三重県桑名市で12月5日、戦時中に投下された不発弾が見つかり、市は2023年2月5日に撤去することを決めました。なぜここで不発弾が見つかったのでしょうか。

 桑名市の観光名所、なばなの里や長島温泉にもほど近い工事現場。

 桑名市長島町の伊勢大橋の脇で見つかったのは、黒く汚れた楕円形の大きな塊…。アメリカ製の「1トン爆弾」です。

 現場のすぐ横には国道1号線が走り、多くの車が行き交います。

【動画で見る】国道1号線横から”不発弾”…三重県桑名市・伊勢大橋近くに今も残る戦争の爪痕 23年前には爆発し死者も

 なぜこの場所で不発弾が見つかったのでしょうか。

桑名市の歴史に詳しい西羽晃さん(86)。

西羽さん:
「当時の飛行機の部品のベアリングを、(桑名市で)全国の70%ぐらい作っていたわけですから、相当大きな工場だったんですね」

 戦時中、桑名市には戦闘機のエンジン部品を作る工場などが存在。

 物資輸送の要となったのが、1934年に建設された伊勢大橋でした。

西羽さん:
「国道1号ですから、とにかく東西を結ぶ大動脈ですよね。この鉄橋があって、鉄が真っすぐにあるわけです。非常にレーダーでも分かりやすいわけです」

 市内にある軍需工場や交通網の破壊のため、終戦間際の1945年7月、2度にわたって大規模な空襲に見舞われた桑名市。西羽さんは2回目の空襲の際の爆弾が、今回の不発弾だと考えています。

(リポート)
「伊勢大橋を歩いていますと、鉄橋に不自然に穴が開いていたり、さらには折れ曲がっている所が複数個所あります。これは全て戦争の爪痕です」

 今も機銃掃射の跡が残る伊勢大橋。老朽化に伴う橋の架け替え工事がきっかけで、今回の不発弾が見つかりました。

西羽さん:
「やっぱり戦争というものはね、いつまで経っても跡が残っておるし、その悲惨さっていうものは忘れられないってことだと思いますね」

 西羽さんは今回の不発弾の発見に、ある事故を思い出しました。

西羽さん:
「もうちょっと向こうに国道23号線っていうのがあるんですけど、(不発弾が)爆発したことがありますよね」

 23年前、今回の現場から南東へ5キロほど離れた木曽岬町の工事現場で起こった作業事故。地中に埋まっていた不発弾が爆発し、作業員の男性1人が亡くなりました。

西羽さん:
「(不発弾が)見つかったら処理しなきゃいかんっていうことは身に染みましたよね。それによって工事の人が亡くなったりしたら大変ですもん」

 今回も信管が残った状態で発見され、爆発の危険もある不発弾。陸上自衛隊が保護キャップを被せるなどの措置をとっています。

 桑名市は12日、対策本部会議を開き、23年2月5日に国道1号線を通行止めにし、不発弾を撤去することを決めています。