参議院選挙は7月10日が投開票日です。祖国を離れ日本に避難してきたウクライナの人たちに、「選挙」で政治に参加する意義を聞きました。ロシア軍の侵攻が続く中で気づいた「投票する」ことの大切さとは…。

■「もし未来が変わらなくても、平和を守るために」ウクライナからの避難民が思う選挙の在り方

 2022年4月、ウクライナ東部のハルキウから名古屋に避難してきたマリヤ・ボルジクさん(26)。

【画像で見る】ウクライナ避難民が見る『ニッポンの選挙』…侵攻され気づいた“政治に関わる事の大切さ”

 実は4年前に名古屋に留学生として来日し、2020年まで滞在しました。

 2022年6月19日、中区栄で行われた反戦集会にはマリヤさんの姿がありました。

司会者:
「続いて、避難民でもありますマリヤさんです。お願いします」

マリヤさん:
「こんにちは。私はお母さんと4月16日に日本に避難しました。ハリコフのニュースを読むと、毎日ミサイルが落ちて爆発あるとかすごく危ない、人も死ぬ。早く戦争が止まってほしいです」

 ロシアが軍事侵攻を開始して、すでに4か月。一日も早く、ウクライナに平和が戻ることを祈っています。

 1991年、ソビエト連邦が崩壊。ウクライナは独立し、国民は「民主主義」を手にしました。しかし独立以来、親ロシア派と親欧米派とでウクライナは揺れ動いてきました。

 そんなウクライナで3年前、俳優のゼレンスキー氏が圧勝。反政権票を集め、大統領に就任しました。

 ウクライナを率いることになったゼレンスキー氏。マリヤさんは当時、日本に留学中で投票はしませんでしたが、ゼレンスキー氏のマニフェストをネットで確認するなど、候補者の公約に注目していました。

マリヤさん:
「(ゼレンスキー大統領は)ドンバスの問題は終わらせると約束しました。プーチン大統領と話をして“終わらせる”と言われて。でも戦争は起きた。なぜ、そんな(両大統領の)会話がうまくできなかったのか…」

 選挙のさなか、ゼレンスキー大統領のふるさとに掲げられた掲示板には、候補者ではなく、2014年からドンバス地方などで起きた親ロシア派との紛争で亡くなった兵士たちの写真が掲載されていました。

 当初は、ロシア側との和解を模索したというゼレンスキー大統領ですが、軍事侵攻を食い止めることはできませんでした。

 そんな中、マリヤさんが今願う平和は「祖国を守る」ことです。

マリヤさん:
「リーダーを選ぶのは大事なことです。もし未来が変わらなくても、平和を守るために」

■「あなたの声は誰かに聞こえる」選挙は国や街や経済がどうなるかを自分で選ぶ方法

 マリヤさんとともに、ウクライナから避難してきた母親のイリナさん(61)。彼女はゼレンスキー大統領に投票しました。

イリナさん(日本語訳):
「前の大統領は、国からお金を取ったり、賄賂がたくさんありました。でも、ゼレンスキーはそういう心配はありませんでした。以前はコメディアンでテレビにいっぱい出ていて、怖さもありませんでした。そして経済のことをよくわかっていて、経済的な面で新しい風を吹かせてくれると思って投票しました」

 政治に新しい風を吹き込みたいと、ゼレンスキー大統領に投票したイリナさん。ただ、安全保障面は…。

Q.ロシア問題の説明は?
イリナさん(日本語訳):
「あんまり覚えていません。ウクライナの経済のことだけ考えて投票しましたから」

 今回のウクライナ侵攻で改めて気づいたこと…。それは、一人一人が国の未来を考え“政治”に関わることの大切さです。

イリナさん(日本語訳):
「病気になったら、いい病院を探しますよね。これは選挙と似ていて、国がどうなるか選挙で選ばないといけません」

マリヤさん:
「選挙は大事です。街とか国とか経済とかどうなるかとか、あなたが自分で選びます。あなたの声はだれか聞こえます。これは大事だと思います」

 そんなマリヤさんが、日本の選挙について思うことが…。

マリヤさん:
「(選挙に行く人が少ないのは)これはちょっと珍しい。日本に2年住んでいたけど、あまり選挙のことを日本人がどうにかしようとしているとは思えなった。一緒に未来をつくるために、選挙に参加するほうがいい」

■「戦禍へのあきらめ」から投票を棄権した姉妹の後悔 子供の未来の為に伝えていく「選挙の大切さ」

 その一方で…。

 各務原市に住む、ウクライナ人のスビトラーナさん(39)。2022年3月、妹のナタリヤさん(32)とその娘2人がウクライナから避難してきました。

Qきょうは何を作るんですか?

スビトラーナさん:
「今日は、ハンバーグみたいなやつにお米が入ってる、日本ではあまりない料理。今までほとんど日本の料理だったけど、やっぱりホームシックって感じで…。ウクライナ料理にしましょって感じ」

 そんなスビトラーナさん家族。2019年の大統領選挙には…。

スビトラーナさん:
「全然、興味なかった」

ナタリヤさん(日本語訳):
「行かなかった」

 選挙に興味がなかったと話す、スビトラーナさん姉妹。その理由は「戦禍へのあきらめ」でした。

スビトラーナさん:
「わたしたちから見ると(投票しても)何も変わらない」

ナタリヤさん(日本語訳):
「(ドンパス地方の)戦争がはじまったのは4か月前じゃなくて、2014年です。その時、初めて避難しました。この戦争は私の中で8年続いています。そんな中でも、選挙はなんのために必要なのかわからなくて…」

「大統領選挙」に関心がもてず、棄権。しかしロシアの侵攻が続く今、投票をしなかったことを後悔していると言います。

スビトラーナさん:
「(戦争が始まって)4か月の間はずっとそういうこと考えて、どこかに(投票しなかった)私のせいもあるかもしれません。今まで、私が投票しなくてもなんとかなるって気持ちが強かったけど、戦争でやっとわかったのが『誰かがするんじゃなくて、するのは私でしょ』」

 一緒に避難してきた10歳のエヴァちゃんと3歳のミアちゃん。ナタリヤさんは今回の避難をきっかけに、選挙の大切さを子供たちに伝えると決めました。

ナタリヤさん(日本語訳):
「私は選挙の重要性を学んでこなかった。自分の子供には、国の歴史や政治の話をしたいと思います」

 そして、子供たちが二度と戦争に巻き込まれないことを強く願います。

ナタリヤさん(日本語訳):
「愛国心が私たちになかったから、戦争とかいろんな問題が起きたのかもしれません。だから、自分の子供には愛国心をもって考えてもらえるように、頑張りたいです」

「国の未来は自分たちで決める」。戦争で気づかされた、選挙の大切さ。

 日本の参院選、有権者はどこまで国の未来に向き合えるのか。選挙の意義が問われます。

スビトラーナさん:
「何か気に入らないことがあれば、(選挙に)行った方が良いと思う。誰かに『僕じゃなくてもいいですよ』って、誰かに任せることじゃないから。(投票一つでなにか)変わるんじゃない。だって国は大統領だけじゃないから、偉い人だけじゃないから。どちらかというと国は国民のもの。だから私たち、頑張らなきゃ」