三重県いなべ市の『NoKi(ノキ)』は豊かな自然に囲まれたレストランだ。絶品ボロネーゼにかわいらしいスイーツ、そして客の8割が食べるという焼きロールキャベツが人気。料理も景色も味わえる「庭園レストラン」を取材した。

■ランチ時は女性客でいっぱいに…木陰で過ごしているようなカフェレストラン

 うっそうとした木立を抜けると現れる、白い建物。2022年6月、三重県いなべ市にオープンしたカフェレストラン『NoKi(ノキ)』だ。

【動画で見る】焼きロールキャベツは8割が注文…『庭園レストラン』オーナーシェフは“経験ゼロ”から

女性客:
「最初は入って来たとき全然わからなくて、森に囲まれているって感じ」

別の女性客:
「入ったところからすごくよかったです。いつもと違う時間が」

いつもと違う時間が味わえる場所。

店内からは大きな窓を通して、まるで木陰で過ごしているような心地よい空間が味わえる。

雰囲気だけでなく、料理も自慢。幅広の麺「フィットチーネ」と、牛肉と野菜をじっくり煮込んだうまみたっぷりのミートソースを絡めていただく絶品「ボロネーゼ」(1230円)に…。

緑の中でより映える色鮮やかなサラダプレート「季節の野菜プレート」(780円)。朝採れの季節の野菜がふんだんに盛られた一皿だ。

 スイーツは、サクサクのパイ生地で挟んだ、2種類のクリームと季節のフルーツがコラボ。見た目もかわいらしい「森のミルフィーユ」(1100円)が人気だ。

女性客:
「おいしいですよ。ヘルシーそうでうれしいです」

別の女性客:
「私、フィットチーネが好きなので、めっちゃおいしいです。お庭を見ながら食事をできるというのは最高です」

■オーナーシェフは社会人野球の元選手 独学で始めて店をオープン

 ランチ時ともなると、店内は女性客でいっぱいになるこのレストラン。客を虜にする料理を作っているのが、オーナーシェフの伊藤智(いとう・とも 30)さんだ。

伊藤さんの経歴は、少し変わっている。

Q料理をずっとやってきたのですか?
伊藤智さん:
「いや、やってないです…。ずっと野球やってました」

地元出身の伊藤さんは、子供の頃から野球一筋。大学卒業後、味噌カツでおなじみ“矢場とん”の社会人チームへ。

店で働くうちに、食に携わりたいと思うようになったという。

伊藤さん:
「やっぱり好きだったでしょうね。(料理を)作ることが好きで、いいなぁと思っていたんですけど、やっていくうちにお店持ちたいというのが出てきて」

“経験ゼロ”の状態から独学で料理を学び、さらには、名古屋の有名料理家のもとで修業もした。

伊藤さん:
「何のツテもなかったんですけど、直談判して料理を教えてくださいと頭下げて、料理を教えてもらったっていう感じになります」

2年をかけて力をつけ、2022年6月、地元・いなべ市に念願のレストランをオープンした。

■ここでしか食べられないものを…地産地消にこだわった看板のメニューの「焼きロールキャベツ」

 店の名前「Noki」は、「軒下で食べているような感覚を味わってもらいたい」と名付けた。店の1日を見せてもらった。

午前7時。伊藤さんは毎朝、この時間から厨房で仕込みを始める。

伊藤さん:
「朝はバタバタしながら、時間を見ながら常に追われています。お客様が来てくれることがありがたくて、おいそうな顔が見えた時、作った甲斐があったというかうれしいですよね」

まだまだ不慣れな部分はあるが、客のおいしそうな顔を見るのが何よりも嬉しいという。

 朝の仕込みが終わると、伊藤さんは買い出しに。向かった先は、市内の産直市場だ。

伊藤さん:
「いなべ産のものが、朝採れなので新鮮なんですよ。うちは地産地消でやっていますんで」

伊藤さんは地元の食材を使う「地産地消」にこだわっている。

伊藤さん:
「この間のかぼちゃ、めっちゃ甘かったです」

店員:
「ありがとうございます」

伊藤さん:
「サニーレタスは入らないですか?」

店員:
「入るのは入るんですけど、台風の関係上で240円」

伊藤さん:
「売り手の方とお話して、いいものを売ってもらうのが一番いいかなと思う。ちょっと手間なんですけど、新鮮な野菜をお客様に食べてもらうっていう…」

毎日買いつけてくるのが、いなべ産のキャベツ。自分も食べて育った新鮮な食材を味わってもらいたいというのが、地元いなべで店を開いた理由の1つだ。

このキャベツを使った店の看板メニューが、「ロールキャベツ」。

鍋で煮込む…のかと思いきや、伊藤さんはロールキャベツをオーブンに入れた。

伊藤さん:
「うちは、焼きロールキャベツというのを提供させてもらっています。煮込むとどうしても水分でお肉のうまみが逃げちゃう場合もあるんですけど、焼くことによってうまみを閉じ込めるので、ちょっと変わったロールキャベツなんです」

キャベツにこんがり焦げ目がつくまでじっくりと焼き上げ、熱々の鉄板にいれた店オリジナルのデミグラスソースの上に乗せる。

Nokiの看板メニュー、「焼きロールキャベツ デミグラスソース」(1230円)だ。

こんがりキツネ色になったいなべ産のキャベツの中には、ぎっしりと詰まったハンバーグが。肉は、三重県産のブランド豚「さくらポーク」を使っている。肉汁もたっぷりだ。

オーブンでじっくり焼かれたロールキャベツは、香ばしさと肉のうま味をしっかり感じることができると人気だ。なぜロールキャベツを「焼くこと」にしたのか。

伊藤さん:
「自然が多い中で、木が多いじゃないですか。その中で焼きロールキャベツを切ってみた断面が、お肉がきっしり詰まっていて、その表面に(焼いた)キャベツが巻いてある。木の断面をイメージして作りました。NoKiにしかないもの(メニュー)を作っていきたいと思っています」

 この焼きロールキャベツを目当てに、県内はもちろん名古屋からも客が押し寄せ、連日大盛況。

多い日には1日80個も出るという看板メニューで、ランチタイムにはご飯、スープがつくセットメニュー「焼きロールキャベツ ごはんスープセット」(1430円)もある。

女性客:
「初めてです。いつも家だと煮込むものしか食べたことないので。お肉が中にしっかり詰まって、うまみが閉じ込められている感じがします」

別の女性客:
「家では手の込んだことなんかできないから、こういうおいしいものを食べられるっていうのはものすごく幸せな気分になれますよね」

また別の女性客:
「今日は畑に行って、その帰り。めちゃくちゃおいしい、こんなの食べたことない」

幅広い年代を虜にする、幸せの焼きロールキャベツだ。

■店のもう1つの魅力は庭師の父親が作った「本格庭園」

 客を引き付けるのは料理だけではない。もう一つの人気が、大きな窓から見える美しい庭だ。

伊藤さん:
「中にいるんですけど、どこか外で食事しているかのような雰囲気の中で料理を楽しんでいただく感じです」

壁の色を暗めにし、店内の照明も少し落とすことで、より緑が映える工夫をしている。

どの席からも眺められるよう作られた庭は、四季折々の草花が楽しめる本格庭園だ。

この庭園を作ったのは、伊藤さんの父親だ。いなべで40年以上庭師として働いてきたベテラン職人で、「お父さんの作る庭も店の魅力の一つにしたい」と伊藤さんが依頼したという。

伊藤さんの父親:
「紅葉、落葉、雪景色もよろしいしね。全部の四季を感じられますよ」

伊藤さん:
「父が作り上げた庭を見ながら食事をしていただくのが、一番のNoKiに来ていただく意味でもあると思いますので、やっぱり感謝していますし、ありがたいです」

取材したころ、伊藤さんは秋の「焼きロールキャベツ」を試作していた。

伊藤さん:
「季節によって庭が変わっていくように料理も変えていかないと、この季節にきたらこれが食べられるよねというのを1年通して作っていきたいなとは思っています」

庭と同様に季節を意識したメニュー作り。秋を感じてもらえるようキノコのクリームソースを作った。しかし…。

伊藤さん:
「う~ん…。今、しめじだけ入れているんですけど、秋を堪能するには、もうちょっときのこの風味をつけたいなと考えています」

よりきのこの香りと味を引き立てたいと、ミキサーで細かくした舞茸をクリームソースに追加。すると今度は納得の味に。秋の焼きロールキャベツの味が決まった。

伊藤さん:
「とにかくやってみるというのが大事かなと思っています。NoKiは焼きロールキャベツのお店でもいろんなものを楽しんでもらえますよと、新しいものをどんどん取り入れていくというようなスタイルで、これからもやっていきたいなとは思っています」

2022年10月5日放送