岐阜県中津川市に3か月で4万個売れた栗を使ったアイス最中があります。作ったのは、還暦を過ぎてから和菓子職人になった71歳の男性。ヒットに導いたのは、男性の和菓子への情熱でした。

■粒の食感あっておいしい…3か月で4万個売れた栗をたっぷり使ったアイス最中

 岐阜県中津川市にある「中津川市之瀬」。

【画像で見る】還暦過ぎて若い頃から憧れた“和菓子職人”へ…栗のアイス最中ヒットさせた71歳の情熱

ここでは、日本全国の特産品を使ったアイスクリームやジェラートの製造・販売をしています。

中でも一番人気は、地元・中津川の栗を使った餡をアイスクリームと最中でサンドした「和栗最中アイス」(420円)で、3か月で4万個が売れました。

女性:
「粒の食感があって、すごくおいしい」

男性:
「栗の形も残っているので、アイスじゃなくて栗を食べているような…」

このアイス最中を作るのは、還暦を過ぎてから和菓子職人になった市之瀬春治(しゅんじ)さん(71)です。

市之瀬さんは、4万個の最中の餡を、機械を使わずすべて手作りしました。中に入れる栗は自社栽培した中津川産の栗で、栗のうま味を最大限に引き出した餡にこだわっています。しかし…。

市之瀬さん:
「この状態でおいしくてもダメ。冷凍してから食べておいしいことを追求するまでにしばらくかかりました」

冷凍すると栗の風味や食感が損なわれてしまうため、その味の調整が難しく、納得の味になるまでに2年かかったといいます。

■家庭の事情で職人の道を断念…和菓子への思いが絶ちきれず仕事終わりに和菓子作りに没頭

 評判のアイス最中を作った市之瀬さんですが、和菓子職人歴はわずか6年です。

市之瀬さん:
「修業は若い時に、名古屋の和菓子屋さんで4~5年。それこそ家庭の事情で家を支援しないといけないということで、あえなく…」

16歳で憧れの和菓子の世界へ飛び込みましたが、当時は家計が苦しく、21歳で和菓子職人への道を断念。その後、名古屋の金型工場へ就職しますが…。

市之瀬さん:
「和菓子職人を半ばでやめざるを得なかった悔しさもありまして、名古屋(の金型工場)から帰ってきたら、和菓子を作ってみなさんに食べていただいたりしていました」

和菓子への思いは絶ちきれず、当時仕事が終わると、あくまでも趣味として和菓子作りに没頭しました。当時よく作っていたという地元の栗を使った栗ようかんは、近所にも配るなどして評判だったといいます。

■きっかけは社長を務める息子からの誘い…定年後に再び和菓子職人への夢を追い求める

 その後、今の会社の社長である息子の隆さんから声がかかりました。

市之瀬さんの息子 隆さん:
「小さい時から(父が)和菓子を作っていたのを見てきたので、和菓子とアイスを使った新しいアイスを作りたいなと思って誘いました」

市之瀬さん:
「定年後に無職でいたときに、『来ないか?』とうことで、息子に感謝」

息子に新商品の開発を頼まれた市之瀬さんは、65歳で和菓子職人としてスタート。和菓子で最も得意とする栗餡と会社が作るアイスを融合させて、栗アイス最中を作ることにしました。

しかし、繊細な風味の餡は、冷凍することで味が大きく変わります。食べるときに最高の味になるよう調整することが、一番のポイントでした。そこで餡作りで市之瀬さんがこだわったのが、小さな銅鍋でした。

市之瀬さん:
「本来は大きな鍋でやった方が早いけど、これぐらいの鍋で手で作ることによって、おいしい餡が作れます」

銅鍋は、熱の伝わり方が均等で焦げにくいのが特徴。さらに使い慣れた小さな鍋で丁寧に作ることで、味が安定したといいます。

■息子から「栗の味がうすい」と言われ…栗を煮たときの煮汁「カンロ汁」を隠し味として採用

「和栗最中アイス」の味付けは、アイスに甘みがあるため砂糖は少なめ。栗粉、栗の荒煮とカンロ煮をたっぷり入れて、栗の味をしっかり残しつつサッパリとした餡に仕上げました。しかし、息子である社長から注文が…。

市之瀬さん:
「(冷凍すると)栗の味が遠い(うすい)ということで、栗の風味をドンと出すにはどうしたらいいかと…」

親子とはいえ、味の妥協は許されません。そこで、試行錯誤の末に閃いたのが、「カンロ汁」を使うことでした。

カンロ汁とは栗を煮たときの煮汁で、市之瀬さんは栗ようかんに使う栗のカンロ煮を作るときに煮汁があったことを思い出し、これを隠し味にしました。

こうして、冷凍しても風味が落ちない納得の栗餡が出来上がり、2018年に発売されました。

■発売3か月で4万個の大ヒット…小さな銅鍋ですべて手作りするこだわりの栗餡

 自分のやり方は絶対に曲げないと、市之瀬さんは小さな鍋で400回炊いて4万個分の餡を作りました。

そして完成した「和栗最中アイス」が、インターネットやコンビニで販売されると、手作りの味わいが話題となり、発売から3か月で4万個の大ヒットになりました。

市之瀬さん:
「無我夢中でしたし、今頑張らなきゃいつ頑張るんだという気持ちでした」

その他にも、三重県の伊勢茶を使った「伊勢茶&こつぶ茶葉最中アイス」(380円)に…。

愛知県のほうじ茶を使った「ほうじ&つぶほうじ最中アイス」(380円)、「小倉マーガリン最中アイス」(380円)を開発し、全部で4種類に。それでも和菓子職人としてはまだまだと、市之瀬さんは言います。

市之瀬さん:
「いくらいいものでも飽きますので。これから色々な新しいものを挑戦したい。これで倒れようが、もう本望」

還暦をすぎて和菓子職人になった71歳の市之瀬さんの挑戦はまだまだ続きます。

「和栗最中アイス」(420円)は、中津川市にある「中津川市之瀬」の店頭か、インターネットの通販で購入できます。