枝さん(51)は、ここ数年、高齢者の飼育放棄が増えているといいます。

児玉さん:
「自分たち(飼い主)も病気になったり、どうしようもなく施設に処分を依頼したケース」

「命が消える瞬間まで飼い主の責任を持てないなら“飼わない選択”もして欲しい」と児玉さんは訴えます。

児玉さん:
「心から信じて愛した家族に捨てられた老犬が、どんな思いで檻の中にいたのか…。飼い始める前に、この子の命と心を最後まで守り続けることができるか。もし覚悟がないのであれば、飼うことを諦めるのも愛」

■病気がわかり“譲渡”は破談に…遺棄されたとみられるヨークシャーテリア

 ドックレスキューハグの塚本さんは、2021年9月に県の動物愛護センターからの依頼で、新たに2匹の犬を引き取りました。トイプードル(推定5歳)とヨークシャーテリア(推定7歳)は、西尾市の街中で一緒にいたところを保護されました。

塚本さん:
「同じ場所で2匹一緒に保護されるのは、遺棄としか考えられない。かわいいから(里親は)決まると思うけど」

 トイプードルは、「翔愛(とあ)」。ヨークシャーテリアは、「碧杜(あおと)」と名づけられました。健康上問題のなかった翔愛は、1か月で引き取り手が見つかりましたが、碧杜には先天性の心疾患があることがわかりました。

塚本さん:
「病気だけど家族にしたいって人がいて、もう少しでお見合いという時に腹水が…。腹水がたまり始めるというのは末期。そうなったときに『辞退します』って…」

一度は引き取り手が見つかったものの、病気が重いことから破談に。頻繁に通院して水を抜く必要がある碧杜は、この保護団体で生きていくことになります。

塚本さん:
「最期までうちで過ごして、最期のときまで一緒に。それはそれでいいと思っている」

■「終生飼育が飼い主の義務」…9年間で16匹の老犬を看取る

 2021年12月。殺処分を逃れドックレスキューハグにやってきた、ビーグルのおばあちゃん「小雪」に異変が起こりました。

塚本さん:
「小雪が食べないなんて…。何でも欲しがって、何でも食べる小雪が、もう食べない…」

患っていた腎不全が悪化し、何も口にできなくなってしまいました。

塚本さん:
「いくら点滴やっても口から栄養取らないと…。あとどれくらい時間が残されているかわからないけど、最期までみんなでサポートしたい」

そして、何も食べられなくなってから2週間。3キロ以上痩せてしまった小雪は、とうとう寝たきりに…。そして、年が明けた1月10日に、眠るように旅立ちました。

塚本さん:
「終生飼育ってよく言うんですけど、飼い主の義務。小雪がどんな思いでセンターに入って、飼い主さんを待って…。飼い主に見せてあげたい。こんなに最期まで立派に生きたよって」

 塚本さんたちは、9年間の活動で保護した276匹のうち、小雪のような老犬を16匹看取ってきました。

塚本さん:
「寂しいから犬が飼いたい人もいるけど、それは欲であって…。15年後を考えたときに、その子の面倒が看られるか…。『飼わない』選択をされる方も。その選択が正しいと思います」

 家族に見放されて最期を迎える犬がいなくなるまで、塚本さんたちの活動はなくなりません。