参議院選挙が6月22日に公示され、7月10日の投開票に向けて選挙戦が始まりました。今回の参院選で、最大の争点となっているのが「物価高」です。子育て世帯や年金生活を送る高齢者を取材すると、所得が増えないのに物価だけが上がる「悪い物価上昇」が家計を圧迫していることがわかりました。

■1円でも安い食料品を求めて…子育て世代の家計を直撃する「物価高」

 名古屋市港区のスーパー「タチヤ」は、お値打ち価格がウリの“家計のミカタ“のスーパーですが…。

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女性客:
「高い」

別の女性客:
「タマネギが一番つらい。(子供に)『カレー食べたい』って言われたけど…」

タチヤみなと店の店長:
「果物の輸入品は、円安の関係で非常に値上がりしています。ハムとかベーコン、チーズとか乳製品。(値上がりは)ほとんど全部と言ってもいい」

ロシアのウクライナ侵攻に記録的な円安などが重なり、今年に入ってから店内ほとんどの商品が値上げに。2022年3月から、小麦粉は1キロ当たり60円、輸入サーモンは200グラム当たり100円も値上がりしました。

 スーパーで買い物をするのは0歳と2歳の子供をもつ、夫の力也さん(28)と妻の天恵さんの山崎さんファミリーです。

買い物する様子をうかがうと、まずは店先のバナナを手に取ってカゴへ入れるかと思いきや、Uターンして向かった先は別のバナナ。入念に何かを確認しています。

母親の天恵さん:
「入っている本数。差は1本くらいしかないけど…」

野菜コーナーでは…。

天恵さん:
「赤テープは100円。黄色のテープが150円なので」

1本でも多く、1円でも安く…。

天恵さん:
「(会計は)6364円。これを普通のスーパーで買ったら6000円ではすまない…」

山崎さん一家は、月の食費を2万円から3万円以内に抑えています。買い物を終えて帰宅かと思いきや、次は7キロ離れた別のスーパーへ。

天恵さん:
「向こうよりこっちの方が安かったのは『タマゴ』、20円くらい。ポイント付けられるので、ここだと」

わずか20円安い「タマゴ」のために、スーパーを“はしご”する山崎さん一家は、ポイントがいくら付くかも計算しながら買い物をしていました。

■電気代は11か月連続で値上げ…家計に重くのしかかる「物価の上昇」

 山崎さん一家は、家賃が月額5万7千円の中川区の市営住宅に住んでいます。「物価の上昇」は、家計に重くのしかかっていました。

天恵さん:
「結構厳しい。電気もなるべく消して、使う部屋だけつけて…。電気代とガス代が一緒になっていて、だいたい1万3000円から1万8000円くらい」

電気代は、11か月連続で値上げされました。中部電力管内の2022年7月の電気料金は、平均的な家庭で8516円で、1年間で約1800円以上値上げされました。

長女の咲舞ちゃん(2)は、幼稚園探しの真っ最中ですが…。

天恵さん:
「幼稚園の制服だったりバッグだったり、習い事。そろばんとかでも、入会費とかだけで2、3万円かかる」

台湾出身の天恵さんは、保険会社の営業職を育児休業中ですが、8か月の長男の心晴(しんば)ちゃんをこども園に預け、早めに職場復帰することも視野に入れています。

天恵さん:
「主人の稼ぎだけでは厳しいってなったときは、働きに出なきゃ」

 一家の大黒柱である夫の力也さんは、家族が寝静まっている午前6時前に仕事へと出発します。

力也さん:
「家族のために、仕事頑張らなと思っています。あとは節約できるところは節約しながら」

リフォーム会社に勤める力也さんの月収は23万から25万円ほどで、なかなか給料は上がらないといいます。

「所得が増えない中での物価上昇」が、今の日本を象徴しています。

■給料が増えないのに物価だけ上がる…「悪い物価上昇」に陥る日本経済

 いま日本経済は、「悪い物価上昇」に陥っているといわれています。「良い物価上昇」は、物価が上がることでモノが高く売れ、企業の収益が増加。その分、働く人の賃金が増えることで消費も拡大するという好循環が生まれます。

しかし、いま起きている「悪い物価上昇」は、原材料のコストアップなどが原因で物価が上昇。企業の収益は増えないため、賃金も上げられず消費が冷え込んでしまいます。

「悪い物価上昇」の渦中にいる山崎さん一が、この国の政治に求めることは…。

天恵さん:
「このまま上がり続けたらキツい。一般人の生活をもうちょっと見てもらって、考えてほしい。無駄に使っているって言ったら申し訳ないけど、そこに使うお金は本当に正しいのかと思うことは多々ある。税金高くても制度がちゃんとしている国は幸福度がすごく高い、でも日本って先進国といわれながらも幸福度がすごく低いと思うし、もっと国民がわかりやすく、助かったって思える制度をつくってほしい」

■高騰する電気代や食費…年金生活を送る高齢者にも重くのしかかる「物価の上昇」

「物価の上昇」は、年金生活を送る高齢者にも重くのしかかっています。名古屋市南区に住む大山淑子さん(82)は、7年前に亡くなった夫が残した一軒家で、一人暮らしをしています。

大山さん:
「やっぱり政治家の人はお金持ちだから、貧乏人の気持ちはわからん」

大山さんの生活は、2か月に1度の年金が支えていますが、その金額はひと月9万4700円ほど。家計簿を見せてもらうと…。

大山さん:
「(5月の)電気代が一人でも4402円。赤字になっちゃう」

大山さんの家計は高騰する電気代や食費、さらに医療費や家の固定資産税なども合わせると支出は10万円を上回り、赤字になっていました。

大山さん:
「1時間くらいかかる、これ(炊飯ジャー)。電気代ようけいるもんで、ガス窯で炊いとる」

大山さんは、新たにパチンコ店でのアルバイトも始めましたが、シフトに入れる日が限られているため、増えた収入は月に1万円あまりです。

大山さん:
「何が貯金だ、食べるだけで精一杯。今度も選挙あるけど、どこ入れても一緒」

未曾有の物価高の中で迎える参議院選挙。政治は苦しむ有権者の声に耳を傾けられるのでしょうか。