2021年12月、愛知県春日井市の「勝川駅前通商店街」は、地域の発展に貢献しているとして、国の「はばたく商店街30選」に選ばれました。

 これまで19年間で211回のテント市を開催するなど、店と客が助け合う”人情商店街“は、街に賑わいをもたらしています。

■地域の発展に貢献する元気な商店街に認定…転居者にも人気の「勝川駅前通商店街」

 愛知県春日井市の南部に位置する「勝川」は、名古屋駅までJRで18分という利便性と、名古屋市内に比べて家賃が手ごろで、若いファミリーや転勤族に人気の町です。勝川駅前には、300メートルの間に約90店舗が軒を連ねる「勝川駅前通商店街」があります。

【画像20枚で見る】国の「はばたく商店街30選」に選出…愛知にあった“人情商店街” コロナ禍でも廃業する店ゼロ

広島から転居してきた住民の女性:
「昔ながらのものも残りつつ、現代的なお店も出来てすごく居心地がいい」

東京から転居してきた住民の女性:
「人もフレンドリー。商店街の人と会うと『おはよう』って言ったり…」

滋賀から転居してきた住民の女性:
「シャッター街の商店街が多いと思うけど、こんなに賑やかな商店街は珍しい」

勝川駅前通商店街は、2021年に中小企業庁の「はばたく商店街30選」に選出。北海道の小樽や宮城の仙台、京都の嵐山、名古屋の円頓寺などと共に、地域の発展に貢献している元気な商店街に認定されました。

■店主「勝川のお客さんは温かい」…店と客が助け合う”人情商店街“

 1990年の勝川駅開業に合わせて誕生した勝川駅前通商店街は、全国的に“シャッター商店街”が増える中、コロナ禍でも廃業する店はないといいます。

写真店の店主:
「今でいう“人情商店街”という印象」

和菓子店の店主:
「昔からよく言われる、“遠い親戚より向こう3軒両隣”」

高齢者の見守りを行うなど、住民との関係も密な”人情商店街“。その雰囲気に憧れて、「店を出すなら勝川で」とやってくる人も多いといいます。

 この商店街では、一人で複数の店を経営する人が多いのも特徴。備長炭で焼き上げた奥三河の地鶏が評判の焼鳥店「とりまる」は、毎日通う人もいるという人気店です。

その隣には、契約農場から仕入れた豚肉料理の店「とんまる」。さらに80メートル西には、サムギョプサルやチーズタッカルビが人気の韓国料理店「ハンマル」が。

この3店舗は、2004年に勝川に移住してきた伊豆出身の男性が営んでいます。

伊豆出身の男性:
「勝川のお客さんは、みんな温かい。『お前の焼鳥はおいしくないから、教えてあげる』みたいな感じで、厨房の中まで入ってきて、さばき方から焼き方まで…」

「僕を育ててくれた大好きな街」と、小柳出さんは勝川への愛を語ります。

■19年間で211回開催…街に賑わいをもたらしたテント市「勝川弘法市」

 人々の心の支えになっているのが、商店街のシンボルでもある「勝川大弘法(かちがわおおこうぼう)」。高さ18メートルの弘法大師像は、昭和天皇の即位を記念して1928年に地元の有志が建立。以来、駅と大弘法を結ぶ道にある商店街が、参拝者で賑わうようになりました。

履物店の店主(82):
「町が活気づいた。ありがたいよね。だから大弘法さんには毎日行っている、お参りに」

 2009年にオープンした「こだわり商店」では、春日井の特産である食べられるサボテンから作ったうどんやラーメン、飴やジュース、サボテンのグッズも販売。この店は、大弘法がきっかけで勝川にやってきたといいます。

こだわり商店の店主:
「勝川商店街に馴染みが多かった。弘法市でお店の方と親しくなったので、お世話になろうと」

 毎月第3土曜に開催されるテント市「勝川弘法市(かちがわこうぼういち)」は、商店街の店が店前に露店を出し、歩行者天国となった通りには他の地区から来た人も出店。商店街の強みの一つとなっています。

こだわり商店の店主:
「月に1回、弘法市で店主が店の前に出て顔を覚えてもらうには、ありがたいイベント」

和菓子店の店主:
「昔は“さびれゆく商店街”なんて言われて、統計を取ると土日が一番お客さんが来ない。(商店街青年部が)夜中じゅう話をして、弘法市が生まれた」

2003年に始まった「勝川弘法市」は、19年間で211回開催。雨の日も続けてきた結果が、今の賑わいにつながっています。

■ノドグロやクロムツまで…高級魚も入る刺身定食が人気の店

 商店街には、コロナ禍の中で新しくオープンする店もありました。2021年11月にオープンした魚が評判の「びっくり魚店(ぎょうてん)ぼんくら」は、お昼時には満席となる人気店です。

女性客:
「ノドグロがうまかった、生まれて初めて食べた」

別の女性客:
「のどを通る時にモチっとします」

多くの人が注文する刺身の魚は、料亭で修業をした店長が自分の目で仕入れています。

店長:
「北部市場へ買い付けに行って、朝おろして。新鮮なものをなるべくリーズナブルにやっています」

 ランチで一番人気の「季節刺身定食」(1800円)には、マグロのトロやヒラメ、シラウオにホタルイカ、サーモンなどの他に、これから旬を迎えるタチウオに、高級魚クロムツやノドグロ、羅臼産のウニも入ります。

ランチ営業は火・水・木のみ行っています。

■地元の人も知らない“穴場スポット”…最高級の肉や魚介が楽しめる鉄板焼きレストラン

 そして、地元の人も知らない“穴場のレストラン”もあります。商店街から少し奥に入ったところにある「グリル城下」は、空き家だった民家をリフォームした鉄板焼きの店です。

夜のみの営業で、肉や魚介など、最高級の素材を使っています。

 熊本県産黒毛和牛の稀少部位の「シャトーブリアンステーキ」(6980円)や、ズワイガニがたっぷり入った「カニクリームコロッケ」(980円)。

デミグラスソースで3日間かけて煮込んだ「和牛ホホ肉のデミグラス煮込み」(2480円)など、贅沢な時間が楽しめる勝川の穴場スポットです。

店長:
「飲食店が増えましたね。でも競争というより、みんな協力しあっているイメージがあります」

大きな弘法さまに見守られた「勝川駅前通商店街」は、コロナ禍でも店と客が助け合う”人情商店街“です。