国内外で数々の受賞歴を誇る東京の名パティシエが、名古屋で初めて店をオープンした。名古屋の人たちの味の好みに合わせるため、愛知出身のスタッフと二人三脚で試行錯誤を続けてきた。店に並ぶのはフルーツとチーズを融合させた新感覚のスイーツだ。オープンまでの1週間を取材した。

■旬のフルーツとチーズの組み合わせが“新感覚スイーツ” 東京の名パティシエが名古屋に新店オープン

 名古屋市千種区の地下鉄「池下駅」から歩いて5分のところにあるスイーツ店「Bulles d’eau(ビュル ドゥオー)」。2022年9月、1週間後にオープンを控えていた。

【動画で見る】フルーツ×チーズで勝負…『新感覚スイーツ店』初日に“予期せぬ事態”も

厨房で試作を重ねる2人のパティシエ。

東京で活躍する、保坂茂(ほさか・しげる)さんと…。

地元・愛知出身の竹内悟(たけうち・さとる)さんだ。

保坂さんは、これまで高級ホテルや一流レストランで修業し、洋菓子の世界大会でも2位に輝くなど、数々の受賞歴を誇る名パティシエ。

名古屋で店をオープンするは初めてだ。

保坂さん:
「もともと僕がチーズとかフルーツが好きというのもあるんですけど、ワインとかシャンパンにも合うような、ちょっと大人な感じのスイーツを作りたくて」

今回の新店、メニューの特徴は「フルーツとチーズ」の組み合わせ。メインはフルーツタルトだ。

旬の果物に香りやクセの強い本格的なチーズで作るクリームを合わせた。

クロワッサン生地を使った韓国発のスイーツ「クロッフル」。

上にオレンジやイチゴなどのフルーツが乗り、ゴルゴンゾーラやマスカルポーネなど、フルーツと相性がいいチーズが合わせてある。

5本セットの「エクレア」は、栗やピスタチオなどに加え、イチゴやオレンジなどのフルーツが乗っていて、彩りも豊かだ。

定番のカスタードやホイップクリームではなく、チーズクリームが使われている。

■地域によって異なる味の好み…名古屋の人の好みに合わせて新スイーツも

 まだ名古屋ではあまり見ない、スイーツと本格派チーズの斬新コラボ。しかし、事前の試作会では…。

保坂さん:
「名古屋の人たちに食べてもらったときは、『もうちょっと甘いほうがいいんじゃない』というようなアドバイスをいただいたので。東京より、若干甘みが強いほうが好きなのかな」

地域によって異なる味の好み。名古屋の人に愛されるテイストを模索していた保坂さんは、助っ人として地元・愛知出身の竹内さんを起用した。

そして、甘いモノ好きの名古屋の人たちにと考案したのが「あんことクリームチーズを使ったクロッフル」だ。

あんこの甘さとチーズの塩気は相性抜群。

竹内さん:
「名古屋フードというか、モーニングでも付き添いで出てくるくらいの親しみのある食材になりまして、自分で食べたときに必ず受け入れられると確信はありました」

■愛知が誇るイチジクのメニューも 人気のフルーツだけに差別化を工夫

 この地方で特に人気のフルーツを使ったメニューもあった。

保坂さん:
「名古屋の方たちはたくさんイチジク食べているらしいので、真っ先にチーズとの開発を考えました」

愛知が全国に誇るイチジクを使ったタルト。

ただ、地元で人気がゆえに心配もあった。

竹内さん:
「イチジクなんかは、(愛知の)洋菓子店屋さんに必ずあるといった商品になりますので、それをどう生かすか」

保坂さん:
「いろいろな組み合わせがあるので、そこのバランスが崩れると商品の味が変わってしまう」

グルメ通の客も満足できるものを作らなければいけない。タルトにはそのままのフレッシュな状態のものに加え、赤ワインで煮込みコンポートしたイチジクを合わせて使うことに。チーズと上手く調和させるため、甘みのバランスを考えイチジクをあわせた。

保坂さん:
「組み立てのところも細部まで、竹内君には事細かく『こうじゃない、こっちがこうだから』と厳しく言っています」

■米粉のタルト生地作りは時間との戦い…難しい要求は「やりがいがある」

 もう1つ、ハードルがあった。「タルトの生地」だ。

小麦粉に見えるが、実は「米粉」。いま話題のグルテンフリーだ。

保坂さん:
「扱えるタイミングっていうのがわずかな時間しかなくて、しっかりとした技術で成型しないと、なかなかきれいな商品にあがらないので」

小麦粉と違い、形成している間に生地がどんどん柔らかくなってしまう米粉。作る時は、常に時間との戦いだ。

竹内さん:
「難しい要求はもちろんあるんですけど、それが一応挑戦になりますので、自分としてはすごくやりがいがあります」

 また、オープンに向けて、リンゴのクロッフルの試作を進めていたが、固さと酸味に課題があった。納得いく状態に仕上がったのか…?

保坂さん:
「おいしい。どうですか?」

竹内さん:
「おいしいです」

保坂さん:
「(リンゴも)すごくいい状態です。これで行きましょう」

保坂さん:
「ずっと苦労して商品を作ってきたので、すごく自信がありますので、ぜひこの商品を名古屋の人たちに食べていただきたいと思います」

■オープン当日から大盛況…予期せぬ事態も初の名古屋で手応え

 そして迎えたオープン当日。開店を控えた店内では、イチジクなど地元で愛される果物を使ったフルーツタルト「タルト オ フィグ」(5940円)や…。

最後まで調整し続けたリンゴのクロッフル「クロッフル ポム マスカルポーネ」(1296円)。

名古屋の人に愛されるテイストを模索して開発した「クロッフル ANCO」(972円)。

そして、細部にまでこだわり抜いたチーズとフルーツの新感覚スイーツ「クロッフル オレンジ ゴルゴンゾーラ」(1620円)などが、続々と出来上がっていた。

午前10時、いよいよ開店。オープンを聞きつけた客が、次々とやってきた。

男性客:
「奥さんがインスタ見て、『お土産だったらここがいいよ』と」

別の男性客:
「形がきれいなんで見た目も芸術品みたいなところがあるので、食べるのがもったいないですね」

女性客:
「すごく華やかだなって思って、器もかわいいし。おいしそうだった。楽しみです、食べるのが」

あのリンゴのクロッフルを買い求める客もいた。味の感想は?

女性客:
「リンゴの甘いのと、上品なクリームの味がちょうどよくて、みんな食べやすいと思います」

客からも好評だ。

 好調なスタートで、予期せぬ事態も起きた。

男性客:
「このエクレア5種類を2つ」

店のスタッフ:
「こちらが少し時間がかかってしまうんですけど…」

別の男性客:
「(エクレアの)セットと…」

店のスタッフ:
「エクレアのほうがちょっと時間かかっておりまして」

この日一番人気となったエクレアの提供が、追い付かない。

竹内さん:
「イチからまた段取りを組みなおして、お客様に迷惑にならないようにしていければなと思います」

クオリティを保ちながら、いかに早く提供するか。これからの課題だ。

 午後7時。初日の営業が終了。保坂さんは、初の名古屋進出に手ごたえを感じたようだ。

保坂さん:
「いろいろスイーツを買っていただいたんで、大変満足しております。チーズスイーツに特化してですね、もっといろんなチーズを使って、よりおいしいスイーツを作って、名古屋のお客様にいっぱい食べていただきたいと思います」

2022年10月3日放送