子供同士の伝承がコロナでピンチに…春の高山祭に“空白の2年間” 今年参加を決断した保存会「危機感強い」
コロナ禍で生じた長い空白は、地域の祭りを経験したことがない子供世代を生んでいます。岐阜県高山市の高山祭では、今伝統を引き継いでいく困難に直面しています。
4月5日、春の高山祭を前に1年ぶりに蔵から出された豪華絢爛な屋台。
12台ある屋台のひとつ「麒麟台」ではこの日、屋台やわいの作業が行われ、住民らが丁寧に掃除や飾りつけを進めていました。
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麒麟台の当番長:
「扉とかも外してありますし、後ろにある見送り(掛け軸)とか、房とか」
2020年も2021年も飾りつけはしましたが、実際に祭りで披露されることはありませんでした。
麒麟台の当番長:
「久々というか。ちゃんとした祭としては3年ぶりなので、皆さん楽しみにされていると思う」
屋台の曳そろえやからくり奉納。
古い街並みを幻想的に彩る夜祭。江戸時代中期から続く「高山祭の屋台行事」は毎年春と秋、多くの観光客を魅了してきました。
しかし新型コロナの感染拡大で2020年と2021年は屋台行事が中止され、神事のみを実施。2年間の空白は、祭りの継承に深刻な影響を及ぼしていました。
麒麟台の当番長:
「笛は今年はとりあえず大人だけでの少人数でということで。稽古もできていませんし、2年間の間にかなり高校を卒業したり、人が居なくなったということもあります」
祭りばやしの技術を引き継げないまま子供たちの世代が入れ替わり、依然として感染対策のため、けいこが十分にできないことから、多くの屋台組が今年も子供たちの参加を見送る判断をしました。
そんな中、森下町獅子舞保存会では…。
行列の先導で披露する獅子舞などを担当します。この笛を吹く子どもたちはマスクをつけたまま演奏しています。
子ども:
「(Q.マスクはどうなっている?)マスクは、穴開いています。吹きにくいです」
メンバーの上級生が考えたという、付けたまま笛が吹けるマスクです。
子供たちによる伝統の継承を守ろうと祭りへの参加を決断、4月に入ってからはほぼ毎日のように稽古をしてきました。
森下町獅子舞保存会の担当者:
「伝承の危機を強く感じましたので、皆さんの協力をいただきながら決断しました」
メンバーは小学2年生から高校3年生まで86人。2年間の空白があったため、このうち半数近くが初めての祭りです。
初めて参加した子供:
「運動会で獅子舞をやったときに笛をやって、楽しかったから保存会にも入ってまた続けたいと思いました」
別の参加した子供:
「ちょっと練習していたので、(中止になり)悲しい気持ちもあったんですけど、でも、今回こうやってできてうれしいです」
実はいま、この「笛」の担い手が減っているそうです。
森下町獅子舞保存会の担当者:
「今も笛の子が上級生の子が結構多いものですから、1〜2年はいいと思うんですけど、3〜4年後になるとかなり心配です」
今年も中止になれば上級生らが卒業し、下級生へ伝えていくという伝承のスタイルが保つことができないことを心配し、開催を決めました。
森下町獅子舞保存会の担当者:
「子供から子供に伝えていくのが今までの形でずっとやってきたんです。それがずっと当たり前のようにしてできていたのが、できなくなるというところで、こういう風(コロナで中止)になって初めて気付くこともあります」
14日、祭りの衣装に身を包み獅子舞を奉納する子供たち。
大人に混ざって稽古をがんばった成果を披露します。
およそ400軒ある氏子の家を回っていきますが…。15分たったところで強い雨が降ってきたため、撤収となりました。
森下町獅子舞保存会の担当者:
「ちょっとでも祭の雰囲気を感じてもらって、今も『楽しい』と言ってもらえていますし、よかったなと思います。これからも今までと変わらず子供たちに興味を持たせて、一緒にやっていけたらいいかなと思っています」