愛知県蒲郡市に、夫は手軽にできるマリンスポーツで、妻は波をモチーフにしたアートで海の魅力を発信する夫婦がいる。穏やかで温かい海に魅せられて3年前に移住してきたが、海の街の子供たちが海で遊ばないことを疑問に感じ、その魅力を伝えている。

■夫はサップのインストラクター・妻はアーティスト…愛知県蒲郡市の海に魅せられ3年前に移住した夫婦

 名古屋から車で約1時間半の愛知県蒲郡市。西浦半島の西浦パームビーチに、蒲郡の海をこよなく愛する夫婦がいる。山村佳史さんとまい子さんの夫妻。

夫の佳史さんは、マリンスポーツ「サップ」のインストラクター、妻のまい子さんは、波をモチーフにしたマリンアートのアーティストだ。

【動画で見る】“子供が海で遊ばない海の街”に疑問…夫婦が発信する三河湾の魅力「地元の人が愛する海に」

山村佳史さん:
「ここは条件が整うとすごく透明度も高くなるので、沖に出ても海底が見えたりとか底を泳ぐ魚が見えたりとか。いろんな無人島があって、無人島の周りはここのビーチよりももっとクリアなんですね。そこに行く道中にスナメリも出ますし、すごく(マリンスポーツを)やるにはとてもいい場所だと思います」

妻のまい子さん:
「波はいろんな表情があるので、アートにするとすごく面白いんですよ。ちょっとした波も、波打ち際も、感じる方によって受け取り方が違ったりいろんな表現ができるので、すごい好きです」

佳史さんは三重から、まい子さんは東京から、蒲郡の海に魅せられ3年前に移住してきた。

■「子供の新しい一面見る機会増える」サップ体験で自分を解放していく子供たち

 西浦パームビーチ。この日、佳史さんは長さ3メートルもあるボードをビーチに並べていた。

「サップ(SAP=スタンド・アップ・バドルボード)」は、サーフィンよりも大きめのボードの上に立ち、パドルを漕いで水面を進んでいくウォータースポーツ。

佳史さん:
「海をクルージングしたりだとか、波が立てば波に乗ったりとか、釣りをしたり、この上でヨガをやったりとか、いろんな楽しみ方ができるアクテビティなんです」

この日、地元の形原小学校の6年生、およそ20人が「サップ体験」に参加。

佳史さん:
「今日はここの西浦のパームビーチを使って、地元の小学生たちに海のいろんな体験を通じて、地元をもっと好きになってもらうという活動をやっています。三河湾内なので穏やかなんですよ。なので、子供たちが遊ぶ場所としてはすごく整っているんです」

ほとんどが「サップ初体験」。ボードの上に乗ってみると…。

参加した小学生:
「(ボードから落ちながら)怖っ!」

徐々に慣れてくると、中にはスイスイ進む子も。ボードは浮力が高く安定感があるため、初心者でも簡単に始めることができるという。

参加した小学生:
「すごく楽しい、バランスのとり方のコツをつかむとスムーズに行けるっていうか…」

別の小学生:
「海で遊ぶのはすごく楽しいことだし、コロナ禍で外で遊んでいない子もいるから、外で遊べることがうれしい」

佳史さん:
「子供は海に入るとどんどん自分を解放していくので、そこが見ていて楽しいですね。すごくおとなしい子が、すごくはっちゃけていたりとか。この子がこんなに乗りこなせちゃうのっていう新しい発見だったりとか、先生たちも新しい一面を見る機会が増えるみたい」

■妻・まい子さんは“ナミアート”の体験教室「子供たちのほうが自由に表現できる」

 妻のまい子さんは、ビーチのそばでアート体験の教室。

まい子さん:
「今日は、こんなアートをします。すてきな波を描いて作品にします」

アーティストの「まい子」さん。彼女が作るのは、木製の板に塗料を塗って波の模様を描く「ナミアート」だ。白い塗料を塗り…。

「ヒートガン」で熱風を送ると「波」ができる。

まい子さん:
「波っていろんな表情があるので、アートにするとすごく面白いんですよ。ちょっとした波も、波打ち際も、感じる方によって受け取り方が違ったりいろんな表現ができるので、すごい好きです」

まい子さんのアトリエでは、ナミアートの「波時計」(6000円~)や、「コースター」(650円)、「携帯ケース」(4700円~)などを販売している。どれも素敵なナミアートだ。

 ナミアートを体験するのは、形原小学校の6年生。全員が初体験の12人。

青い塗料で海を描き、波打ち際の部分に白い液体を引き、そこに「ヒートガン」の熱風を当てると…

小学生:
「すごい、上から見た感じ…、きれい」

まい子さん:
「いいじゃない、うまい」

子供たちも真剣そのもの。約1時間、さらに流木や貝殻を加え蒲郡の海をイメージしたアートが完成。

小学生:
「奥を濃くして、手前を薄くしたり、波を表現したりするのがちょっと難しかったです」

別の小学生:
「今日やって、またここにきてやってみたいと思います。気持ちもよくなるし、また海もきれいに見えました」

まい子さん:
「子供たちの方が自由に表現できるので、思い思いの作品ができてすごい楽しかったです。また来年も継続してやっていきたいなって思っています」

■地元の海に入ったことがない小中学生が「8割」…魅力を知ってもらおうと始めた「体験教室」

 佳史さんは三重、まい子さんは東京出身。子育てにもいい環境という理由で、蒲郡に2019年に引っ越して来た。移住して3年目だが、2人ともすっかり蒲郡にほれ込んでいる。

まい子さん:
「移住してきたので、蒲郡の魅力がよくわかるんですけど、住んでいるとまだ発見が難しいみたいなので、私たちが魅力を伝えてあげられたら」

今回のような子供だけの「海の体験教室」は、2021年から始めた。きっかけとなったのは…。

佳史さん:
「子供たちの自然離れをすごく感じていまして、特に海の町・蒲郡なのに、海の町・蒲郡で育つ子供が海で遊ばないという現状がなんかおかしいなと思って、もっと地元の人たちが地元の海を愛して、ここでいろんなことを学んで、きっかけを作ってあげたいなって」

2021年に山村夫婦が中心になって地元の小中学生約500人にアンケートしたところ、「蒲郡の海で泳いだことがある」と答えた子供はたったの2割。約8割が、地元の海に入ったことすらなかった。

そこで蒲郡の海の魅力を知ってもらおうと、佳史さんは「サップ」で海の楽しさを、まい子さんは「ナミアート」で海の美しさを知ってもらえる「海の体験教室」を企画した。

2022年は2回目の開催だったが、この先も続けていきたいと2人は話す。

佳史さん:
「100人、200人と(体験教室を)やって、その中でも将来的に同じような思いを引き継いでいってくれる人が1人でも2人でも出てくれれば、それはうれしいと思います」

まい子さん:
「蒲郡の人たちとってもあたたかくて、知らないおじいちゃんおばあちゃんも『こんにちは』って…子供たちもあいさつしてくれるんですよね。すごく魅力的で大好きです、この町が」

この活動を通じて、蒲郡や西浦の魅力が広がってほしい…それが夫婦の願いです。