4月1日から146年ぶりに成人年齢が引き下げとなり、18歳と19歳が成人として扱われます。親の同意なしで「起業」ができるなど、若者の社会参加が期待される一方、親の同意なしでローンが組めるなどのトラブルに巻き込まれる危険性もあります。18歳と19歳には大人としてできることが増えますが、責任ある行動も求められます。

■“親の同意なし”で「起業」も可能に…成人年齢引き下げで18歳・19歳が成人の仲間入り

 3月21日に、愛知県日進市で子供が主役の職業イベント「こどものまち」が開催されました。アクセサリーやカステラを作って販売するのも購入するのも子供たち。このイベントには、主体性や協調性を育む狙いがあります。

【画像20枚で見る】新成人を誘う“甘い話”で被害に…『18歳成人』で広がる権利 求められる責任ある行動

このイベントを企画・運営する市民団体のメンバーの井上創太さんは、この春に県内の高校を卒業したばかりの18歳です。2021年から始まったこのイベントに当初から携わっている井上さんがいま目標としているのは、イベントを継続していくための法人化、「起業」です。

小学生のときに職業体験イベントに参加した井上さんは、そこで受け身ではなく自ら動くことの大切さに気付きました。そして、この取り組みをもっと広げたいと「起業」を志しています。

井上さん:
「小中学生の教育に興味がありますし、そこから派生する町全体の教育とか街づくり。『教育とかを17、18(歳)で語るなよ』ってあると思うけど、逆に自分たちだからこそできることもある」

 井上さんに追い風となったのが、4月1日から変わった成人年齢の引き下げです。民法の改正で18歳から成人となることで、「クレジットカード」や「ローン」、さらには「起業」に至るまで、“親の同意なし”で様々な契約ができるようになります。

井上さん:
「『これやりたいけど親が…』とかはなくなっていくと思うので、そういう意味での追い風はあるし、志をもってやっている人たちにとってはいい機会になる」

■好きなことに挑戦してほしい…若い人たちにエールを送る当時19歳で起業した男性

 今回の改正で“若者が社会参加しやすくなる”と期待する人もいます。eスポーツの大会運営を支援する会社「papillon(パピヨン)」の社長・都築亮吾さん(21)です。都築さんは、オンラインでの大会運営が難しいという課題を抱えるeスポーツを運営しやすくする専用アプリを開発。海外進出を目指しています。

都築さんの会社のオフィスは、名古屋駅近くのグローバルゲートと順風満帆に見えますが…。2020年に19歳で起業したときには、思いがけない大きな壁がありました。それは都築さんが、「未成年」だったことです。

都築さん:
「銀行の口座を作るとき、最初一人で行ったけど相手にされなかったっていうか、追い返された。行政まわりが、『未成年』では何もできなかった…」

銀行口座の開設や会社の登記に至るまで、起業に関わるすべての作業で保護者の同意が必要でした。

都築さん:
「やはり未成年が会社やるのは珍しいと思うので、理解してくれなかったのかな。18歳から自分の意志で何かできるようになる。好きなことに挑戦してほしい」

都築さんは若い人たちにエールを送ります。

■18歳成人が良いきっかけになる…起業を見据え様々なことへチャレンジ

「こどもの職業イベント」の企画など、教育と街づくりの分野で起業を目指している井上創太さん(18)はこの日、行政からのSNS強化の依頼についてミーティングをしていました。

井上さんは今後の起業を見据えて、今は「経験を積む時期」と様々なことにチャレンジしています。2021年には、名古屋市主催の「起業体験プログラム」で中高生が集う「参考書専門の本屋」を提案。

さらに、北海道のNPO法人のインターンに参加して地域活性化に取り組んだこともあります。進学した大学でも、「街づくり」や「教育」を学べる学部を選びました。

井上さん:
「少しずつやりたいこととか自分のフィールドが固まってきたので、あとは実績を積んで…。社会に何か事を起こすってことにおいて、18歳成人というのは良いきっかけにはなる」

■50万円を騙し取られ…契約をあとから取り消せない「20歳なりたて」を狙う犯罪グループ

 ただ、18歳が成人になることに慎重な意見もあります。

西口祐希さん(仮名):
「20歳超えても分別がつかない中で、18歳に引き下げるのは…。懸念はすごいある」

横浜市内に住む大学4年生の西口祐希(仮名)さん(22)は、20歳の「成人」になったばかりの2020年にあるトラブルに巻き込まれました。きっかけは、インスタグラムに届いた『現金が当選しました』というダイレクトメールでした。

甘い話に誘われた西口さんは、新宿のカフェで会った20代くらいの男から「FXなどで稼げる方法を教える」と言われ、50万円を要求されました。しかし、断ると…。

西口さん:
「完全に脅迫みたいな感じ。高層ビルで男2人で『今払わないとここから落とすぞ』みたいな…」

結局、消費者金融で30万円、クレジットカードのキャッシングで20万円を用意して渡してしまったといいます。

西口さん:
「払って逃げられるんだったらもういいかなって」

 番組が独自に入手した西口さんを脅した男らの犯行マニュアルには、「ターゲット層 20歳以上」、「探し方の例 #20歳になりました、#○○区成人式」との記載が。“成人になったばかりの20歳”をターゲットにしていたのには、理由がありました。

未成年には法律上「未成年者取消権」があり、親の同意がない契約をあとから取り消すことができますが、成人するとその権利は失われます。それを踏まえて、社会経験が乏しい成人になりたての若者に狙いを定めていました。

 実際に、2017年から2021年までに愛知県内の消費生活センターに寄せられた、「投資やネットビジネスなどの相談」の件数を見ると、18歳と19歳は400件から600件あまりでしたが、20歳と21歳は800件から1200件と倍近くに増えています。

西口さん:
「(今後18・19歳の被害数が)20・21(歳)と、同じような数字にまで上がるんじゃないかな」

西口さんが消費者金融などで借りた50万円は戻ってきておらず、今も毎月1万1000円を返済しています。

西口さん:
「何で払っているのだろうって。うまい話にはついていかないのがまず一番、あとやっぱり自分で調べないとどんなことにも対応できないので…」

 約140年ぶりとなった成人年齢の引き下げ。大人としてできることが増えますが、責任ある行動も求められます。

「18歳成人」で、18歳や19歳でも「親の同意なしでローンやクレジットカードなどの契約」や「国家資格の取得」などが可能となりました。「飲酒」、「喫煙」、「競馬などのギャンブル」は、これまで通り20歳からと変わりません。