名古屋市中区栄、歓楽街の中心にある「池田公園」は、ホストクラブやスナックに囲まれ、夜になっても人がいなくなることはない。おしゃべりしたり、踊ったり、誰もが自由に好きな時間を過ごせる“真夏の夜”の池田公園に集まる人たちは、何を求めて訪れるのか。

■ホストに声を掛けられる女性にゴミを拾う男性…歓楽街の中心にある「池田公園」の夕方

 午後5時30分。池田公園には、ベンチに座ってスマホを触ったり、休憩したりする人たちの姿があった。

【動画で見る】ホストクラブやスナック等に囲まれる『池田公園』人々は何を求めて集うのか

19歳の女性:
「ただボーっとして…。買い物帰りで歩き疲れて」

ホストに声をかけられている女性もいた。

20歳の女性:
「初回無料って。初回無料で行ったことないですよ。絶対つまんないじゃん」

 午後7時30分。日が落ちて、公園を行き交う人も増えてきた。

落ちているビニール袋を手にする男性がいた。何をしているのだろうか?

会社員の男性(40代):
「なんでみんな捨てるんだろうなって。せっかく皆さんが休憩している場所なので、なるべくきれいにしておいたほうがいいんじゃないかなって」

公園はきれいな方が気持ちいい。だから、散歩帰りに気になってゴミ拾い…。

■「鉄棒あったので回りたいなって思っただけ」…グルグル回るポールダンサーの女性

 取材を続けていると突然、女性が鉄棒でグルグル回りだした。

鉄棒で回っていたポールダンサーの女性(25):
「ここをたまたま通過しようと思ったときに、鉄棒があったので、回りたいなって思っただけです。普段ポールダンサーなんで」

近くのお店で、ポールダンサーとして働いているという25歳の女性。

ポールダンサーの女性(25):
「いつもポールで横向きに回るんですけど、横の棒で縦回転しないんで、縦回転したいなって思っただけです、本当にそれだけです」

自宅にポールがあると言うので、家を覗かせてもらうことに。すると、広さ9畳の部屋に高さ2.4メートルのポールがあった。

ポールダンサーの女性(25):
「去年(2021年)、まん延防止措置とか緊急事態(宣言)とかで、どこも行けなかったんで、練習もできないと思って、家に立てました。3万円とかで買えますよ。一生遊べます」

始めたのは、もともとダンサーとして働いていたお店に「ポール」が設置されたことがきっかけだという。これまでに味わったことのない難しさに、一気に魅了された。身体がアザだらけになっても、「できないことがあるから楽しい」と続けている。

ポールダンサーの女性(25):
「最初のころは『ポール(ダンス)ってエロくない?』みたいな反応だったんですけど、最近は芸術とか、スポーツに変わってきていますね。アスリートだと思われています」

練習のために始めたTikTokは、3日に1度更新。今では、フォロワーが7200人を超えている。

■「不安を吐き出せる場所」…公園の一角にできた“街角保健室”

 池田公園の一角に建てられたのは、ひときわ目立つ「ピンクのテント」。

若い女性たちの“心や体の悩み”や“性の悩み”を、保健体育の教師やレディースクリニックの医師が聞いてくれる「街角保健室」だ。(夏休み期間のみ)

どんな悩みを抱えた若者がやってくるのか。

風俗店勤務の女性(19):
「(池田公園に)ほぼ毎日くらいいます。1人があんまり好きじゃないから、人としゃべりたいってなって来ます。(仕事を)コンカフェ(コンセプトカフェ)かガルバ(ガールズバー)に移行しようと思っていて、それで探しているところ」

医師の女性:
「自分はなんでヘルスで働いているの?ヘルスってさー、来たお客さんが絶対イヤでも接客しないといけないじゃん、すごいなと思って」

風俗店勤務の女性(19):
「彼氏がホストで、売上作ってくださいって上の人から言われていて、それで」

風俗店に勤務する19歳の女性は、「お金を稼ぐため」と自分に言い聞かせているが、身体の面でも心の面でも大きな負担に…。

医師の女性:
「もし(1人も)つかなかったらどうなるの?」

風俗店勤務の女性(19):
「(売上は)ゼロです」

医師の女性:
「シビア…」

風俗店勤務の女性(19):
「ガルバかコンカフェをメインにして、ヘルスを週1とかにして、そっちのほうが絶対にいい気がして」

悩みを誰かに打ち明けるのは、この日が初めてだった。

風俗店勤務の女性(19):
「(話ができて)めちゃくちゃ救われました。自分の不安だと思っていたこととか、吐き出せる場所だなって思います」

■中年でバンドを結成してライブ活動「もう一度熱くなりたい」

 午後10時。夜が更けたころ、楽器を持った人たちがやってきた。

バンドでボーカルを担当する、42歳の男性。

バンドマンの男性(42):
「今からライブなんですよ。この建物の4階にライブバーがあって、そこでぼくらいつもライブやらせてもらって」

バンドマンの男性(42):
「ミュージシャンになりたくて、高校生のときにバンドやっていたんですけど、志半ばでやめてしまって、ずっとくすぶっていたんですけど…。40歳手前のときに、もう一度熱くなれるものがないかなって、本気でやってみようと思って」

池田公園で待ち合わせ、目の前にあるバーでライブをしているという。2年前に結成したバンドの名前は「GBA(Great Beautiful Action)」。 40代から50代の6人がメンバーだ。全員、仕事をしながら活動している。バンド結成当時から、この場所でライブを重ねてきた。

バンドマンの男性(42)(ライブで):
「みなさん、こんばんは~」

知り合いやファンも集まり、ライブがスタート。演奏するのは、ロックバンドB’zの楽曲。

ファンの女性:
「熱い!彼は熱い!」

別のファンの女性:
「(彼らは)思いを伝えるライブという感じ!」

バンドマンの男性(42):
「バンドを結成できたことが、僕にとってなによりも財産だと思うし、一生音楽やれているのが夢かなと、このメンバーで」

■“名古屋1番”を目指すホストに“誰かのためになりたい”女性…「池田公園」は誰もが自由に過ごせる場所

 十人十色の人間模様が行き交う「池田公園」。大きな夢を語るホストの男性…。

ホストの男性(22):
「(午前1時過ぎ)名前が“キング・アーサー”なんで、キングになりたいので、名古屋1番を目指しています」

「街角保健室」のボランティアで、19歳の女性…。

19歳の女性:
「メンタル不安定だったんで、彼氏とうまくいくか不安とか、過去にあった…女として辛いこと、話を相談したりとか」

以前、ここで心を救われ、今度は誰かの役なりたいと話す。

19歳の女性:
「(年齢的にも)自分も役に立てそうだなって感じたので、ボランティア側に入りました。誰かがそれで楽しく人生を生きていけるなら、役に立てることをしたいなと」

「池田公園」は誰もが自由に、好きな時間を過ごせる場所だ。